第9話 番長はいやだけど質問ある?
本日2つ目の更新やで、注意してや
「花梨ちゃーん!!」
「おおよしよし、どうした兄よ。」
俺は泣きついた。
年甲斐もなく、小学生の妹に泣きついた。
「なんか学校で番長って呼ばれるー! 売られた喧嘩をなんとか捌いていただけなのにー!」
「ああー、開発区画の新番長って噂になってるやつだね。あれやっぱりお兄ちゃんのことだったんだ。こんなヒョロヒョロなのに超能力だけは本当ーーに優秀なんだねぇ」」
なまじ超能力を鍛えまくった分、バリアは強力だし、今は1200トンくらいは持ち上げられるし、護身にはマジで役立っている。ゲガしてないもん。
でもさぁ。この海上都市の超能力者たち、マジで好戦的なんだもん。
下級生にポイントと番長の座をかけて決闘を挑まれて、ランク4の発火能力をバリアで受けては不可視の腕で反撃。
ランク3の水流操作がホースからくみ上げた水球は制御権を奪っておかえししてあげたし。
俺のサイコキネシスのずるいところは攻撃が不可視なところなんだよなぁ。
炎は見えるし、水も分かりやすい。土の攻撃も目に見えるから簡単にバリアで弾ける。
いじめたいわけじゃないのに、思いのほか俺の超能力の出力が高くて相手の自信をへし折ってしまうらしい。
時には「押忍、精進します、番長!」
と慕ってくれる後輩もいるけど、もう完全に番長なんよ………
そんな弱いものいじめみたいにポイントが集まっても、うれしかねぇよ。
なんなら未だに俺の超能力の成長は止まらないものだから歯止めも聞かない。
いや、超能力の修業をやめればいい話かもしれないけど、握力と超能力を鍛えるのはたのしいのでそこはなんとも………。
というか、すでに握力の方は頭打ちなのにいまだに超能力のほうは成長止まらないのすごくね?
「もう番長やぁだ………おうちかえるぅ………」
「よしよーし、ここがおうちだよー」
なきごと言ったら慰めてくれるいもうと………しゅき。
「でも、実際問題どうしたものか………お兄ちゃんが番長なのはもう事実だし、どうしようもないんじゃない?」
「そんなぁ………!」
がっくしと項垂れる。
「はぁ、ならもうせめて外に出る時だけでも喧嘩売られないようにしたいなぁ………」
「ああー、そういや喧嘩推奨してたもんねぇ、この海上都市…」
喧嘩して能力をどんどん使って能力を伸ばせって方針だし、怪我してもなんだかんだすぐに回復するし、マジでなんなのよ。この海上都市。
それでいて超能力者の情報が外部に漏れないってちょっとおかしくない?
「ねーお兄ちゃん。こういう時こそ大人を頼ろうよ。」
「というと?」
「白鳥さんがお兄ちゃんをここに連れてきたんだから、白鳥さんに責任とって番長の噂を収束させてもらうとか。」
うーん。異能保安局の職員よ?
能力測定の時には世話になったけどその程度よ?
⭐︎
「ということなんで助けてください。」
電話越しに頭を下げる
相手はもちろん白鳥さん。
『キミは私をなんだと思っているのかね。便利屋じゃ無いんだよ。そんなに暇でも無いし。』
「でも俺、番長なんてガラじゃないんです! クランからの勧誘もうるさいし!」
『ああ、君の噂自体は知っているが私がどうこうできるわけがないだろう』
「そ、そんなぁ………」
相手が絡んできただけなのに……。
俺が超能力が使えるってわかってるから気軽に喧嘩を申し込んでくる。
おろらくなんだけど、ランク7からは目に見えるハイランカーなんだと思う。
ハイランカー相手にもし勝てたら自慢どころじゃ無いんだろう。
8以上の人がどんなものなのかわかったものじゃないけど、わりと気軽に申し込める高ランクがランク7なのかもね。
とはいえ、ランク8の人が俺にちょっかいかけてきたらどうしよう。
勝てる気がしない。ぷいきゅあグミ弾の練習しとこう。
ベランダから外に出て
夜空に向かってドドドドドン!!!
連射速度はまだ太一の氷のガトリングに劣るかなぁ。修行しよ。
『千景くん。あなた、急な環境の変化に体がついてきてなくて疲れちゃってるのよ。』
グミ弾撃ちを続けながら電話に耳を傾ける。
「ストレス、溜まってるってことですか」
『そう。なにか好きなことって無いの?』
「好きなこと………」
うーんと首を捻りながらグミ弾の形をうすーくして回転させてみる。
「超能力の修行と、ぷいきゅあかなぁ………」
念力を薄く、そして回転早くする修行を続けていた。
サイコキネシスの修行は楽しい。
水流操作が出来るようになってからは特に。
できることが増えたから、修行のバリエーションも増えたんだ。
おかげで日毎にモリモリ成長してるのが実感できる。
単純な重量挙げなんかは能力測定の時にプールの水を持ち上げたことに着想を得て、放課後に開発区画の北にある眼下に広がる広大な海で海水を使った重量あげトレーニングできるし、そこから今度は水流操作の修行に移れる。本土にいた頃よりもこそこそとしない分濃密な修行ができるんだ。
水流操作を鍛えることで、自分の感覚的には同じ原理で操作できる空力操作と土砂操作も鍛えられるってお得。
この時間がかなり好き。
『修行か。ならば、さっさとクランに入ってしまえ。【能力格闘倶楽部】なんてどうだ? サイコキネシスの修行にはもってこいだろう?』
「いやですよ。僕は喧嘩がしたくて能力を鍛えているんじゃなくて、ただただ能力が育つのが楽しいから修行してるんです。」
回転させた円盤型の念力がベランダの手すりに触れると、
ーージジィィィン!
と、火花と共に不協和音を発生させた
「うひっ!?」
よく見ると、手すりがちょっと削られていた……
マジで出来た…
念力の操り方に、俺、マジで才能あるかも。
『どうした? 変な音が…』
「す、すみません、ベランダの手すりをちょっと削っちゃいました」
『??? よくわからないが怪我がないならなによりだ。』
はあ、どうしたらいいのかなぁ。
番長はやりたく無いし、ストレスはたまるし。
いじめられないだけマシかもしれないが、やはり1番のストレスは喧嘩をふっかけられることだと思うんだよね。
「番長として喧嘩を売られない方法ってなんか無いですかね」
『アレも嫌コレも嫌と言って私を頼っているが、自分でどうにかする気はないのか? さっきも言ったが、私は保安局の人間であって、便利屋ではない。多少有名になってしまったのなら、もう、別人にでも生まれ変わるしかないぞ』
ふぅっと、タバコをふかすような吐息が聞こえる。
しかし、その言葉に天啓を受けた。
「別人………そうか。別人になればいいのか。」
『は? 何を言ってる? 死ぬ気か? 異世界転生なんて物語の中だけだぞ』
「自殺はしません。ちょっと変装すれば、千景だって気づかれなければ、きっと喧嘩は売られないはず!!」
そうだよ。外を歩く時に俺が千景だから喧嘩を売られるんだ。
だったら千景じゃ無くなればいい。
そしたら番長じゃない。だから喧嘩を売られないってスンポーだ。
『ま、まぁ、解決手段がみつかったなら何よりだよ。ストレス解消の方も、どうにかしないとな。千景くん、アクアパークはもう行ったか?』
「アクアパーク? 商業区画のテーマパークですよね?」
アクアパークは海上都市の、水を使ったアトラクションが豊富なアミューズメントテーマパーク。
夏場がとてと大盛況だけど、温水施設もあり、春先のこの季節でもとてと人気の施設だ。
プールと遊園地の融合みたいな施設らしい。
『ああ。保安局の福利厚生とアクアパークの株主優待でチケットが手元に4枚ある。私は要らないから、友達と気分転換でもしてきたらどうだ?』
「え、いいんですか?」
『いいよ。私は仕事ばっかりで行く時間もないし、休みの日は基本寝てる。君には期待しているんだ。能力測定や実験などにも協力的だしね。恩返しとでも思ってくれ。期限を切らしてチケットを腐らせるのも申し訳ない。貰ってくれたら助かる』
どうやら初めから能力の測定に協力的だったのは白鳥さんにとってかなり好印象だったらしい。
どこの世界にも自分の能力を隠したがる人間はいるものだ。
金持ちを悟られたく無い。
ヤクザを悟られたくない
俺だって、本土では超能力を悟られたくなくて隠してたくらいだ。
超能力の測定に非協力的な人間がいても不思議じゃ無い。
「では、そういうことなら遠慮なくいただきます。」
『うん。楽しんでくるといい。』
ピロン、という電子音と共に、4枚の優待チケットが俺のスマホに届いた。
あとがきちゃん
ご拝読いただきありがとうございます
面白いと感じてくださったらブクマと☆☆☆☆☆→★★★★★にしておいてください。
次回【女装するけど質問ある?】