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ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第六章 開花の月
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59 その才能

走行会前のドライバーミーティングを行って、コースを1周走った後、走行会が始まった。

今日、この走行会参加車両は全50台。

内、サンダーバーズは6台。東郷三姉妹、小岩剣、そして、ナガト、ネルソン、ロドニーのラリー艦隊も居る。

「つるぎ君の走る姿は初めて見るなぁ。」

と、インプレッサWRXに乗るナガト。

ラリー艦隊は、小岩剣の存在は知っているし、実際に草木ドライブインで会ってはいるが、対岸道路を走る小岩剣の姿を国道122号から遠目で見た程度でしか、走る姿を見ていない。しかも車はN-ONEで、S660に乗り換えた今の姿はまったくの未知数だ。

筑波サーキットや秩父サーキットでの坂口拓洋との訓練を元に、走行準備を進める。

準備完了。

スキー場のリフト形式。

時間の間、とにかく走りまくれ。

三条神流と松田彩香が出て行く。

次いで、小岩剣もS660のエンジンをかけて、コースインの列に並ぶと背後にナガトが付く。

「様子見させてくれ。」

「タイヤ温める意味合いもあるので、この回1周はゆっくり行きます。2周目から行きます。」

「分かってんじゃねえか。」

と、ナガト。

ナガト他、ラリー艦隊には所詮素人に毛が生えた程度に見ていた小岩剣。

しかし、いざ始まってみると、その走りに驚愕する。

走行ライン取り、そして、その中から最短ラインを出せる最速のスピードで攻めて行く。

その走り方に近いのは恵令奈だが、恵令奈が一緒になって走った時、ラリー艦隊のロドニーはとんでもない物を見た。

ストレートで、恵令奈のロータス・エキシージが小岩剣のS660を先行させるまでは分かるが、更にその先の行為、ロータスとの差を広げて行くのだ。

「バカな!?」

ロドニー驚愕。

だが、恵令奈は、

「コーナリングでは確かに凌駕する。ただ、エンジン等に手が入れられて無い以上、ストレートでは負ける。」

と評価。

玲愛も連なり走る。

玲愛もまた、

「車の性能を上げることね。」

と評価。

午前の走行が終わる。

三条神流、松田彩香のBRZvsGR86のバトルもまた、盛大なツインドリフトシーンや、オーバーテイクシーン等、迫力のシーンを見せたが、ラリー艦隊は小岩剣に、驚きと羨望の眼差しを向ける。

だがそれより早く玲愛が、

「ワンコ君は、サーキットのレースよりも、ラリーの方が向いてる。」

と言い、それに続いてラリー艦隊も同様のセリフを言う。

しかし、

「まだ追うのか?」

と、三条神流。

三条神流は、小岩剣の大本命はN-ONEオーナーズカップで走る加賀美咲である事に変わりないと知っている。

三条神流だけではなく、ADMの「サンダーバーズ」や「霧降艦隊」も知っている。東郷三姉妹「ディスタントムーン」も。

だが、ディスタントムーンは事実を伝え、失望した小岩剣を自分自身の戦力に加えることを考えていた。

しかし、三条神流は事実を告げたら、小岩剣のモータースポーツ活動の原動力となっている加賀美への思いが消え、それにより不完全な形でモータースポーツの活動を辞めてしまう、又は、抑えが効かなくなって暴走する事を恐れ、告げる事を躊躇っていた。

「ワンコ君、ラリーやろうよ!ラリー艦隊も居ることだし、赤城ディスタントムーングループでも、ラリーとサーキット兼用型のレーシングドライバーが加入するし、ワンコ君もラリー始めたら、百人力よ!」

日奈子も言う。

だが、肝心な小岩剣には、ラリーの才能があるように見えると言われても、実感が無い。

おまけに、ラリーではなくサーキットを走るレーシングドライバーの背中を追っているのだから、話にならなかった。

午後の走行が始まった。

ラリー艦隊は、回を重ねるごとに練度を上げ、更にタイムを更新して行く小岩剣の姿に舌を巻く。

しかし、あるタイムを境に頭打ちになったため、小岩剣はラリー艦隊に追い付けない上、他の軽にも負け始め、やはり才能に気付けない。

「おっ!」

突如、小岩剣がピットインする。

続いて走っていた、ロドニーのGRカローラも入る。

小岩剣は自分の荷物から、ガソリン携行官を引っ張り出した。

(危ねぇ。)

と思う。

走り通して燃料が4分の1まで減っていたのだ。

「給油か。」

と、ロドニー。

「はい。」

「次さ、俺を横に乗せてくれないか?」

指導を受けると思った小岩剣は快く了承する。

コースインすると、前で恵令奈と松田彩香のバトル。

ロータス・エキシージとGR86のバトルに、小岩剣も飛び込む。

レーシングドライバーが、ガードレールを突き破った複合コーナーに、ロータス、GR86に続いて、小岩剣もドリフトで突っ込む。

コーナリング半径が小さく取れるS660は、GR86やロータスよりコーナリングスピードが速い。

松田彩香のGR86に大接近。

バックストレートでは離されるが、その先のコーナリングでまたまた接近。

3台同時にギャラリーコーナーをドリフトで抜けて行きながら小岩剣は首を傾げる。

「なんか重い?」

「そりゃお前、俺が乗ってるからだ!俺、体重65キロ!」

「人1人の体重で、そんなに変わるので?」

「スーパーGTのウェイトハンディ!あっ知らねえか。」

ピットインする。

ロドニーは、玲愛や松田彩香に小岩剣は、スーパーGTのレギュレーションを知らないらしいと伝える。

「だからって、ラリーに行かせるのは間違いだが、モータースポーツの知識も不足している。」

「一気に成長したは良いけど、車の性能と知識不足。」

松田彩香は三条神流が危惧している事を思い出す。

三条神流がピットに入って来た。

「お腹痛い。」

と、便所に飛び込む三条神流と入れ替わりに、小岩剣のS660が、玲愛のロータスに連れられてコースイン。

三条神流が便所から出て来て、胃薬を飲む。

「一気喰いしたからだ。」

溜め息を吐く三条神流。

松田彩香は三条神流が危惧する、小岩剣に加賀美の真相を伝えた後の事について思った事を言う。

「カンナに同調するわ。つるぎ君は、モータースポーツの知識も不足している。一気に成長したは良いけど、車の性能と知識不足で不完全な存在。目標無くせば一気に破綻するね。」

「なんで俺がそう考えるか分かるだろ?俺、長野であんな事になった。アルピコで高速バス乗務目前で、美穂が浮気した上、浮気相手のおっさんと俺のバスに乗り、運行妨害行為。キレ散らかして乗車拒否して奴や他の客からのクレーム。それで嫌な気持ちになってしまい、ドジって車庫のフェンス薙ぎ倒して一気に破綻した。つるぎに、同じことになって欲しくない。」

「でも、いつか伝えないと。」

「分かってる。俺の口から話す。」

「カンナに一任する。」

松田彩香が言った時、玲愛のロータス・エミーラと小岩剣のS660がメインストレートを駆け抜けて行った。

「俺としては、玲愛とくっ付いた方がいいと思う。ま、つるぎが納得するかは分からないがな。」

三条神流は言った。

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