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ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第四章 月の出
37/78

35 小岩剣と坂口拓洋

小岩剣が秩父へ向かう。

今日は、報告のためだ。

モビリティーリゾートもてぎの講習後、その日の内に帰宅して報告書を作成し、その翌日の仕事の後、秩父の坂口拓洋に提出である。

当初は、モビリティーリゾートもてぎのホテルに宿泊して、そこで作成しようかと考えたのだが、宿泊費が高額だった上、全部ツインルームで虚しくなりそうだったので、かなりハードではあったが、その日の内に帰宅してしまった。

小岩剣は、拓洋に報告書を提出。

拓洋はそれを一読する。

(ふーん。やはり、基礎的な部分はN‐ONEで鍛えられている。そこに、もてぎの指導が入って、ははーん。北ショートコースの1コーナーに突っ込み過ぎと言われた。Jターンの訓練時から言われた事を治せていない。)

「なぜ、言われた事を治せない。」

と、拓洋が聞く。

「良いタイムを出したくて、出来うる限り、失速したくないと言う思いから―。」

「ダメだダメだ。話にならねえ。お前、確か鉄道マニアだったってな。」

「ええ。」

「スピード出し過ぎて、コーナーに突っ込んだ結果、どうなったか知ってんだろ?」

「福知山線の脱線事件ですか?」

「ああ。確かに、あれはJRのいじめが運転士の心理状況に影響して、あんな事になったと言われているが、いずれにせよ、スピードを出し過ぎた状態でコーナーに突っ込み過ぎれば、車だってドカンと行くぞ。ブレーキングは最小限とは言うが、かと言って、突っ込みすぎると、ドカンと行きやすい。そして、行かないように余計にブレーキを踏み、立ち上がりで車がふらついて安定せず、加速がもたつき、結果遅い。」

だが、自分で言っておいて、

(自分だって人の事は言えねえが。)

と、思う拓洋。

つい先日まで、自分に言われていた事を、小岩剣に向かって言ったからだ。

「それで、追い付きたい相手ってのは、どんな車に乗ってんだ?」

と、拓洋。

加賀美を思い出したが、N-ONEの加賀美とは言えない。

「相手を知らねえと、こっちも考えようも教えようもねえんだよ。」

「大本命の人は、外車のスポーツカーです。」

「バカかよ。N‐ONEで外車にどうやって追い付くんだよ。そりゃ確かに、東京都内の勘違いなバカ連中みたいに、カッコつける目的で外車を転がしている奴等になら、N‐ONEでも敵うだろうが、赤城山でそれは難しいよ。相手が余程の下手くそじゃねえと。つか、N‐ONEに追い付かれる程度のポンコツだったら、その辺の町中でグシャってるよ。」

小岩剣は、自分が購入した蒼いS660と、拓洋の白いS660を見比べる。

拓洋の白いS660は、自分が追い付きたい人達と言った人と激しいレースをしていた。

拓洋は小岩剣に、「蒼いS660に乗れ」と言い、自分が運転席、小岩剣を助手席に乗せて、定峰峠に向かう。

(最初から、こんな高性能モデルに破格で乗れる事に、感謝しろよ。俺の見立てなら、こいつとこの男の組み合わせは、俺のような存在になれる。)

と、拓洋は思うと、

「この先の定峰峠。俺が一発、上りを攻めてやる。いいか、何度も言うが、このS660は空力エアロ、足回り、その他諸々において、普通のS660の一歩上の状態を最初から組んである。それを活かすも殺すも、お前次第だ。よく見ておけ。」

と、小岩剣に言い、定峰峠手前のストレート区間で一旦停止後、レーシングスタートを決めて、定峰峠へ飛び込んでいく。

拓洋のS660と比べると、エアロ系で劣る部分はあるものの、足回りに関しては拓洋かそれ以上と言ってもいい程、バランスのいい物を備えている。

だが、パワーに関しては、拓洋のS660と比べると劣るが、こればかりは仕方が無い。

最初のヘアピンを、僅かにタイヤを慣らし気味でクリアする。

小岩剣は歯を食いしばる。が、「ギャーッ」とか「ワーッ」とか喚かない。

(ほほう。さすが赤城の走り屋。根性はあるな。)

と、拓洋は思う。

前に、ランエボ。

「俺の知り合いだ。バトルしてもらおう。」

と、拓洋は言うと、パッシングした。

その場所から、軽くバトルになった。

(やっぱり、拓洋さんが乗ると、車が変わる。俺も、こんな風に走りたい。)

ドリフトしながらコーナーを抜ける拓洋を見て、小岩剣は思う。

連続ヘアピンが迫る。

「古嶺神社のダブルヘアピン」と、拓洋は言っているが、ここで、ランエボを仕留めるらしい。

「見てろ。」

ガクっとS660が一揺れしたが、そのままの勢いでランエボの真後ろにくっつくと、二つ目のヘアピンで一気にインサイドへ飛び込み、ドリフトでクリア。

クロスラインを取られて、ランエボは後方へ撤退。

「今のは、変形溝走り。溝走りってのは、ラリーで使うテクニックでね。イン側のタイヤを側溝の溝に引っ掛けて、タイヤのグリップを増量させ、究極のグリップ走行状態を作る。要するにジェットコースターのような物だ。ただ、失敗すると、スピンしたり、車壊すことになるから、これは練習を積み重ねるんだ。頑張れよ。それから、あのランエボ、4WDだ。腕次第で、このS660でAWDにも勝てる。外車とも、いい勝負ができる。車は出来た。後は、お前の腕次第だ。これは、練習あるのみ。もし、バトルの練習相手になって欲しい、サーキット走行したい、走りを見て欲しいって思ったら、いつでも来いよ。」

初めて、拓洋は「いつでも来い」と、小岩剣に言った。これは、小岩剣には認められたと感じた。


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