表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第1章 始まりの月
4/78

2 榛名・小野上

吾妻線の中之条駅と群馬原町駅の中間辺りの忠央食堂で、三条神流がアポを取った仲間と合流。名前はコロラド。

車はアルトワークスだが、これでラリーもやっているらしい。

「ワハハ」と笑い合う三条神流と松田彩香とコロラド。だが、小岩剣は付いていけない。

ある人から、自動車整備士向けの教科書を譲られて、それを元に車の勉強はしている。

地頭は良いらしく、おかげで車の基本的なことは頭に入ったのだが、彼らの話す内容は、自分達の車の改造や走行経験に関する内容。故に、ノーマルのN-ONEに乗っている小岩剣は入りたくても入れないのだ。

なので、小岩剣はまた、自動車整備士向けの教科書を読み漁る。だが、もう何度も読んだため、この教科書から小岩剣が得られるものはもうほとんど得てしまっていた。

カルビラーメンを食べるが、その間も小岩剣は話に入れず、昼食を終える。

華奢な見た目の割に大食いな松田彩香は大盛りのカルビラーメンだけで無く、モツ煮定食まで注文していて、小岩剣は引く。

横の吾妻線の線路を211系が通過した。

「185系も来なくなったのですよね。吾妻線には。」

と、切り出すが届かず。

「はぁっ」と、ため息。

(邪魔なのかな?俺。)

とまで思う。

「あのー。」

と、松田彩香にようやく届いた声は、

「ちょっと急用が出来たので今日は引き上げます。」

と言う物だった。

「あちゃ。ちょっと夢中になり過ぎたかな?」

と、松田彩香は頭を掻いた。

(ひよっこを手元から離しちまったな。いくら、あいつが行くところにこっちが行ったとは言え、付き合わせる事してこれは、こっちに非があるよな。)

三条神流も思う。今更そんな事を思ったところで無意味だが。


小岩剣は中之条の町を抜けて、小野上温泉の寂れた温泉街に入る。

側溝のグレーチングから湯気が出ている光景を見ると、ここが温泉街と実感する。

日帰り入浴施設を見つけたので入ってみる。

400円という破格の割に充実した設備なのは、やはり温泉地で風呂を沸かすための燃料代も最小限に済むからなのか?

「ふーっ」と息を吐きながら、温泉に浸かりながら、

(さっきはあんな態度取ってしまった。少なくとも三条さんには後で謝っておこう。)

と思う。

しかしながら、今の自分は一応、車の知識は得たが、それは教科書に書いてある基本的な事。

(鉄道マニアの頃も、ブルトレばかりだったから、他の奴との話が合わず、ブルトレ無くなったら、どこへ行けばいいか分からなくなってしまった。このままでは、また同じことになる。そしてー。)

不意に、目の前で自分が大切に思っていた姉のような存在の人が、別の人に取られ、大阪に行く寝台特急ブルートレインに乗って行ってしまった光景を思い出した。

鉛色の空から雪が舞う青森駅。

必死になって、列車を追って、ホームの端から「馬鹿野郎!幸せになれよ!」と叫んだ後、泣き崩れ、自分もその日の寝台特急で関東に帰った。

その後は、孤独で、無気力で、なんとなく生きていた。

だが、このままでは、またそうなるだろう。

(だけど、何をどうすればいい。)

と、小岩剣は悩むが、何もわからなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ