第6話 初登校だけど質問ある?
いよいよ本日から新しい学校への転入だ。
転入の挨拶を練習しなければ。
ということで、
「千景です。宜しくお願いします。」
「固い。」
転入の挨拶を考えていたところ、妹に駄目だしされてしまった。
「ちーちゃんって呼んで!はぁと」
「あ、待って鼻血でる」
「なんでや」
ふざけたらあおり返された。
それどころか自分のスカートを持ってきて俺にはかせようとしてくる始末
「あーもー、転入の挨拶ってどうすればいいの!?」
「普通にすればいいんだよぉ。結局は普段の行いの慣れだから、挨拶なんて適当でいいんだから」
「花梨はどうやって挨拶したんだ?」
まとわりつく花梨をあしらいつつ、転入に関しては一足先に先輩となった妹様に確認をすると
「ええっと、たしか。花梨です! 好きなものはぷいきゅあと仮想ライダーとお兄ちゃん! よろぴっぴ!! ってあいさつしたよ」
「そんなの完全に黒歴史じゃねえか」
ダメだ。ブラコンこじらせている上に変な奴認定される。
俺はそんな合金でできたメンタルしてねえよ。
「でも友達はすぐに作れたよ」
そういやすぐに超能力者の友達作ってたな。
「くっ、コミュ力お化けめ………」
思わず歯噛みする。
しかし花梨はこともなげに続ける
「お兄ちゃんは超能力っていう最高のカード持ってるじゃん。この海上都市じゃ超能力使っても普通の事だし、それメインにすればいいんじゃないの?」
「お前………天才か?」
そうじゃん。俺には超能力という会話デッキが存在する。
困った時にサイコキネシスだ。なーんだ心配して損した。
「ふっふーん。この花梨ちゃんのズノーに恐れおののけ!!」
「ありがとう花梨。よーし、こうしちゃおられん。行ってきます。」
☆
るんたったるんたったと俺の転入予定の中学校まで歩いていると
「いっけなーい! 遅刻遅刻!」
と食パン咥えた同い年くらいの少女が背後からショルダータックルを仕掛けてきた!!
「しまった! 起承転結の起だ! 逃げなければ!!」
振り向いた時には目と鼻の先に相手の肩が迫る!
起が形をなして襲ってくるとは。海上都市とは誠に危険な場所ぜよ。
俺は念力で前転しながら身体を浮かせることで少女のタックルを躱すことができた。
彼女が通り過ぎた後には凄まじい砂埃が舞い上がっており、直撃を喰らったら俺の体が弾丸のようにすっ飛んでいっていただろうことは想像にかたくなくぞっとした。
「む! なかなかやるなキミ。【身体強化】の私のタックルを躱すとは。浮けるとは卑怯なり。」
「俺も出会い頭に殺人タックルを仕掛ける野蛮な女の子がいるとは思ってもいなかったよ。」
ふわりと着地すると、格闘技なんかやったことないけどとりあえず右手を前に出して構える。
しかし、そんな俺に反して少女は構を取らず、にっこりと笑って手を差し出す。握手かと思ったけど、その手には齧りかけの食パン。
え、どうしろと?
ショートボブで活発そうな女の子。こわい。
しかし顔はかわいい。そのパンはいらないから彼女の手首を掴んでパンは彼女の口に放り込む。
「はむはむごっくん。君が今日から転入してくる外部生だということはもう調べがついている。生嶋千景くん。たぶん同じクラスの隣の席で、有田優香。よろしくね。困ったことがあったらランク5の私が助けてあげる!ユウカって呼んでね。」
「え、え、ああ、はい。よろしくおねがいします。」
しまった。初日からわけわかんない人に絡まれてしまったようだ。
でも、まぁ、わざわざ助けてくれると公言する人を無碍にするのもなぁと思ってしまうのだ。
たとえ出会い頭にショルダータックルを仕掛けてきた相手だとしても。
「ところで、なんで同じクラスだってわかったの?」
とりあえず気になるところはそこなので単刀直入に伺うと
「昨日私のクラスの机が追加されて、名簿の「い」から男子の席がうしろにずれていったし…、先生がね、転入生が来るって言ってたからね!」
「わお。転入生の空いてる席ってそういうシステムだったんだ! そりゃあ転入生ってバレバレだ。」
「あと同じマンションのお隣さんに生嶋さんが引っ越してきたからこりゃまちがいねーやとなったわけですよ」
腕を組んで口をωしてむっふー!と顎を上に向けるユウカ。
お隣さんだったのかよ!!
引っ越しそばなどの挨拶は全部母さんに任せてたよ!
しまったな。近所付き合いは大事だと古事記にも書いてあるというのに。
「こりゃあご挨拶に伺いもせずに失礼しやした。」
ぺこりと頭を下げると
「どうもどうも。おかまいなく」
とユウカも頭を下げる。
敵意もないとわかれば、くるりと向きを変え、学校へ向けて歩き出すと、ユウカは俺の隣に並んで一緒に登校することになる。
「それで、俺にタックルしてきた訳は?」
「こんな時期に転校してくる人間は、ほぼ間違いなく超能力者かその縁者だからね。ちょっくら試した!」
そう言って、ユウカは自身の左手につけられた腕時計、エデンウォッチを見せつけるように掲げた
「ああ、それで俺が超能力者だとわかったのか…」
「千景もそうやって超能力者を見分ければいいよ。能力者は基本的にウォッチは外さないからね。」
「ありがとう。そうさせてもらうよ。」
いきなりの千景呼び…!
と思ったが、前の学校の友達も俺のことをいつもチカちゃんと呼んでいたことを思い出した
小中学と一緒だった元学友たちはみんな幼馴染といって差し支えなく、背のちっちゃい俺のことをチカちゃんと呼んでいたのだ。なんだったら俺が海上都市に来るきっかけになったハナちゃんも、俺のことはチカちゃんと呼んでたくらいだ。
男の子からも女の子からも。だからーー
「チカちゃんと呼んでくれ。その方が呼ばれ慣れてる」
「へえ、わかった。チカちゃん。これで学校でぼっちにならずに済むね!」
「うん。俺もいきなりぼっちにならなくて安心したよ」
学校で自己紹介するよりも先に、友達ができた。
やったー!
「ところでさ、助けてあげるって言ってたけど、どういうこと?」
「ああ、あれね。うちのクラス、ちょっとやんちゃな子がいるんだ。曽我くんっていうんだけど。ランク7の氷使いでね。彼がうちの学校で一番ランクが高いから、ちょっと天狗になってるんだよね………」
「うげえ………やだなぁ。いきなり氷ぶつけられたらどうしよう。」
やだー…。そんなの関わりたくなんですけどー!
ランクが俺と同格って絶対目ぇつけられるじゃん!!
「ね。ヤだよねー。だから、私が助けてあげる!」
なんて同意しているユウカだけどさ
「でも一番最初に超能力で絡んできたのはユウカの方なんですがそこんとこ、どうなん?」
「………いっけなーい! 遅刻遅刻ー!」
身体強化で走り出す。あっという間に遠くへ行ってしまった。
数瞬の沈黙。
「待てごらぁー!! まだ殺人タックル未遂の謝罪聞いてないぞ!!」
ペタペタペター! と走るが、身体能力に差がありすぎる! 追いつけない!!!
ちくしょー!
あとがきちゃん
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