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ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第四章 月の出
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37 お披露目

大間々の町の手前のコンビニで菓子と酒とジュースを買い、ログハウスへ向かうが、トランクというものが無いS660。買った物を助手席に放る。

(実用性は、N‐ONEの方があったな。でも、これなら付いて行けるかな。)

と思う。

運転席側のドアを開けた時、小岩剣はS660が汚れているのを気にした。

汚れの原因となるような物は無かったと思われるが、よく思い出すと、対岸道路で、変な軽トラが自滅して、積荷の水タンクの水が道路に流れ出してそれを跳ね上げていた。

(どうするかな。さっき草木で考えた洗車問題に、いきなり直面しちまったな。)

と思いながらも、出発。

国道353号に入り、早川ダムの前を通過。

ただの小高い丘と思っていたのだが、三条神流に「これはダムだ」と教えてもらって驚いた。

からっ風街道に入り、三夜沢まで攻め込んでからログハウスへ行くのだが、その最中、前方から、玲愛のロータス・エミーラが来たので、パッシングする。

玲愛は、気付かなかったのだが、以前登録したGPSで小岩剣を捕捉していたので、大慌てでUターンして、小岩剣の後ろに着いた。小岩剣は、三夜沢赤城神社まで走って車を停める。

「エスロク。どこで?」

と、玲愛。

「えっと―。思わぬところに転がっていたので、勢い余って―。」

「あっ!秩父に行っていたのは―」

「そういうこと、と思っていただいて結構です。それから、茂木に行っていたのも、車に慣れるためと思ってください。」

「なるほど。攻め込む前に、練習出来る場所で練習したって事か。きっと、日奈子と恵令奈も驚くよ!さっ早く行こう!」

「はい。あっ玲愛さん、前行ってください。自分、後ろから行きます。」

「了解!」

と、玲愛は言ったが、玲愛は小岩剣が遅い自分に遠慮して、先に行かせるよう、気を使ったと考えた。

だが、小岩剣は先行で攻め込む玲愛の走りを見ながら、どこまで追い着いて行けるか試そうとしたのだ。

なので、思い切り攻め込まず、以前のN‐ONEのペースで走る玲愛に、イライラしてきた。そして―。

「遅いってんだよコラァ!」

と、いきなりオーバーテイクしたのだから、玲愛は驚いた。

(このまま、そうだな。東の端辺りまでバトルして貰いたいね。)

いきなりハイペース走行を始めた小岩剣。

一気に攻め込んで行く。だが、完全にS660を乗りこなせていない。そして、先ほど、両毛連合のメンバーに追従出来たことが、小岩剣の過信につながった。

ロータスを、振り切れない。

これが、過信から恐怖、そして、プレッシャーになっていく。

そして、それがミスを呼んだ。

「しまっ!」

左コーナーに突入時、突っ込みすぎて、アンダーステアが出た。

路肩の土を巻き上げながら、緊急停車する。

玲愛も追い越した後、ハザード点灯の上で緊急停車。

「茂木で言われ、拓洋さんにも言われたミスを―。」

と、小岩剣は言う。

「大丈夫?」

玲愛が青い顔をしていった。

「車が―。」

と、言う第一声に、玲愛は平手打ち。

「車なんてどうでもいいのよ!いくらでも直せる!ワンコ君の身体よ!」

「どこも痛くないです。強いて痛い所といえば、今、ビンタされた所ですね。」

「なんでビンタしたか、分かる!?慣れない車で慣れない事するから、こうなるのよ!車は直せる。いくらでも蘇らせられる。でもね、人の体、人の命は、蘇らないのよ。私の両親と、妹は、私が死なせた。個人タクシーなんかに乗ろうって言ったばかりに―。」

「だったら、どうして、こんな危険な事をしているのです。ましてや、レースなんて。」

玲愛は自分のロータスの方に目をやる。

「月から見ているであろう親と弟に、私たちが、赤城山を駆け抜ける姿を見て欲しいからね。」

緊急停車したのは、ログハウスの入口の小径の分岐点だった。

なので、すぐにログハウスへ向かう。

ログハウスに着くと、やはり、日奈子と恵令奈が驚いた。

「S660。それも、Modulo X。」

「へぇーっ新車?金持ってんじゃん!」

絶句する恵令奈を尻目に、日奈子がまたも、うりうりーっと頬擦りする。

「えっと、中古ですよこれ。それも、ワケありの車を破格で譲ってもらったようなもので―。」

小岩剣は「困ったなあ」と思いながら言う。

「どういう成り行きか知らないけど、ワケありの車を破格で譲って貰えたなら、いいじゃん!もう買えないからねぇ!」

日奈子のセリフに「えっ?」と、小岩剣。

「知らないの?S660は、生産終了が決定したのよ。限定モデルのversion Zも即完売しちゃって、中古車価格も爆上がり中よ。」

「―。」

小岩剣は言葉を失った。

「どっかのセクシー大臣のバカげた発言と、日本に勝てないヨーロッパが日本潰しのために始めた規制に合わせるように、日本も変に極端な規制を始めたからねぇ。極端に、全部EVありきで話進めて、上手くいくわけないよ。」

恵令奈が溜め息をつきながら言った。

小岩剣は洗車用具を借りて、洗車する。一人でやろうとしたが、玲愛も一緒に洗車する。

「妙ね。路肩に乗った汚れじゃないね。水溜まりなんて出来るわけない状況で、水溜まりに突っ込んだような汚れ方している。122でも、対岸道路でも、今日は水が出ると思えないし―。」

と、玲愛が言うので、小岩剣は目の前で、軽トラが自爆して積荷の水タンクを落として路面を濡らしたところに突っ込んだのが原因だろうと伝える。

「えっなっ何その、ドリフみたいなの。ドラレコの映像見せて。」

日奈子が笑いを堪えながら言う。

小岩剣は32Gのメモリーカードを抜いて、「何時何分頃です」と伝える。

「ブワァッハハハハハハハハッ!うっわぁー何これダッセぇー!!どこ見てんのよ!これ、酔っ払いよ缶チューハイ飲みながら運転してんじゃねえかよ!飲酒運転で自滅って、人殺さない内に免許返納せぇやボケ老人め!」

日奈子が笑い転げるのが聴こえてきた。

玲愛も見ると、笑い転げてひっくり返ったのだが、

「でもさ、これ笑い事で済んだから良いけど、もしワンコ君に激突していたら、って言うか、一歩間違えれば、ワンコ君に突進されていたよ。本当に。私たちには、笑い話で済んだけど、ワンコ君に突進されて、ワンコ君に何かあったら―。うん。ワンコ君が、無事でよかった。」

と、最後は小岩剣が無事だった事に安堵していた。


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