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ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第六章 開花の月
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60 チューニング

群サイ走行会で周囲の人が感じたことの内、車の性能不足については小岩剣も感じた。

いくらモデューロXとは言え、ECUとマフラーカッター以外はノーマルではやはり、他のS660に性能面で負けている。

小岩剣はS660のチューニングを決意した。

その際、玲愛からチューニングパーツの種類とその役割についての説明を受け、小岩剣は既にS660に施されているチューニングについて話す。

「ECUが弱いのと、マフラーカッターだけじゃ何の役にも立たない。」

と、玲愛。

小岩剣は坂口拓洋から譲り受けたパーツの一部を、結局は売却した。そうして得た資金は5万円強。

「何をどうしたい?速くなるためのパーツ?」

日奈子が割って入る。

「ええ。自分の走りだけでは、そろそろ限界かと。それで―。」

「Modulo Xだよね。そうなると、やはり変に弄ってバランス崩す恐れがあるから、前に言ったECUとマフラーあたりがいいかな。」

「そうですよね。マフラーはHKSの物をスクラップとして引き取ったのですが、ECUをどうするかと―。」

「組み合わせ次第。」

日奈子はリストを持ってきた。リスト、と言うより雑誌である。

「草木の、特に両毛連合の連中は、HKSとSPOONが多いよね。確実さと、安さ、手軽さから、そうなる。今、ワンコ君が引き取ってきたって言うマフラーもまたHKS。でもさ、それって面白い?みんな一緒になるじゃん?」

「そういえば、そうですね。」

以前、「特徴のないS660だ」と草木で両毛連合に言われた事を思い出す小岩剣。だが、日奈子にしてみれば、結局チューニングしたところで行き着く先はほとんど同じような格好になる事の多い奴等こそ、「特徴のないS660」だと、草木で小岩剣に言った発言をブーメラン返ししたくなっていた。

「そこで、それ以外にCVTでも良い性能を出せるECUとマフラーの組み合わせなんだけど。」

と、日奈子は言いながら、部品にチェックを入れる。

ホンダツインカム(FEEL’S)のスポーツプログラムドコンピューターと、同じくホンダツインカム(FEEL’S)のソニックマフラーだ。

「ホンダツインカムのデモカーは、HKSやSPOONのように100馬力オーバーは無い。出せるのはせいぜい85馬力。それでも、今より10馬力以上の馬力アップになる。マフラーも飾りだけの物ではない。確実に、エンジンレスポンスとトルクアップが狙える物よ。」

要するに、HKSのマフラーも売却してホンダツインカム(FEEL’S)のソニックマフラーにしろと言っているのだ。

しかし、ホンダツインカムの物なら何も、ここでやらずとも、確実と思える所はある。

「まっ要検討って事ね。もしウチでやるなら、この値段でやってあげる。」

と、日奈子が提示した金額に一瞬心が動いたのだが、その裏には何かがありそうだった。

HKSのマフラーをここで売却した分を引くとは言え、あまりにも安い。

日奈子は「これなら必ずやるって言うでしょう」と思ったのだが、小岩剣は一瞬の間を置いて、

「少し、検討させてください。」

と答えたので、日奈子は意外に思う。

「あらそう。まっ車に関しては強制しない。自分でこれが良いかなって思った物を見付けて、それを実行すればいい。でもね、こうなるかなって仮説を立てた結果失敗したのと、とりあえずでやってみて失敗したのでは全然違う。とりあえずやるってのは、ただの無駄よ。」

小岩剣にとっては、それよりも、ここでかなりの格安の値段でやってもらう見返りに、何かを求められるのではと思ってしまった。

その足で、草木ドライブインに行く。草木に着くと、両毛連合のS660の姿があった。

白い、磯風のS660を真ん中に配置するように、自分の蒼いS660を停める小岩剣。

それぞれのS660を見ていたら、同じモデューロXのS660もやって来た。

以前、焼肉屋で会った、コウタのS660だ。

コウタのS660は同じモデューロXだが、マフラーに関しては、HKSで揃っているし、ECUもHKSのフラッシュエディターで武装している。だが、確かに、これで自分も同じく、HKSのECUやマフラーにすれば、日奈子の言う通りで、結局はワンメークになってしまうと思った。

「って言うか、わざわざ100馬力以上にしたって、S660でそれ必要かな?」

と、コウタは言う。

確かに、馬力面では不利であるが、その分、軽さが武器のコーナリングマシンであるS660だ。

小岩剣が最近見たホットバージョンの動画では、100馬力オーバーのS660が次々にエンジンやタービンが壊れてしまった。そして、バトルでかなりの時間、トップで逃げていたSEEKERのS660は、タービンは変わっているが、エンジンやECU等はほとんどノーマル形状に近い物だったし、追い越された時も、後のドライバーの追い越し方が、煽り運転のような事をした上で追い越すという、小岩剣にしてみれば、かなり気に食わない物だったので、結局はバカみたいに弄っても無駄になるばかりか、逆に壊す事が多いと思った。

そう言ったことも踏まえ、「要らないな」と答えた。

「やるなら、足回りメインじゃないかな?」

と、磯風。だが、磯風もまたノーマルのサスペンションのまま。

一方で、小岩剣は最初から放熱性に優れたModuloのブレーキディスクローターと耐久性に優れたModuloのスポーツブレーキパッド。そして、スポーティーな走りと上質な乗り心地を実現するModuloサスペンションが入っている。

コウタのS660には、これに加えてHKSのECUとマフラー。

「あの―。」

と、小岩剣は同じだがECUとマフラーをいじったコウタのS660を運転させて欲しいと頼む。

コウタは快くOKしてくれた。

草木ドライブインから草木橋まで行って往復する。

マフラーからの音、エンジンの吹け、そして、走りを体感する。

草木橋の上で、思い切り加速してみる。

加速性能は凄いが、国道122号でコーナリングを試すと、自分のModulo Xと比べると何か劣る。

草木に戻った時、コウタは、

「つるぎ君のS660と比べると、劣るだろう?」

と言ったので、素直に肯きつつも、

「でも、加速性能はこちらの方が勝ります。」

と答える。

(で、あるならば、心は決まった。どこでやるか。)

小岩剣は自分のS660に、日奈子から提案された物を付けてみようと思った。

そして、自分のS660にそれを付ければ、性能だけならば、草木のS660いや、群馬のS660の中でもトップクラスのS660になるという仮説が生まれた。

帰り際に、マルシェに寄って、霧降に、日奈子から提案されたにプランをやるといくらになるかを尋ねる。

「うーむ。」

と、霧降は言う。

「物と組み換えに加え、うちに取り寄せとなると、送料も発生する。そうなるとこの値段だな。」

霧降が提示した値段。

日奈子が提示した値段より、少し高い。

「分かりました。少し、検討させてください。」

と言って、小岩剣は表で、拓洋に連絡し、同じ事を尋ねたら、

「今度ばかりは、値引きも何もせんぞ。」

と釘を刺され、値段を提示されたがやはり霧降と変わらない値段。

「分かりました。実は、群馬のショップで相談したのですが―。」

「値段は変わらずか。」

「ええ。その他にも―」

と、ここまでの経緯を話す。

拓洋は黙っていたが、

「一つだけ言える。車でケチって、それで失敗したら、ケチった分も葬式代で全部パーだ。」

と言った。

そして決めた。

マルシェでやろうと。

「チューニングと馴らしが終了次第、連絡します。」

と、小岩剣は言うと霧降に、

「お願いします。これ、やってください。」

と言った。

「分かった。」

と、霧降は承諾した。

それからすぐ、日奈子にも伝える。

「誤解与えちゃってごめん。悪気や下心は無いよ。何かの時にはまたいつでも頼って。」

と、日奈子は言った。

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