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ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第1章 始まりの月
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1 三条神流の誕生日

2月26日午前7時頃、三条神流は起きた。いや、起こされた。

いきなり身体に何かが乗っかって来たのだ。

「グッドモーニング!マイダーリン!」

「今、バッドになったわ!」

松田彩香が三条神流の身体に飛び付いたのだ。おかげで三条神流は朝から目覚めが悪くなる。

「今日はカンナの誕生日だから、いい事してあげる!」

「いい事ってー」

「嫌だなぁ。夜這いだよ。」

「とっくに朝だ!起きろ!総員起こし!」

三条神流、スマホから大音量で起床ラッパを鳴らして叫びながら飛び起き、松田彩香を跳ね飛ばす。

「グリニッジなら、まだ夜だよ?」

「いつからイギリスになった!」

「だから、今日はイギリス行こう!」

松田彩香の言う、イギリスとは海外旅行では無い。

「ああ、あそこか。それで、お前の願望を爆発させるのか。ふざけんな!なんて誕生日だ!って言いたいが、お前の可愛い眼鏡っ娘の顔に免じて言わない。」

三条神流はぶっきらぼうに言いながら、顔を洗って来る。誕生日に朝から変な起こし方をされ、不機嫌だ。

松田彩香は既に顔を洗っていた。

そして、いつでも出掛けられる体制。

三条神流も手早く準備を済ませて、出掛ける体制に入る。

望月不動産で契約した2LDKのガレージハウスへの引っ越しを終え、同棲を始めた三条神流と松田彩香。だが、まだ入籍や披露宴、挙式はしていない。

松田彩香、三条神流共に大桐赤城神社で挙式をしたいのだが、冬の今は雪で閉ざされていて、行くのが困難だからだ。

ガレージハウスとは名ばかりに、かつては農家だった古い空き家だった家屋を中古の建て売り物件として買っただけの住まい。

1階は玄関とガレージと、ちょっとした小上がり。かつては小上がりに納戸があったらしいが、荒廃しており、三条神流と松田彩香が買った際に、リフォームして、ガレージに止まる車を眺めながら友人達と歓談できる場所にした。

2階は2LDKの居住スペースだ。

1回のガレージで三条神流がZD8型BRZのエンジンをかけた時、三条神流のスマホに、小岩剣から、「お誕生日おめでとうございます。」と連絡。

「ありがとう。」

「今日は、群馬におりますのでロックハート城に行きます。何かお土産買って来ますね。」

「気をつけてな。」

その連絡を聞いた松田彩香は、「お邪魔虫」とボヤく。

「そうは言っても、こっちの私情であいつの出掛け先変えられないだろ?嫌なら別のとこ行けばいい。」

「まぁね。行こっかこっちも。ロックハートに。着いたら、こっちからも連絡して合流しましょ。」

松田彩香は少し頬を膨らますが、三条神流の言い分が正しい。

からっ風街道を駆け抜けて、赤城インターから昭和インターまで無意味な高速移動をし、高山村の山に入ると雪が増えた。雪の中を走り、目的地のロックハート城に着いた。松田彩香は三条神流の誕生日を、擬似イギリス旅行気分で楽しみたいらしい。

学生時代は、けやきウォークのフードコートやゲーセン、映画館だったのだが、大人になった証だろう。

歩いていると、結婚式に出会し、それを見物していると、松田彩香の気分を害した奴がやって来た。

「あれ?」

と、小岩剣。

「擬似イギリスで俺の誕生日を過ごしたいと。でも、こんなぼったくり、午前中で見終わっちまうだろうから、まぁ午後には、草津か伊香保に行くだろうけど。一緒に来たいなら、俺で無くこいつに許可取れ。」

三条神流は松田彩香を指すが、松田彩香は「おいでよ」と言ったのだからおかしな物だ。

「えっと、この後は四万温泉に行こうかとー」

「やめとけよあそこ車は。狭いし人多いし、身動き取れなくなる。」

言いながら三条神流は、三条神流は中之条の知り合いにアポを取ると、

「昼メシは中之条に行く。その後、榛名登って伊香保で一風呂キメよう。スノーラリーだぜ。」

と、三条神流はニヤリと笑った後、松田彩香に歩み寄る。

「悪いとは分かる。アヤには悪いことは分かる。後でレイプするなり好きにしろ。だが、つるぎを一人にしたらまずい。俺も長野であったが、俺と違い、土地勘あるけど、見知らぬ不慣れな地に一人で出て来たんだ。作り笑いだが、かなり無理してる。ほっとけねえ。」

「分かった。」

松田彩香はため息混じりに頷いた後、

「この借りは、カンナを磔にして焦らして生殺しにしながら考える。」

と、ニヤリと笑って言った。

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