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第3話 海上都市に来たけど質問ある?


「父さん! 母さん! 花梨!」


「千景!」

「お兄ちゃん!」


海上都市(アクアエデン)の入島審査の建物の中に父さんと母さん。そして妹の花梨を見つけた。


俺は車を降りて家族に駆け寄る


「チカ。何が起こってるのかしら。」


不安そうにこちらを見つめる母さん。


「なんといったらいいのやら。かくかくしかじかで俺が超能力持ってたからアクアエデンに入る資格があるらしいから家族みんなで引っ越しすることになった」


と今北産業すると


「ふぅん。ハナちゃんに怪我がなくてよかったわね」


「あれぇ反応薄い!超能力もってたんだよ? 息子が!」


理解力が高いうちのママンは早速納得してた。


「いや、気づいてないわけないでしょ。あんたいつも家の中で膨らませた風船動かしたりふとした時に面倒くさがって遠くの醤油引き寄せたりしてたし。ウチの子サイキッカーなんだなぁって気付くわ。」


「え、お兄ちゃんみんな気づいてないとでも思ってたの?」


「我が息子ながら鈍いなぁ」


妹の花梨と父までも呆れたような声を漏らす


そ、そんな…


「ふうん。千景くん。意外とPONなのね」

「PONいうな。自覚はあるよ…」


呆れ顔の白鳥さん。項垂れる俺の頭にポンと手をのせた後、俺の家族に向き直り


「皆様初めまして。私は白鳥と申します。この度は急な要請に応じていただき、誠にありがとうございます。」


深々と礼をして、頭を上げる。


「皆様の生活の保障は我々が致します。」

「ごめんねみんな。俺が超能力を見つかってしまったばっかりに」


俺も申し訳なさで心臓が爆発しそうだ。


「本当だよ。急に海上都市支社に転向になって父さんもビックリしているんだからな」

「母さんはパソコンさえあればどこでも仕事ができるから問題ないけど。」

「わたしも、お友達と急にお別れなんて。お兄ちゃん恨むからね!」


 俺が超能力に目覚めてしまっていたばっかりに、家族の生活がいきなりガラリと音を立てて変わってしまう。


「それについては面目次第もございません………。」


俺も深々と頭を下げる


「まあ、起きてしまった事はもう仕方がない。海上都市への入居なんて、普通ならいくら積んでもできるものじゃない。そこだけはお前に感謝しとくよ。」


ポンポンと父さんが俺の頭をなでる。


「では皆様ご一緒に海上都市への入島手続きを致します。ついてきてください」




超能力者である俺だけは別の案内があるらしく、みんなとは別の部屋に通されることに。


「千景くんは、このエデンウォッチを付けてください。」


そう言って、渡されたのが、デジタル時計。


「………これは?」


「エデンウォッチ。対象の心拍や位置情報、施設の利用のデジタル許可証みたいなものよ。」

「ほぉん………」


腕に時計をはめて、パネルをタッチすると、【認証:生嶋千景 ようこそアクアエデンへ】

と表示された。


「それと、君のスマホは回収。あたらしいスマホ端末と、エデンウォッチは同期しているから。どっちを使ってもいいわ。ただ、エデンウォッチだけはお風呂の時も、寝てる時も決して外さないように。超能力者の生体データを得るためには必要だから。」

「ウォッチの充電は?」

「心配しなくても半年は持つわ。その時に新しいエデンウォッチと交換か充電を行います。」

「そんなにもつんだ…すごいな」


 与えられたスマホを起動すると、隅っこにポイント0と書いてある


「このポイントって?」

「うーん。エデンでは積極的に超能力を使ってもらいたいからね。能力を使って小遣い稼ぎをしてもらうことができるし、ポイントをためると、お金の代わりに使えるようになるんだ。」

「ふーん………月間ポイントランキングってのは」

「まあ見ての通り、この海上都市(アクアエデン)でのポイント上位者。ようするに化け物さ」


月間ランキングを開いてみると、1位にいるのは楠太郎。開発区画第二高等学校、所属クラン【ココちゃん親衛隊】と書いてある 能力は【発火能力(パイロキネシス)


「この、クランってのは?」

「クランっていうのは、超能力者の集まりさ。公式非公式集めたら結構な数のクランがある。人と群れるのが好きなら、好きなクランに所属すればいい。ちなみにその【ココちゃん親衛隊】ってのは、この海上都市における、公式登録しているクランの中で最大のクランだ。」

「ふぅん………。ココちゃんってのが1位じゃないんだ。」


と、疑問をぶつけると


「ヤツは自分の順位に拘りがあるみたいでな。累計ランキングの方で常に55位をキープしているよ。その子を守護するように、ランキング順位を調整している厄介者が、56位田中五郎、77位柏木奈々。己の名前と同じ順位にする遊びに興じている」


 ランキング自体に興味はないってことか。その気になればもっと順位を上げることが出来るだろうことはその言葉遣いから感じ取れた。

 というか、そのココちゃんも超能力者なのか。

 


 累計ランキングの55位を確認してみると


 55位鈴木心(すずきここ) 【ココちゃん親衛隊】首領 と書かれている 異能は【認識阻害(ミーム)

 56位田中五郎【ココちゃん親衛隊】隊長 異能は【筋力増強(ストレングス)

 77位柏木奈々【ココちゃん親衛隊】副隊長 異能は【念動力(テレキネシス)


 ふむ、と首をひねる。

 そんなに強い能力に見えない。

 というか、サイコキネシス以外にもそんな能力があるのかと感心してしまった。

 発火能力っていいな。それに筋力増強。筋肉。なんていい響き。

 このひょろひょろの身体には筋肉が足りないんだよなあ。


「この3人は、ランキング10傑に相当する力を持つとされている。ランキングに興味がないだけで実力自体は本物だ。それに、鈴木心を信奉するものが集まって毎度楽しそうにパーティを開いているようだし、困った時に頼れるクランだと思うぞ。」

「そ、そうですか………」


未知数の実力ってことか。いろんな人がいるんだな。

それに、テレキネシスってことは、俺と同じ系統の能力だろうし、ちょっと話してみたいかも。


「手っ取り早くポイントを稼ぐには?」

「喧嘩だな。」


即答だった。


「ポイントかけて喧嘩して、勝った方が一気にポイントを頂く。」

「物騒ですね。」

「軍事利用についても考えているみたいだからな。ポイントの奪い合いは中央区画でも推奨しているくらいだ。ま、ここの施設ではどれだけやばいけがをしたところで、死なない限りすぐに回復してもらえる。腕のいい医師はいっぱいいるんだ。好きなだけ喧嘩したまえよ。」


うーん。困った。俺のサイコキネシス、そしてその応用である不可視の腕(インビジブルハンド)ならなれたものだけど、素の身体能力がゴミカスの俺には喧嘩は向かない。

まあ、どこか適当なタイミングで飼育委員みたいなことが出来るクランにでも入ろう


「気を付けて欲しいのが、君の妹のように超能力を持たない者も多い。喧嘩をするにしても、無関係な者を巻き込まないように注意してくれたまえ。」


「はい。かしこまりました」



こうして、ふわふわした感覚のまますべてを受け入れ、新生活を始めていくことになる。










ご拝読いただきありがとうございます

面白いと感じてくださったらブクマと☆☆☆☆☆→★★★★★にしておいてください。


次回【能力測定だけど質問ある?】

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