第5話 測定結果だけど質問ある?
能力測定が一通り終わり、家に返された。
新しい家にも慣れつつある今日この頃。
「おかえりお兄ちゃん」
家に着くと、妹の花梨が出迎えてくれた
「あたしは学校で新しい友達増えたよ」
と教えてくれる。
花梨は現在小学6年生
小学校5年間一緒に過ごした友達と、いきなり離れ離れになったところだというのに、すぐに新しい友達を作ることができるとは。侮れないやつ
「そうかぁ。兄ちゃんはまだ検査してるから入学してないんだよなぁ。」
「超能力使える子もいたよ。お兄ちゃんと同じ念動力ってやつ。あれ、便利そうだよね」
「うん。便利便利。筋トレみたいに鍛えれば、ほら」
「わっ!浮いた!すごいすごい!」
「体を浮かすこともできるぞ。」
念力で自分の身体と花梨の身体を浮遊させる。
浮遊させるのも慣れてしまえば苦にならない。
風船を早く動かす訓練をしていたからか、花梨の身体や自分の身体を素早く動かすことができるくらいだ。
時速は測ったことないからわからないけど。
「その友達はどうやって物を動かしてたんだ?」
「えっとね、手を向けて、むむむーって唸って、そしたらえんぴつがコロコロって動いてた。集中するのが大変そうだったよ」
「なーほーね。わかる。兄ちゃんも最初は苦労したよ。だんだん操る物の重さを重くして、どんどん持ち上げられる物の重さが上がっていくんだ。」
「あ、だから風船で練習してたんだね」
「そゆこと。」
ふっふーん。と胸を張ってから花梨を抱きしめてゆっくりと床に降りる。
俺に似て小柄な妹だ。この年頃は女の子の方が成長が早いとはいうが、いまだにチビの俺よりも小さい花梨を抱き上げるくらいの力はある。
「でも今のお兄ちゃんは人を持ち上げられるくらいだから、本当にすごいんだね!」
「妹に凄いと言われると調子乗っちゃうぞ。」
俺の天狗の鼻が伸びに伸びているのが自覚できるぞ。
「あ、そろそろ晩御飯できるんだった。」
「晩御飯>>俺の超能力!」
しかし花梨の興味はすぐに晩御飯に移るのであった。
⭐︎
ご飯食べた後、母さんがご飯を作ったら皿を洗うのは俺と花梨の仕事だ。
花梨の左足と俺の右足、どちらが互いの足の甲の上に乗せるかふみふみと争いながら皿洗いを終えると、リビングでソファに横向きに寝転びながら花梨が大きめのタブレット端末をいじり始めた
すると、なにやらこの海上都市のニュースサイトを見つけたらしく
「やっぱりといったらおかしいかもしれないけどさ。」
「おん」
「超能力を使った犯罪とかもあるみたいだよ」
と花梨がタブレットを差し出すが、
俺も花梨の隣に寝転んで一緒に覗き込む。
「開発区画にて強盗が発生。開発区画ってこの俺たちがいる区画じゃん。こわ!」
この海上都市は、全部で9つの区画に別れた正方形の人工島だ。
西にある一般公開されている【一般区画】
東京から地続きで長い橋を超えて入ることができる。
ただ、一般区画での超能力の使用は制限を設けられているみたい。あまり外部の人の前で使うなってことだね。
北西にある一般区画から接続した【カジノ・娯楽区画】
ムフフなお店なんかもあるらしい。行ってみたいなぁ
南西にはお店やアミューズメントパークが存在する【商業区画】
ここで買えないものはないという噂だ。
テーマパークであるアクアランドにも遊びに行かなくては。
この三つが観光客に大人気の区画でありながら、この三つこそ東京からの人間が立ち入りできる唯一の区画。
そして、南。商業区画からひとつ東に進むと、海上都市の産業を支える【工業区画】
海上都市の働き手が集まるよ。
無能力者はもちろん超能力者たちも小遣い稼ぎに来ているらしい
海上都市の中央の区画には島の理事や研究機関がある【中央研究区画】
俺の超能力の研究もここで行っているらしい。
そして北に存在するのが、俺たちが今住んでいる場所である【開発区画】
ここは現在開発中の区画で、マンションが多い。もちろん商業区画には劣るものの、近所には大型スーパーなどもあり利便性が高い。
南東には【港区画】
船舶があり、豪華客船から富豪が乗り降りしたり、漁船が出入りしたりとほぼ孤島の海上都市ではなくてはならない区画だ。
ここで採れたての海産物を思い切り食べてしまいたいなぁ。
東に存在するのが【廃棄区画】
ようするにゴミ処理施設が存在する場所だ。
各区画で発生したゴミなどを回収して、分別、リサイクル、あるいは焼却して海上都市をきれいに保つ役割ももっている。
そして最後。
北東に存在しているのが【異界区画】というらしい。
なんでも、この人工島で森や川や天気、火星と同じ環境など閉鎖空間の中で様々な環境を人工的に作る
人工環境の施設らしい。詳しくはよくわからないけどね。
ただ、ここで育てられたという野菜やお肉は恐ろしく美味だ。
「保安局の人が逮捕してくれたのかな?」
「いや、【ココちゃん親衛隊】の隊員が鎮圧…またココちゃん親衛隊か。名前の割に本当にすごいんだな。」
「なにそのココちゃん親衛隊って」
「部活みたいなもんだと俺は認識している。鈴木心っていう一人の超能力者を信奉する怪しげで、海上都市で最も多い人数が集まるクランらしい」
おそらく、こういった問題解決を生業にして、ポイントなどを稼いでいるのかもしれない。
「ふぅん…お兄ちゃんも入ったら?」
「お兄ちゃんは動物のお世話をする組織に属したいです。かーさーん! ペット買いたーい!!」
タブレットをテーブルに放り投げて母さんにペットを飼いたい愛を叫ぶ
「むーりー!」
と、洗濯物を畳んでいる母から返答。
母さんは動物全般が苦手なのである。
「というわけで、動物のお世話が出来るクランに入るか設立します。」
「はぁー、お兄ちゃんの動物好きも重症だねー。」
「まあね。かなわない願いをしてもしょうがないし、ぷいきゅあ見ようぜぷいきゅあ。今月はずっとバタバタして見れてないし」
「えー、花梨さんはぷいきゅあよりも仮装ライダーがいいー!」
と花梨と二人でタブレットの奪い合いを行っていたところ、ピロン!と俺の支給されたスマホが鳴った。
ソファから体を起こしてスマホの画面を確認。
「うん? あ、俺の能力測定の結果が出たみたい。」
「え、見たい!」
花梨も体を起こして俺のスマホにぐっと顔を寄せる
俺もスマホに届いたURLをタップして詳細を表示させると
【生嶋千景様 ランク7 『多才念動力』】
「多才念動力。ああ、なるほど。目的意識を持って多数の能力を使ったからか。おそらく精度はどうあれ、水流操作と|空力操作、土砂操作と念力を使えることを見て、あわせて、念動力との差別化でそういう能力ということになったのだろうな」
プールの水をかなりの量持ち上げてたし、出力もかなりのものだったはず。
俺がどれだけ努力した所で、俺の知らない超能力者が俺よりも強い能力を持っている事は別に納得している。
どうでもいいことだ。それでも、この1年の成長で、それが認められたらこんなにうれしいものはない。
「へぇ~、お兄ちゃん超能力は優秀なんだ。ランク7っていうのは? ちなみにあたしの友達はランク1だって。」
「無能力はランク0とした場合の、能力の強さのランク付け。ランク10がたぶん海上都市でもっとも強い超能力ってことだと思う。この1年、死ぬ気で握力と超能力鍛えてた甲斐があった。まだまだモリモリ成長中だし、今日も念力筋肉がピクピク痙攣して筋肉痛でさ、明日にはもっとサイコキネシスが強くなってるから、ランク10も時間の問題かもな」
もちろん、今日コツをつかんだばかりの水流操作などの応用について成長の余地が多大にある状態だし、この時点でランク7は結構優秀なんじゃないだろうか
「おれが小学六年生のころは最大で2kgくらいは動かせたかな。あんまり鍛えてなかったし。たぶんランク2くらいの出力だと思う」
「おおー! ランク10になったらなんかおごって!」
「いいよ。そんときは好きなもんおごっちゃる!」
「やたー!」
かわいいかわいい妹に抱き着かれて満足の今日この頃。
シスコン? その通りですがなにか。
あとがきちゃん
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次回【初登校だけど質問ある?】