第15話 ………人工超能力者だけど質問ある?
「ランク、10?」
「怪力乱神?」
ランク10なんて人間、初めて見た。
かなりの出力を誇るサイコキネシスを持つわたしが、ランク7だというのに
目の前の少女は、それをあっさりと超えてきたのだ。
それも、13歳と言っていたから、わたしと同い年だ。
「………ん。わたしは、あなたと違って天然の超能力者じゃないの。」
「え?」
「………ロストチャイルド。戸籍のない捨て子のわたしが施設から引き取られてこの海上都市にきて、人体実験。薬品と、ストレスと、精神的苦痛とかその他いろいろを試して試して、試して試して試して、そして、わたしの怪力乱神が生まれたの。」
思ってもいなかった。
でも、思い返してみれば、超能力の研究機関でもある海上都市が、無能力者を超能力者にする実験を行わないわけがない。
「………ま、今となっては便利な能力だけど。」
そう表情を変えずに言っているが、わたしには想像もつかないおぞましい何かがそこにはあったのだろうと、それだけはわかる。
「………、もしかして、ヒメちゃんも?」
と、花梨が震える声で聞いてくる。
そうだ。ヒメのことも聞かなければ。
「………。そうね。似たようなものだわ。異界区画から、脱走してるのよ、わたしたち。だからほら、超能力者が持ってるウォッチをもってない。位置情報見られるからね。まだ異界区画は閉鎖しているらしいし、ヒメがまだそっちに居ると思ってるんじゃないかしら。」
なんてさらっと言っているけど、どう見ても普通じゃない。
わたしたちがぬくぬく女装してパークで遊ぼうとしていた裏でそんなことが起きていたなんて
「………あとは、そうね。モノレールで逃げ出したヒメをわたしたちと一緒に助けたのが、チカゲよ。ざっくりしたかんたんなあらすじだけどね。」
覚えていないけど、そういうことらしい。
「あれ、でも、どうして君はここでご飯食べてるの? 海上都市から逃げたりしないの?」
そんな非道なことがあったのなら、この海上都市自体が大きな牢獄だ。
超能力者を隔離していること自体はわかるが、そんなことをされてまでここにとどまる意味がよくわからない
「………そういう研究員はごく一部だもの。別にこの海上都市が嫌いなわけじゃない。」
ということらしい。
そういうものなのかな。
「………あとほら、すごいわよ、ここの料理。いくら食べても、コレをピッてしたらタダみたい。」
右腕のバーコードブレスレットを持ち上げる智香。
「お待たせしましたー!!!」
タイミングよく学生バイトであろう店員さんが大量の料理を両手と腕一杯に、さらには念動力を使えるのか彼女の両隣には浮遊するラーメンが1.2.3
本来は番号を呼ばれて受け取り口から料理を受け取らないといけないのに、店員さんが引き攣った笑顔でテーブルの上の空き皿と念力で交換していく
最後に智香の腕にあるバーコードブレスレットをピってすると、ごゆっくりどうぞ。と苦笑いでそそくさと帰っていく。
VIPじゃねえ、完全にモンスター客だ………
その瞬間、ハッとした。
彼女の右腕には入園を知らせるICチップ入りのバーコードブレスレット
「タダ? いやそんなことは………」
と思い出して顔から血の気が引いた
この子にチケットをあげたのはわたしだ。
記憶にないが、そうらしい。
そして、会計は代表者が行うことになっていて………
急いでスマホを取り出し、電子財布の残高を確認すると、すごい勢いで請求金額が加算されていた………
「ファーwww」
あの量の、この金額を、わ、わたしが………
生涯獲得お小遣いとお年玉を足しても足りない………!
「………どうしたの」
「お姉ちゃん、顔真っ青だよ?」
心配して聞いてくる智香と花梨
「あの、ね。智香がたべたる料理って、無料じゃないのよ。」
「………??」
届いた料理を頬張りつつ首を捻る智香。
「智香のチケットの代表者がわたしになってるから、その支払い、全部わたしにつけられてた………!」
「………あら。」
「そ、それは………」
智香は箸を止め、花梨は冷や汗を流す。
そして、一瞬の沈黙の後、智香は届いた料理を一つ、わたしたちのほうにずらし…
「………ど、どうぞ………。」
「いや、その支払いもわたしだから………」
「………どうしよう。わたし、スマホもウォッチも持ってないの。支払いなんてできない………」
しかし食べる手を止めない智香。
「スマホも無いのにどうやってこのアクアパークに入場出来たのさ」
「………それは、貴女のチケットをコンビニで紙のチケットとして一緒に発券してもらったからで………」
歯切れが悪そうにそうゴニョゴニョと呟く。
「ああ、だから私とお姉ちゃん、コンビニの前で目が覚めたんだ!」
「なるほど。記憶にないけど合点がいった」
マジで記憶にないけど、支払いが全部こちらにきている点を見ると間違いなく彼女がいっていることは本当なのだろうとわかる。
「………ええと、ええと、あ。親衛隊からポイント渡されてないかしら。 たしか、ポイントでの支払いはできたわよね」
智香にそう言われて、久しく確認していないポイント残高を確認すると
「ファーwww」
「今度は何!? お姉ちゃん!」
「恐ろしい額のポイントが追加されてる! 記憶にない! 怖い!」
ようやくホッとして食事を再開した智香。
しかし、続くポイントランキングを開き
「日間の獲得ポイントランキングで1位なんですがこれ。」
ああ、これ完全に番長が定着してポイント目当ての学生に喧嘩売られるやつだ………。
譲渡されて獲得ポイントになるんすね、これ。
「………安心したらお腹すいたわ。あなたたちのお友達も戻ってきたようだし、お話し合いはまたの機会にしましょ。あの子、ポイントだけは無限に持ってるし、今朝、モノレールで助けてくれたあなたたちに、ポイントで感謝を形にしたのよ、きっと。………ここの支払いは大丈夫ね。」
「あ、うん。まだ食べるんだ。」
奥から僕らの代わりに海賊バーガーなるものを注文してくれていたギャルたちと合流。
「なに話してたんだ?」
「うん。ちょっと友達と再会してね」
「ふうん? まあいいや。ごはん食べようぜ。お腹すいた。」
ヒメも智香に手を振って自分たちのテーブルへと戻る。
クラスメイトたちと食事をしていると、いつの間にか智香はお店から消えており、
智香の食事代は、ココちゃん親衛隊からのポイントの入金分をほぼほぼ綺麗に使い切っていた。
どれだけ食べたの………。
あとがきちゃん
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次回【ぷいきゅあショーだけど質問ある?】




