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ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第二章 月明かりに照らされて
24/78

22 約束破り

今日の臨時施行は1本だけではない。

もう1本、別の列車が来る。

こちらは、JR貨物で廃車となったDE10が新潟から倉賀野に運び込まれることになったものだ。

後日、こちらは専門業者がやってきて、廃車解体されることになっている。

新潟発の配8788レをEH200が牽引してきた。

倉賀野に運び込まれるDE10の後部には、高崎操車場(配8788レは高崎操車場止まり)から別の配給列車で田端を経由して、隅田川貨物ターミナルの貨車区に入るコンテナ車。

「前オーライ!」

「了解、前オーライ!」

短い汽笛を鳴らし、HD300を倉賀野駅から高崎操車場へ走らせる。

連結すると、別の配給列車で田端に向かう貨車を切り離し、倉賀野貨物ターミナルへ向かう。

僅かな区間ながら、普段とは違う事をするときは、かなり緊張する。

そして、倉賀野貨物ターミナルの資材センターの方のヤードへDE10を押し込んだ上で夕食休憩だが、臨時施行に加え、同日、高崎線に接続する東北本線の東大宮駅で発生した人身事故のためダイヤ乱れが発生し、しっちゃかめっちゃかの状況になり、まとまった休みになったのは、結局、仮眠休憩に入る頃だった。

(あーっ。今日は目茶苦茶だった。冬の灯油貨物が始まったら、もっと大変だろうなぁ。)

と、小岩剣は思いながら、事務所を出る。

「おい!」

いきなり壁ドンされる。

「玲愛の事、無視しといていい度胸よねぇ。」

日奈子だった。

「ちょっ!日奈子。」

恵令奈が止める。

姉二人で襲撃を仕掛けたのだが、日奈子は黙っていられず、職場を出たところを襲撃しようとしたが、ダイヤ乱れのため深夜の襲撃になったようだ。

「ワンコ君の職場にも迷惑かかる。」

「抑えられないのよ。」

小岩剣は溜め息をついた。

そして、自分の住むアパートの方へ行く。

「話ってのはなんですか?」

アパートの前で聞く。

「ねえ。玲愛があんたにシカトされて、どんな顔したと思う?」

日奈子が詰め寄る。

「私は、長女として、妹達が悲しむのを見たくない。恵令奈が振られた時は、納得できる理由だったけど、今回のあんたのは納得できない。答えもしないでシカトなんて、許せない。」

「―。」

「カンナから聞いて、過去なら知っている。過去のトラウマか?」

小岩剣は肯いた。

「玲愛は、あんたの元姉とは違う。あんた、知ったのでしょう?私たちが、両毛線の踏切の、SL脱線事故の遺族だって。」

「―。」

「玲愛が、どんな辛く、苦しい思いをしたと思う?あのとき、個人タクシーにしようって言ったのは玲愛よ?分かるっしょ?玲愛は「自分がこう言わなければ、親も、妹も死ななくて済んだ」って、ずっと自分を責めていた。未だ、PTSDと戦っている。」

「全部聞いてます。ですが、だからといって自分は、同情で玲愛さんを好きになることは無いです。」

「でしょうね。」

「とにかく、明日、改めてログハウスの方に行きます。そこで、もう一度、話を聞きます。」

日奈子は納得いかないようだったが、恵令奈が「明日にしよ。」と言い、二人は帰っていった。

(俺だって、玲愛さんの事、気になってる。だが、同情で玲愛さんを好きになることは無い。大本命は加賀美さん。でも、追い付けない。だから、速くなりたい。そして、目指すは加賀美さんの背中。なのに、俺は、結局どうすりゃいいんだよ。)

と、小岩剣は思った。


三条神流、勤務を終えた後、松田彩香と自宅まで隊列走行。

その際、distant moonのロータスとすれ違った。

自宅のガレージハウスに着くと、

「明日はブレーキパッド交換。」

と、松田彩香は言う。

三条神流も走行距離を計算して「俺も一緒に行って、オイル交換するかな。」と言った。

翌朝、三条神流と松田彩香はマルシェに行き、松田彩香はブレーキパッドをウィンマックスRC2に交換。

三条神流はオイルをレッドラインに交換。更に「安心総点検も頼むわ」と言った時、ちっこい子供のような奴が乗るN-ONEがやって来た。

小岩剣は出撃しようとしたところ、警告灯が点き、説明書を一瞬見て、それがオイル交換の警告灯だと知り、マルシェに連絡し、今すぐに対応できると言うので頼んだと言う。

「私はブレーキパッドの交換。それで、こいつはオイル交換。」

と、松田彩香は言う。

「そうだ。今夜、ワム行く?」

「えっ?何かあるのですか?」

「サンダーバーズとADM勢揃い出来るから、みんなで集まろうってことになってんだよ。でもさ、つるぎ君は最近、玲愛ちゃんに―。」

それに、小岩剣は、玲愛の事を思い出したが、目の前にいる三条神流と松田彩香と共に過ごす時間が最近無い事や、玲愛達の仲間なので自分達とは遊ばないと思われているように感じてしまった。

「いや、今日と明日、明後日と暇ですので、参加させていただいてもよろしいでしょうか?」

と言った。三条神流は何か妙に感じたが、

「いいぜ。」

と言う。

オイル交換が終わるまでの間、小岩剣はLINEで玲愛に、

「車にトラブルが発生したので、昨日約束しましたが、行けなくなりました。申し訳ございません。」

とだけ、連絡を入れた。

直ぐに、玲愛から、

「あぁーっ車のトラブルかぁ。それじゃあ仕方ないね。お大事に。治ったら、また来てね。」

と、返信が来た。

小岩剣は後ろめたく思ったのだが、松田彩香に「最近は玲愛と―。」と言われてしまったのが、まるで自分は、仲間外れにされているよう感じてしまったため、悪いとは思いながらも、三条神流と松田彩香の方へ行くことにしてしまった。

小岩剣のオイル交換作業が終わった。

そして、三条神流の方も終わった。

松田彩香も終了。

そうなれば、決まっている。

「久しぶりに、3人で走りに行こう。」

と、三条神流。

「そうね。試運転も兼ねて。どこに行こうか?今夜、ワムだから、ワム方面だと―。」

松田彩香が考える。

「あっえっと、桐生の方に行ってみたいです。」

小岩剣が言う。

「桐生かぁ。んじゃ、桐生川ダムまで行ってみる?」

「そうだな。ついでに、ひもかわうどん喰わせてやろう。お前、ひもかわうどん喰った事あるか?」

三条神流が聞く。

「いいえ。無いです。」

「よし。じゃぁ、話は決まりだ。行こうぜ。」

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