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ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第八章 破滅の月と月の入り
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73 暴走

その夜から、小岩剣は悲しく冷たく暗い走りを始めた。

背後に付かれた物は否応無しに道端へ逃げ、追う物は気分が悪くなり、目を回して倒れた。

加賀美の相手が両毛連合と分かった小岩剣は、1人、両毛連合狩りを始めたのだ。

無意味な紛争だが、三条神流でさえも、小岩剣を止められない。

「ガスが抜けるまで放っておけ。」

と、吐き捨てる他に何も出来ず、見守るしか無い。

バカな噂が大好きな両毛連合は、加賀美が小岩剣のおもしろおかしな噂話を流し、その中には「小岩剣は加賀美のストーカーだ!」などと言った、ふざけた内容の物まであった。そのため更に、小岩剣は恐ろしさを増した。

その加賀美だが、結婚前にハメを外し過ぎて妊娠まではいいが、やった場所が赤城山のバーベキューホールの野外ベンチだったため、警察に捕まり、おまけで、時速135キロで上武道路のオービスを光らせて免停。いや、前歴として、1ヶ月前に彼氏と首都高速中央環状線で暴走した挙句、オービスを光らせるていた事があり、その免停期間中にやったのだから、問答無用で免許取り消しになったらしい。

更に、彼氏の事に夢中になり過ぎて更新を忘れていたため、レーシングライセンスまで失効させたのだ。

最も、時速約80キロオーバーのスピード違反をやらかした時点で、執行猶予付きの懲役刑が科されることになるか、略式請求された場合、罰金刑が科されるし、それ以上に免許取り消しで、レーシングライセンスも何も無い。

そして、その彼氏もまた、榛東村で日本中央バスの路線バスに対する妨害運転(あおり運転)をした上、重大事故を誘発し、逮捕されたと言うのだ。

(キチガイはどっちだ!)

と、松田彩香はそれを聞いて思った。

松田彩香は今、仕事中。

仕事終わりに1発ヤろうと言うカップルを高崎機関区近くの国道下のラブホまで乗せていた。

(カンナとも来たなぁここ。)

と思いながら、出入り口の前で会計をして出発しようとしたら、駐車場に見覚えのある車がいた。蒼いS660。ナンバー群馬587し62-18。

(えっ?ああ、ここに停めて、高崎機関区で撮り鉄かな?)

と、松田彩香は思う。

先日、ぐんま車両センターに残った最後の旅客用電気機関車EF64-1001とディーゼル機関車DD51-842も、とうとう、同時に廃車回送された。三条神流はEF64の、松田彩香はDD51のナンバーを冠する車に乗っているが、松田彩香は一気に魂を抜かれたようになった。

その前にもDD51-895が廃車になったが、その時、松田彩香は逃げ出そうとする三条神流をこのラブホへ連れ込み、手足を大の字に拘束して、夜明けまで三条神流を襲った。普段なら聞くことの無い三条神流の悲鳴や、三条神流が涙を流しながら許しを乞う姿に興奮し、更に松田彩香は暴走してしまった。

その後、DD51-842も廃車回送となったのだが、842に関しては、両毛線での最後の運用に少しだけ携わる事が出来たため、さようならの覚悟は出来ていたが、やはり抜け殻になってしまい、その抜け殻をなんとかしようとしてまたも、三条神流を襲った。

一番好きな機関車のDD51が廃車回送されたからと言って、三条神流を襲ったところでどうにもならないが、何かやらなければ収まりが付かなかったのだ。

そんなことを思い出すと、また身体が火照り、暴走しそうになる。

「今夜か明日、またカンナを襲ってー」

などと言った時、出入り口の扉が開き、中から小柄で清楚なのだが如何にも金の張りそうな服を身に纏う女性が出て来たと思えば、その手に引かれてなんと小岩剣が出て来たのだから驚いた。

女性と別れ際だろうか?

頬にキスされた小岩剣はフラフラしながら歩くも、松田彩香のタクシーに気付いて顔面蒼白になる。

(まさか、デリヘル呼んだの!?)


新前橋駅から群馬県庁。

群馬県庁から前橋駅。

前橋駅から中央前橋駅。

そんな短距離ばかりで景気が悪い三条神流。

いささか不機嫌だ。

中央前橋駅から群馬県庁。

今日はダメだろう。

そんな日もあるのがタクシーだからと切り替える。

群馬県庁から新幹線の発着する高崎駅までのチケット利用の旅客を乗せたところで夕食のタイミングだ。

前橋管轄のタクシーは、余程のことが無ければ高崎駅のタクシープールには入れない。

なので、高崎駅近くのロイヤル・ホストへ夕食に向かう時、松田彩香が「高崎駅近くにいたら、晩飯を一緒に」と連絡して来たので受け入れる。

(ああ、今夜もまた眠れないよ。)

と、三条神流は溜め息。

だが、いざロイヤル・ホストに着いてみれば、松田彩香は小岩剣を連れていた。

(おいおい。つるぎにまで八つ当たりかよ!DD51の廃車は止められない事だし、金も出して無い俺達がJRの決めた事に文句言う筋合いはないだろう!?碓氷峠鉄道文化むらには金出してるから多少文句は言えるけど。だからって、お前の私情につるぎまで巻き込むな!)

と思いながら、駐車場にタクシーを止めるがどうも変だ。確かに、松田彩香が小岩剣を連れ出したのは間違いないようだが、小岩剣はビクビク震えていたのだ。

(様子が変だ)と思った三条神流。

店内に入る。

「デリヘル呼んだのです。」

呆気なく言った。

三条神流は「ふーん」と鼻を鳴らす。

「でっ、それ見たアヤが説教ってとこ?」

松田彩香は違うと言う。

「実は、変な噂もあってか、自分でもわけ分からなくなり、両毛連合皆殺しにしたら、渡良瀬渓谷、赤城ロマンドの最速タイムをマークしてしまったようで。これは、玲愛さんから聞いた事ですがー。それで、ドジって玲愛さんに八つ当たりみたいな格好で告白したら見事に振られ、そうしたら、両毛連合は更に自分の変な噂を流して遊び初め、挙句、HONDAディーラーまでグルになって、噂話を、面白おかしく広め初めたと言う情報もあり、HONDAに対する不信感やら、いろいろと嫌になってしまいー。」

と、ラブホに行きデリヘルを呼んだ経緯を話した後、松田彩香に見られ、松田彩香は驚いて何があったのかを聞いていたと言う。

それよりも、三条神流はなぜ玲愛が小岩剣を振ったのかが気になった。

(八つ当たりのような格好だからだろうか?)

と、三条神流は思う。

三条神流は縮こまっている小岩剣を見るに見かね、

「この日、ADMは長距離遠征だ。来るか?いや、来いよ。」

と、長距離遠征の日程を伝える。

小岩剣は詳細を確認するが、何か難しい顔をする。そして、

「別な長距離遠征と被ってますが、行く場所は同じです。なので、相乗りと言うことで参加でもよろしいでしょうか?」

と言う。

「分かった。ところで、明日は仕事か?」

「そうですね。」

「ふーむ。明後日は?」

「明けです。午前中は用事がありますが。」

「分かった。」

三条神流は小岩剣に分からぬよう、松田彩香に「頼む」と伝える。

松田彩香は溜め息。

「十字架磔からのプロメテウスの刑ね。執行は明日。刑期は明日一日中。」

三条神流は腕を突き出し、「前金」と言うと、松田彩香はその腕に噛み付いた。


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