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ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第二章 月明かりに照らされて
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10 新日常

帰り際、小岩剣は10L給油と300円のシャンプー洗車をした後、倉賀野のMr MAXで食料品を買い出し、自分の住むアパートに帰宅する。

ガス口は1つ。その他、安物の電子レンジとオーブントースター。

小さな安物の炊飯器。

これまた、小さな安物の冷蔵庫に買ってきた食料品を入れる。

保温にしておいた炊飯器から、米を杓文字で一杯分だけ掬い、その上に、炒めたコンビーフと玉葱を載せただけの味気ない夕飯。

小さいながらテレビもあり、それを付けるが直ぐに消す。

くだらない番組ばかりだったからだ。

家電のほとんどは、前の住人がそのまま残した、安物の家電だが、一人で暮らす小岩剣には十分すぎる。

家電付きで、1LDKの角部屋。

だが、前の住人が鉄道自殺したため、事故物件として格安の家賃で住んでいる。

夕食を食べ終えると、洗い物。

それが終わると、風呂。

風呂付き物件なのだが、今日はシャワーで済ませる。と、言うより、基本的にはシャワーで済ませてばかりだ。

シャワーを浴びて、洗濯物を洗濯機に入れて、洗濯し、終わると部屋干しした後、三条神流に一連のことを報告する。

「まっ、それも何かの縁だろう。しばらく、様子を見るだけ見てみろ。それに、お前や加賀美から話聞いているから、俺が、変な写真見ても、日奈子の仕業ってしか思わねえっつーの。そんなチンケな事で、絶縁するもんか。両毛連合に入ったらちょっと言うだろうけど。っ痛。」

三条神流、松田彩香に蹴られたらしい。

相手が松田彩香に変わった。

「強がり言っているけど、こいつだって、「サンダーバーズ」に無理矢理入れて、「サンダーバーズ」無けりゃ天涯孤独の身なんだから、安心しな。案外、後になって、プラスになるかもしれないよ。」

「ありがとうございます。それで、ちょっと、皆さんと一緒に行動できる機会が減るかもしれませんが―。」

「構わないよ。だって、元から、マイペース重視の同好会だもん。」

と、松田彩香は言った。

報告の連絡を終えたら寝てしまう。

だが、寂しく感じる。

いつもと変わらないのだが、なんとなく、寂しい。

(この前のログハウスの夜は楽しかったな。なんやかんやあったけど。)

と、小岩剣は思う。

スマホから起床ラッパが鳴り、起きる。

顔を洗って、トーストを一枚焼いて、それで朝食にし、勤務先の倉賀野貨物ターミナルへ徒歩で出勤。

出勤し、作業着に着替えて、HD300に向かう。

そして、朝8時を過ぎる頃、根岸行きの石油返空列車を倉賀野駅まで引っ張り出す。

タキ1000で編成された、いわゆるタンカー列車だ。

夏はタンカー列車の本数は少ないが、冬になると、灯油を運ぶ臨時列車が編成されるので、必然的に仕事は増える。

(最も、冬は雪降って走れる道も少なくなるからなぁ。)

と、小岩剣は思う。

午前から仕事し、午後の作業量が少ない時間に、短い昼休み。

一旦、帰宅して、洗濯物を畳み、カップ麺で昼食にして、昼休みを終えると、また入換作業。 

深夜まで仕事をして、列車が無くなると、翌朝まで仮眠休憩し、朝5時にまた出勤して、川崎貨物からの石油列車。隅田川からのコンテナ列車。そして、最後に、新鶴見信号所からのコンテナ列車に関わる入換作業を終えて勤務終了。

仮眠休憩したおかげで、あまり眠くない。

だが、隔勤が3連続以上の時は、用がない限り出かける気は起きない。しかし、今日は違う。

最近買った、ルンバを転がして出かけた。

(赤城の南麓。からっ風街道。行ったら会えるかも―。)

と、小岩剣は、赤城ディスタント・ムーンの姿を求めて出かけたのだ。

前橋の街を走っていると、横を、迎車表示で走るクラウン・スーパーデラックスのタクシー。

三条神流だった。

「事故には気をつけろよ!」

と、三条神流が言い、小岩剣は手を振って答えた。

(お互いに。)

と、言うつもりだ。

からっ風街道を走って、あの、ログハウスに着いたのだが、誰もいなかった。

「それもそうかぁ。」

と、小岩剣は溜め息を吐く。

仕方が無いので、ログハウス付近のワインディングロードを走り、昼過ぎ、昼飯をどうしようかと、思いながら、赤城サンダーボルトラインを登って、赤城山山頂のトレッカーズカフェでピザを食べると、また、赤城サンダーボルトラインを下り、そのまま、からっ風街道を軽く流してから、国道50号まで南下して高崎へ帰ろうとしたが、途中で、見覚えのある車を見つけた。

三姉妹のロータスだったのだ。

そこは、カート用サーキットが併設された、レーシングカフェ兼、自動車チューニングショップのようだった。

端の方には、鉄道コンテナもあるが、倉庫利用しているのではなく、これは自動車輸送用の鉄道コンテナだった。

吸い寄せられるように、そこへ入る。

カフェなんて無縁なのだが、なんとなくだ。


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