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ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第五章 筑波の月
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47 つくば道

筑波サーキットのJAF国内Aライセンス講習の日、小岩剣は倉賀野から筑波山の麓を目指して出発。

事前に、筑波サーキットへの行き方を調べたところ、下道では、国道354号をひたすら東へ走り、茨城県の古河で県道に入れば2時間強で着くらしいので、そのルートで行くことにした。

持物は、ヘルメットとグローブとレーシングスーツと書類と筆記用具。

「ワンコ君は、Aライ取った後、どうするの?私達と一緒に、レースに参加出来るようになる。取るだけ取って、それでおしまいじゃ、もったいないよ。」

恵令奈に言われた事が脳裏を過ぎる。

(Aライ、取った後か。考えてもなかった。)

高崎の君が代橋東交差点から、茨城県の鉾田に至る国道354号は伊勢崎や太田、邑楽、館林と言った、群馬の南部の工業地帯もある町を東西に繋ぐ大動脈の一つ。

朝の早いこの時間、多くの大型トラックが走っている。

中には、JRコンテナを積載したコンテナトラックの姿もあった。

そうしたトラックの合間を縫うように、小さなS660で東へ向かう小岩剣は、Aライセンスを取った後どうなるのかを考えていた。

(レースに出るのかな?)

と、ボンヤリと浮かんできたが、小岩剣にそのような度胸は無い。

自分がレースに出たところで、他車の妨害をした挙句、コースアウトしてグシャグシャになるのが関の山だ。

古河まで来た時、東北本線の線路を渡った。

埼玉の真ん中辺りで生まれ育ち、鉄道マニアだった時に一番近いターミナル駅である大宮へよく行っていた当時は、東北本線の列車も見てはいたが、群馬は東北本線には縁もゆかりも無く、小岩剣にとって久しぶりに見る東北本線だったが、「北斗星」「カシオペア」といった寝台列車も無い今、東北本線を走るのは貨物列車と普通列車と東武線直通列車という状態で、高崎線とあまり変わらない。違う点としては、東北本線で貨物列車を牽引する主力機はEH500で、高崎・上越線はEH200であるという点と、東武線直通列車が走っている点だろうか。

茨城県で県道に入る頃、ウィダーゼリーで朝飯にする。

ふと、後を見ると、見覚えのあるロータスが後方を付けて来ていた。

それは、恵令奈のロータスだった。

コンビニへトイレ休憩のため入ると見せかけて、恵令奈を引き込む。

「あっバレちゃったか―。」

と、恵令奈。

「玲愛も来たがっていたんだけど、一人で見に行ったらストーカーに思われると思ったのか、照れくさいのか、とにもかくにも、私が代わりに行ってってことになって―。」

「いえ。むしろ、見守っていただけていると思えて安心しました。」

「あっこれ、玲愛から。」

恵令奈は、写真を渡す。

それは、三夜沢赤城神社で撮ったらしきロータスと玲愛の写真で「無事に帰ってくるんだよ」とメッセージが入っていた。

(なるほど。無事に帰ってくるのを待っている人が居るって事か。そう言う意味合いでこの大きさ。)

小岩剣はその写真の大きさに違和感を覚えたが、エアコンの吹き出し口の下の部分に貼るのにちょうどよい大きさだったのだ。

そして、そこは一応、運転席からの視界の片隅に入る。

早速、貼り付けて出発する。

小岩剣自身も、S660のスマートキーに、三夜沢赤城神社の彩みくじに付いている叶結びの御守りを付けている。

だが、玲愛の写真は、実際に、無事な帰りを待つ人がいると実感させ、小岩剣により一層、安全意識を高める物に思えた。

(Aライ取った後の事はまだ分らないけど、でも、無事に帰らない事には話は始まらない。)

と、思いながら、小岩剣は筑波サーキットに着いた。

 

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