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ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第七章 暗雲の月
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69 赤城温泉Uターン

赤城山滝沢不動尊のあたりだろうか。

39号コーナーを抜けるロータス。

S660との差を広げようとする。

(ヒルクライムに馬力の大きい私が先に入れば、もう逃げ切れる!)

玲愛は力の差を見せつけるが如く、猛然とプッシュを続けるが、序盤のドリフト行為によるタイヤの消耗で、思うようなラインに乗らない。

38号コーナー突入で、小岩剣のS660は37号の立ち上がりにいた。

だが、39号突入時、小岩剣のS660が真後ろにまで来ていた。

小岩剣は抜くタイミングを伺う。

「頼むぞ、S660モデューロX。今の今まで習ったテクニックを全力投入する。だから、応えてくれ。俺は、駆け抜ける。どこまでも、お前と一緒にな!」

小岩剣の脳裏に、戦略の組み立てと同時に、このS660と出会った時の事が浮かんだ。

高性能モデルとして誕生したモデューロX。

だが、オーナーに恵まれず、最初のオーナーは酒の飲みすぎで死亡。

次のオーナーは女遊びが過ぎ、借金抱えて夜逃げ。

その次は、買ったは良いが相性が合わず僅か1週間で乗り換えた。

そして、流れに流れて秩父のホワイトレーシングプロジェクトに流れ着いてきた。

高性能の真価を発揮出来ず、冷や飯ばかり食わされ、不遇の日々を送っていた、寝台特急客車のような蒼いボディーを持つこのS660は、小岩剣に「買ってくれ」とでも言うかのように、蒼い閃光を浴びせてきた。

N‐ONEを手放し、このS660に乗った時、小岩剣はその高性能さに戸惑ったが、慣れていく内に、走ることへの喜びを覚え、どこまでも走りたいと思った。

(勝ったら、加賀美さんに認めて貰えるかな?加賀美さんと一緒に走りたい。)

そう思った。

だが、そのためには、目の前にいるロータスを撃墜しなければならない。

赤城温泉まで降りてきた。

ここで道幅が広がる。

ロータスがまたも差を開こうとするが、その背後にピッタリ着くと、空気抵抗が減って、逆にロータスが近付いてくる。

(なんで?)

小岩剣には分らない。

だが、玲愛には分かった。

「スリップストリームを使っている!?あんなワザまで教わったの!?」

忠治館前のUターンポイント。

ここには、マーシャルがパイロンを置いた。

ここを基準にUターンするのだが。

玲愛がなんと、反対車線側から突入する体制になった。

だが、小岩剣はそのまま車線をキープ。

サイドバイサイドで、左右からUターンポイントに入る。

玲愛が先にブレーキングしたのだが、小岩剣はそれより僅かに遅れてブレーキング。

そして、スピンターン。

2台が正面衝突しかかる状態だ。

「わっ!」

なんと、自分から正面衝突するような状況にしてビビらせようとした玲愛が、逆にビビってラインを引くハメになった。

おまけに、小岩剣のS660に弾き飛ばされる格好になった玲愛のロータスは、大きくコースアウトするような格好になった。

反対車線側から勝手に突入して、小岩剣を驚かせようとしたのだが、まるで引かない小岩剣に驚いて逃げた結果だ。 

これは、玲愛の自業自得だ。

大きなマージンを得て、小岩剣はヒルクライムに突入していく。

しかし、雷雨のサンダーボルトライン。

路面は川のように、場所によっては滝のように水が流れる。

「畜生!こっちは鮭じゃ無いんだ!ならば、鯉の滝登りと行こうかこの!」

派手に水煙を上げる小岩剣のS660は、道幅の広い区間でロータスの接近を許さず、赤城温泉を越えて再び、つづら折りのヘアピン区間に突入していった。


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