55 ユーロチャレンジ予選
玲愛と恵令奈、望月の出撃する、ユーロチャレンジの予選が始まる。
群馬勢はロータスとBMWが出撃だ。
型落ちのBMWやAMGの姿が多いで、玲愛のロータス・エミーラは最新鋭。
恵令奈のロータス・エキシージもまぁまぁ新しい方。
新参者がピカピカな車体を翻して、筑波サーキットコース2000を一気に駆け抜ける。
玲愛、恵令奈両者共にトップタイムをマークする。
ポルシェ、アルファロメロも追従する。
ハチロク祭りと言うが、N-ONEや欧州車も走るので、一瞬何が主役か分からなくなる。
特に、今日は雑用係の小岩剣はその傾向が強い。今、小岩剣は玲愛のタイムを計測して玲愛に伝えている。
玲愛、どこかつまらない様子。
ポーポジション確実なのだが。
(恵令奈以外、周りみんな遅い。)
と、玲愛は不満だ。
望月ですら、玲愛との差が大きい。
小岩剣は「玲愛さんトップタイム!」と伝える。
「そう。」
玲愛の返事、そっけない。
何を不満に思っているのか分からない小岩剣は困惑して、自分が何か間違えているのかと思った。
恵令奈も、淡々とタイムを出す。
恵令奈は2番手タイムをマークしている。
2番手タイムの恵令奈の後ろはポルシェ911だが、1秒以上の差がある。
「ポルシェがロータスに負けんなよ。」
と、日奈子。
「骨が無い。ワンコ君もロータス乗りなよ?」
日奈子が言う。
「玲愛、周りが張り合い無くてイライラしてんのよ。ワンコ君がロータス乗ったら、お互い張り合えるよきっと。」
「そうでしょうか?自分の体型だと、ロータスは扱い切れないかと。」
「景気悪いし、ネガティブな返事。それっ!」
「はわっ!?」
日奈子が小岩剣の脇腹を弄り、小岩剣は変な声をあげてしまった。
「景気良く!元気良く、よ!」
「ぜーっはーっ。」
柵にもたれてしまう小岩剣。
その時、下から加賀美が冷たく、寂しく、暗く、歪んだ目で見ているのに気付き、更に顔色を悪くする。
轟音を轟かせ、望月のBMW Z4が通過したので我に返る。
「車ってさ、いや、車に限らずだけど、やたらうるさいと速くて力強そうに見えるじゃん?でも、望月のBMは18台中10番手。この辺りの順位の車はみんな同じようなタイム。でもさ、恵令奈と玲愛来るよ?」
日奈子が言うと、最終コーナーを立ち上がって、メインストレートにロータス・エミーラとロータス・エキシージが飛び込んで来た。だが、望月のBMWと比べてやかましい音はしない。
「マフラーだけ変えても意味無い。排気だけ増やしても、効果は薄い。入り口と出口はセットでなければダメ。ターボで吸気量増やし、マフラーで排気量増やす。何ごともバランスよ。」
ふむふむ。と頷く。
「まぁ、学んでも学んでも、実際に身につくのは時間かかるから、焦らない。」
と、日奈子が言った時、チェッカーフラッグが振られた。
玲愛がポールポジション。
恵令奈が2番手。
望月は最後に巻き返して8番手スタートと言う結果である。
ユーロチャレンジ予選が終わったら、直ちに次のグリップ走行会が始まり、グリップ走行会に参加するメンバーが出撃して行くのを見送った。




