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ココロノツバサ - distant moon  作者: Kanra
第1章 始まりの月
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9 バーベキューホール

先に到着した拓洋と日奈子。

いきなりのバトルモードで、バトルをしたのだが、死にかけのタイヤを履いていたため、拓洋は危険と判断して意図的にスピンアウトして緊急停車。ここで、非公式ながらも敗北を喫した。

「いい勝負だったよ。でも、そのネオバは死んでる。草津には、S660に良いタイヤを履かせて来い。」

と、日奈子が見下すように言う。

「やるとは思ったけど、死にかけタイヤでやったらそりゃ、そうなるって。」

と、愛衣が言った時、N‐ONEがバーベキューホールに上がってきた。

それと入れ代わるように、NSXとS2000GT1が出発する。

出発する際、NSXに乗る拓洋は、N‐ONEのドライバーの小岩剣と目があった。

小岩剣は、NSXのドライバーの目付きが鋭いと思った。

「話、聞いてくれる?」

小岩剣はそれに黙って肯いた。

別に断る理由もない。

バーベキューホールの店内に入る。

卓に着くと、玲愛は小岩剣の隣にちょこんと座り、頬を赤く染めた。

「私達って、年下で童顔の男の子が好きな、いわゆるショタコンって奴。それで、ワンコ君は年上のお姉さんが好きみたいね。」

日奈子が言うのに、小岩剣は黙りを決めながら、頼んだスカッシュフロートに吸いつく。

日奈子は小岩剣に顔を近づけて、

「ならさ、私達の仲間になって欲しいなぁ。」

と言う。

「それは、どういうことですか?」

「私達と一緒に、走って欲しいって事。」

「なぜ自分を?自分は素人です。」

「カンナ、アヤ、霧降達のチーム。「サンダーバーズ」に所属するつもりでしょう?」

「みんな、速いです。そのため、自分は追い付けず、もどかしいです。」

「群サイ、覚えてる?あの時の走り、それから咲が撮影した様子、ウチに来た時に玲愛が見たワンコ君の走り。それを見た。ワンコ君は、N-ONEだけでは、収まりそうに無い器に見えた。もっと強い車に乗って、更に広い場所へ行ける。そう見えた。」

「何を言ってー。」

「咲の走りを完全にコピーしていた。その後、群サイ単独で走った時、出したタイムは咲とほぼ変わらない。同じ車に乗っているとは言え、いきなりの単独で、咲のような奴のタイム出せるのは凄いよ?大体の場合、1秒落ちから5秒以上差が開く。」

「自分のタイムはー。」

「咲の0.5秒差。」

「ー?」

「実感無いよね。」

日奈子は笑う。

「私達は、ワンコ君の才能を埋もれさせたく無いのよ。才能は、活かしてなんぼよ。ちなみに、玲愛は惚れているよ。君に。」

玲愛は微かに、頬が赤くなった。

だが、小岩剣は、

「確かに貴女達と何度か会いましたし、先日は楽しかったのですが、でも、知り合ってから日がまだ浅いです。それに―。」

一瞬考えた。

「自分は、三条さん達と一緒に走っているのです。二股をかけるのは―。」

「カンナ達と会うなとは言っていないよ。ただ、私達とも一緒に居て欲しいなって言っているのよ。カンナ達もこれにはOKって言ってる。実際、カンナ達のチームである、「サンダーバーズ」は、私達「ディスタント・ムーン」付属のチームのような物。組織構造で言うなら、私達「ディスタント・ムーン」と「サンダーバーズ」は同じ「赤城distant moon」通称「ADM」って言うチームなんだけどね。」

「でも―。」

「そう言えば、話変わるけど咲から両毛連合の呑み会行ったって聞いた。」

小岩剣は嫌な顔をする。それだけで、日奈子は何があったか察したらしい。

「ポンコツなおサルさんは、何も出来ない。ただ、集まってエロ話してるだけ。それはそれで楽しいけど、そこまで止まりよ。」

「自分は、悪口大会に対して「皆さんはレースに出たのでしょうけど、自分はそんな経験は無く、レースに出るだけでも凄い事だと思います。」とだけしか言えませんでした。」

「口だけで何も出来なきゃ、おサルさんと同じよ。悪いけど。」

恵令奈は冷たく言う。

それでも、小岩剣は首を縦に振れない。

「でも、何も出来ないのは事実ですし-」

「そう。あまりこんな事したく無いんだけど、玲愛とチューしている写真あるんだよねぇ。」

日奈子がいやらしく言うと、小岩剣は顔が青くなる。

写真で証拠があるとなれば、言い訳できない。

まして、三条神流のような、右翼的思想の強い堅物男に見られれば、最悪の場合、淫乱野郎の烙印を押されてせっかく群馬で築いた人間関係が無くなってしまうかもしれない。

「分かりました。しょうがないですね。」

と、小岩剣は渋々、肯いた。

「はぁっ。」

と、恵令奈は溜め息。

「んじゃ、この場で、玲愛と手を繋いで記念写真!」

日奈子に言われるまま、小岩剣は玲愛と手を繋いで記念写真に応じる。

玲愛は「ありがとう。」と言った。


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