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犬がすっかり兄弟になりまして。  作者: 萬田ぷぷっぴどぅ


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犬がすっかり兄弟になりまして・28


 ぷりぷりと怒りながら荷物をまとめた美馬は曹操とパーカーを連れて施設へ戻った。リクとカイを施設に残していた航も同乗させてもらう。

「泊まるんですか?」

「ショージやフスマやスタッフにだけ危ない思いはさせられません!」

 施設に戻ると早速警察からの協力依頼が届いていた。もともと宿直のスタッフは常時2~3人いるのだが、加えて美馬と水口も泊まることになった。

 どうしたものかなと航は悩む。保護施設に全く関係ない航が口をはさむことではないが、ルイたちから話を聞いている以上、ショージとフスマをおとりに使うことには正直賛成できない。航がルイから聞いた話以上のことを警察が掴んでいるからこそ、こんな無茶なことをするのだろうが。

「どうしたの、お兄ちゃん」

 顎に手をあて「うーむ」と唸る航の顔を、リクとカイが覗き込む。

 航は大きな鼻息をひとつつくと、リクとカイに改まって言った。

「お願いがあります」



「僕たちも泊まります」

 航はマンションから毛布を持ち込み、リクとカイはクッションとぬいぐるみをそれぞれ持ってきた。

 最初こそ断っていた美馬だったが、ショージとフスマが航を見て立ち上がったので受け入れた。

 仮眠が取れる宿直室を勧められたが、航は事務所のソファーに寝ることにした。宿直のスタッフは入院棟と保護っ子たちの部屋が見渡せる病院棟の方にいる。事務所からも保護棟は見えるが、航が泊まる間は気遣ってか、夜中のスタッフたちの出入りは少なかった。

 保護っ子も入院患者もケージに入っているが、リクとカイ、曹操とパーカーは好きなところへ自由に寝られるように放していたので、だいたい航の傍か美馬の傍で寝ていた。

 航は朝になるといったんマンションに帰り、着替えてから出勤。会社が終わってから帰宅後、着替えてから保護施設へ向かった。リクとカイは日中はそのまま施設へ預けていた。

 初日こそ賊が侵入してくるかもしれないという緊張感があったものの、数人で寝泊まりするという大人になってからはなかなかできない経験が懐かしい修学旅行やキャンプを連想させ、二日もすると妙に和気あいあいとした雰囲気になり、三日もすると「もうこれ来ないんじゃない?」と誰かが言い出した。



「美馬さん。明日来るって」

 水口がパソコンに届いたメールを示すと、「わかりました」と美馬が言った。

「何が来るんですか?」

 出してもらった夕飯を食べながら航は言った。施設に泊まる間、航の分まで食事が用意されていた。押し掛けのわりに至れり尽くせりである。面目ないと思いつつ、航はありがたく頂いていた。

「ショージとフスマのお迎えです。本当はもっと早く迎えに来られる予定だったんですが、こんなことになったんで待ってもらってたんです」

「待ってもらってる理由は説明されたんですか?」

 航は恐々訊いてみる。普通は反対すると思うが、『訓練所』ともなると協力的なのだろうか。

「もちろん。すっごく反対されましたけど」

「ですよね~」

 美馬も航も笑う余裕が出てきた。

「あちらも四日も待って来なかったらもういいだろうって思われたみたいですよ」

 クスクスと美馬が笑うと、水口が言った。

「迎え来る?ってさっきメールしたら、2秒で返事来た」

 2秒は無いでしょうと航が笑うと、3秒と水口は指を立てた。



 寝食を共にすると仲が良くなるのは人間と変わらないらしい。日中も一緒に遊んでいる犬たちはあっという間に打ち解けていた。あの曹操やパーカーまでもが一緒になってぬいぐるみを取り合ったりしている。ショージやフスマもよく笑いよく動くようになった。事務所内から病棟から所狭しと暴れまわるリクやカイたちを美馬も水口もスタッフたちも微笑ましく見守ってくれているが、しょせんデカい成人男子。曹操とパーカーに至ってはまあまあ強面の成人男子に見えている航にとっては、事務所に殴り込みに来たヤカラが暴れているようにしか見えず、全然笑えなかった。



 ルイたちのときもそうだったように、航が会社に出勤している間にショージとフスマの迎えが来る予定だった。

 起きて、マンションに戻る前に、ショージとフスマの顔を見る。

 ふたりは航の姿を見ると、立ち上がって抱きついて来た。

 航はよしよしと抱きしめ頭を撫で、「元気でな」と言う。

 そしてリクとカイに向き直り、しかめつらしい顔で言った。

「最後までちゃんとショージとフスマを守るように!」

「はい!」

 リクとカイは姿勢を正すと、元気よく返事をした。


 結局別れは辛いのだ。迎えられた先で幸せになれることはわかっているが、少しでも心が通った相手が離れてしまうと寂しい。寂しいとはなんとも厄介な感情だなと航は思う。会社に行ってる間に迎えが来てくれてよかったなと航はつくづく鼻をすすった。

 そして帰宅途中、今日からもう施設に泊まることもないので会社の帰りに直接リクとカイを迎えに寄ると、美馬が慌てて航に駆け寄って来た。

「天道さん!」

「ど、どうしました?」

 ただならぬ美馬の様子に、リクとカイがなにかやらかしたかと航は焦った。

「ごめんなさい!!」

 美馬は勢いよく頭を下げる。

「え?な、なんです?どうしたんです?」

「リクくんとカイくんがいなくなりました!!」

「え……」

 目が点になったのが航は自分でもわかった。

 だが次の瞬間、出た声ぐらい目も大きく見開かれたのも自分でわかった。

「えーーーーーーーーーー!?」

 


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