第8話 番長だけど質問ある?
どうも。千景です。
海上都市のとある中学校に入学して早1週間。
今日も今日とて全力で超能力の修行を毎日しながら学校生活を送るんだけどさ。
入学早々に学校ではばをきかせてきた曽我太一くんを窓から放り投げる、というグラウンドを見たら学校一の問題児が怒声をあげながら降りてこいだの俺は負けてねえだのと叫んでいる光景は、奇妙に映ったことだろう。
そして、そんな現状を噂し、さらには彼の不幸を願う者たちの悪意によって曽我太一が転入生にボコボコに負かされたという捻じ曲がった事実が光の速さで学校中に噂として広まってしまった。
その結果
「押忍! 番長!! お疲れ様です!!」
「あ、うん。花壇のお手入れ頑張って………」
「おっすーバンチョ。今日もちっこいね」
「やめろ頭撫でるなー!」
「バンちゃん、下級生が挨拶に来たいそうだよ。喧嘩をご所望」
「おん。何時ごろ?」
「今から」
「じゃあ俺姿クラますから、適当に相手しておいて」
「りょ」
なんか番長になってた。
☆
「どうして………! どうしてこうなった!!!?」
人生はうまくいかないにぇ!
思い通りになる人生なら苦労はしないけど、少なくとも番長と呼ばれるような人生は送りたくなかったにぇ!!
教室で頭を抱える………!
そんな俺の背中をぽんぽんと慰めてくれる人物が一人。
ユウカだ。
「そりゃあ、チカちゃんがウチの開発区画第二中学で頭張ってた番長の曽我を倒しちゃったんだもん。撃退動画込みで海上都市に発信してるから秒で広がるよ」
なんてことを………
俺の個人情報は保護されない運命にあるようだ。
「おかげでいろんなクランからお誘いが鳴りやまないんだよ………!」
スマホとエデンウォッチに通知が来るわ来るわ。
ウォッチに通知がくるたびに微振動で教えてくれるものだから、左腕からくる振動にノイローゼになりそうだ。
ウォッチの通知のみ振動をオフにしておかないと頭がおかしくなる。
腕に振動がくるとついついチラ見してしまうからね。修行中も集中できない弊害が発生したもん。
たすけてぷいきゅあ!!
「へえ、どんなクランからお誘いがあったの?」
なんて言って俺のスマホを操作するユウカ
「ほとんどが怪しい商売をしそうなクラン。あとは【ココちゃん親衛隊】と太一が入っているっていう【能力格闘倶楽部】ってとこ」
なんか麻雀ゲームしそうな名前のクランだなぁってなんとなく思った。
でも名前からして、喧嘩強そうだし、喧嘩に特化した超能力の鍛え方をしているのかもしれない。
だから太一はあんなに凍結能力の扱いが上手だったんだ。
「ファイトクラブは人数も多いし、能力が伸びるらしいけど、ランク5以上の超能力者しか入団できない精鋭だねえ。そこからオファーくるってすごいじゃん」
「いやだよ。俺、喧嘩したことなんて、この間の曽我が初めてなんだぞ! たまたまサイコキネシスが使えるだけで、俺の運動能力はポンコツだしこの間曽我に勝てたのだって、たまたま俺の念力バリアと相性が良かっただけだろ。」
すこしだけいい気になったけど、やっぱり超能力は人に向けるものじゃないな。
気持ちが大きくなると人格が歪みそう。
「ココちゃんは?」
「それこそ一番ないだろ。意味わかんねえし。誰でも、それこそ無能力者でも入れるらしいけど、ココちゃんってのも会ったこともないしそれを信奉する信者の気持ちもわからん」
どっかに動物を愛でるだけのクランとか無いモノか………
と教室でぐだぐだやっていると
「おい千景! いい加減イノクラに入れよ!」
「ぴぃ!? 太一!?」
曽我太一が俺の机まで一直線にやってきたかと思えば、バン! と机をたたきつつ机を凍らせ、大声で怒鳴って来る
思わず変な声が出てしまった。
イノクラはもちろん【能力格闘倶楽部】の略称。曽我の所属しているクランだ。
「いやだよ。喧嘩ばっかりするクランになんか入ってもしょうがないじゃん!」
と否定するものの
「しょうがなくねえ。俺がてめーに負けたなんて思っちゃいねえんだ。だが、一度本気で殴り合った仲のお前はもうダチだ。今度はダチ同士思う存分クラン内部でやりあおうじゃねえか! なあ、ば・ん・ちょう!!」
がしっと肩に左腕を回される。逃げられない………
耳元で大声で番長と言われて脳がクラクラする。
しかも右手で鳩尾をドスドス殴ってくるし………
「あーあーあー! 聞こえないー!!」
なんでこんなに喧嘩っ早いんだ。俺はもう耳を塞いで机に伏せってやり過ごすしか思いつかないぞ。
あの時、俺が太一を戦闘不能にしたわけでもなければ、俺が戦闘不能になったわけでもない。
どっちも怪我の一つもしていないのだから実際の勝負はついていないものの、転入初日の喧嘩は間違いなく俺の勝利だったはずだ。判定は場外。
そっからというもの、毎日のように喧嘩を吹っ掛けられる始末だ。
それにさ、俺が曽我に勝ったという噂がたってから、俺がチビで弱そうに見えるからって、この学校の下級生から喧嘩売られるわ上級生から調子乗ってるからお灸を据えてやるなんて言われるわ。
もう散々なんだよ。
ウォッチつけてない上級生にはペコペコと頭を下げ、ウォッチ付けた下級生は適当に念力で相手してあげているうちにいつの間にか番長なんて呼ばれるようになってしまったし………。
喧嘩なんかこりごりだ。
俺に負けてからの太一は、乱暴なことはあまりしなくなったらしい。
天狗になってた鼻っ柱が折れて学校で天下じゃなくなったからかもしれない。
「曽我、あんたいいかげん相手にされてない事分かりなよ」
ユウカがプススー! と笑いながら曽我を追いやる。
肩から腕が外れて呼吸が楽になる。
ふぅ。………助かった。
「あん? なんだてめー! 俺と千景の喧嘩にちゃちゃ入れようってんじゃないだろうな」
「喧嘩にすらならないでしょ。負けてんだから」
「上等だユウカ。その喧嘩買ってやるよ」
「やってやろうじゃないのよ!」
だけど今度は俺の机を挟んでユウカと太一が腕まくりをして互いににらみ合う
「はん! ランク5ごときがランク7に勝てると思うなよカスが!!」
「そんな思い上がりで足元救われてもしらないからな負け犬!!」
なんでこいつらが喧嘩しようとしてるんだよ。
俺の学校生活、どうなっちゃうのよ………
あとがきちゃん
ご拝読いただきありがとうございます
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たぶん1章とか起承転結の起がおわったとかそんな感じなんじゃないかな。
見切り発車でなんとなく書き始めたよくある異能バトル小説だけど、まあ飽きない限り続けていくよ。
次回【番長はいやだけど質問ある?】