7 会合
「えーっと、咲さんの後輩?」
「つるぎと申します。」
改めて、両毛連合のメンバーと顔合わせする小岩剣。
加賀美も小岩剣の付き合い、と言うより様子見のため近くで見守る。
一応は、話しているだけでは何も嫌な思いもしない。
話の流れで今夜の晩飯会に参加することにもなった。
しかし、加賀美は「私は用事がある」と言う。だが、加賀美がこの時、小岩剣に向けた視線が痛い。
別れ際、加賀美は「行くなって止める権利は私には無い。私の話聞いた上で、それでも行きたいなら行けばいい。忠告はしたからな。」と、怒気を込めて小岩剣に言った。
草木ドライブインを出発し、国道122号を渡良瀬川に沿って走り、夕陽の大間々を抜けて、足利の町を通過して佐野まで来た。
どうやら、佐野ラーメンを食べながらの夕食オフだ。
しかし、会が始まっていきなり小岩剣は落胆した。
いろいろな場所を走ってみたり、チューニングショップや他の車好きが集まるような場所に行ってみたりしようと言う意味合いで来てみたはいいが、話す内容と来たら意味の分からない話。レースの話もたまに含まれるが、話題は女の子の尻の話だったり、内輪の飲み屋話だったり、これはこれで小岩剣は付いていけないのだ。
「つるぎ君はロータスを知ってるか?」
と振られた。
「ええ。ロータス・エキシージ、エリーゼ、エミーラと走った事があります。」
「ああ。どこの誰か分かったよ痴女三人姉妹だなぁ。」
苦笑いを浮かべるメンバー。
小岩剣はまたワケの分からない話だ。
少なくとも、この界隈ではいい評判では無いようだ。
「あいつらと関わない方が良いよ。」
と言われる。
「年下のショタっ子やロリ娘を見つけて、レイプしてるって噂だ。」
「恵令奈なんか、アヤとレズセックスしてるしな!アヤが誘ってよ!」
「あぁ。かと思えば、首突っ込んだカンナが百合の合間に挟まる男になるしよ!」
いきなり、小岩剣に良くしてくれてるメンバー達の悪口大会が始まった。
さながら、鉄道オタクの罵声大会だ。
(玲愛さん、確かにキスされたけど、俺にとってはいいお姉さん。って、あれ?なんで俺、玲愛さんの弟にされ、俺も勝手に玲愛さんをお姉さんに?)
と、小岩剣は思う。
「赤城大沼湖畔のレースにカンナ出てたらしいな。あと、ハチロクBRZレースも。」
「へぇ〜興味無い!」
「あんな淫乱連中がレース?無い無い!」
小岩剣、今ので我慢出来なくなった。
小岩剣は以前、群馬サイクルスポーツセンターを走る三条神流、松田彩香、加賀美咲達の姿を見ているからだ。
「自分はレースに出た事無いし、見たことも無いのですが、レースに興味無いって事はありません。知識は無くとも、レースに出るのは大変な事だろうと言う事は分かります。皆さんはレースに出たのでしょうけど、自分はそんな経験は無く、レースに出るだけでも凄い事だと思います。それが、どんな人でも。」
思わず言ってしまった。
「まぁな。」
と言う反応。
(当然、こいつらはレースに出た上で、話しているのだろう。だとしたら俺もレースに出なければならない。経験や勉強のためにも。それに、三条さんや松田さん。玲愛さんや加賀美さん達と同じ位置に立つにはー)