一服
荒野の街 ワステ
300年前に人類と魔王軍との戦いで荒野と化した場所に栄える街。草木はほとんど生えぬ乾いた街である。
ロエル「はぁ?運行休止?」
駅員「はい…昨日、列車が魔族に襲撃された事件が発生しまして…安全のために当分は…」
サモ「まぁ当然といえば当然だな…」
ロエル「また足止めくらうのかよめんどくせぇなぁ…」
サモ「運行が再開するまでの間どうする?」
ロエル「今のところ金には困ってないからなぁ…」
ポツ…
ロエル「ん?」
ロエルの鼻に水滴が落ちて来た。そして次の瞬間雨が降り始めた。
サモ「珍しいな、この地域じゃ雨なんて滅多に降らないのに」
リドル「とりあえず雨宿りしようぜ」
ロエル「そうだな」
3人は近くにあったカフェへと入っていった。
マスター「いらっしゃい」
ロエル「ちょっとこの店雨宿りに使わせてもらうぜ」
マスター「あぁ、構わんよ」
3人はカウンター席へとそれぞれ座った。
ロエル「マスター、コーヒー3つ」
マスター「はいよ」
ロエル「そういやリドル、あの声って今も聞こえてんのか?」
リドル「あぁ、言い忘れてたけど、二十魔将が闘技場に降ってくる前に久しぶりに聞いたぜ」
サモ「声?」
リドル「なんか聞こえてくるんだよ、誰かの声が。魔王が世界を滅ぼすとか…」
リドル「幻聴では無さそうなんだよな。この声を聞いてから魔王軍が現れ始めたし、この前も強敵が来るって言った後、二十魔将が現れたし…」
サモ「ふむ…誰かがテレパシーで送って来てるのかもな…」
ロエル「もしかしたら俺達と同じ、魔王を倒そうとしてる奴がリドルに語りかけてるのかもな」
サモ「しかし何故そいつは魔王軍の行動を把握しているのだろうか…」
リドル「確かに…う〜ん…」
マスター「あんた達、もしかして冒険者かい?」
リドル「ん?あぁ…」
マスター「実はわしも昔冒険者だったんだよ」
リドル「へぇ〜、そんな感じには見えねぇな」
マスター「まぁ歳だし、引退してからは全く体を動かさなくなって、筋肉が落ちてしまったからな」
マスター「懐かしいねぇ…色々なところを巡って、モンスターを倒したり、お宝を見つけたりしたもんだよ」
マスター「実はわし、結構実力者でな、ドラゴンともやりあったことがあるんだよ」
マスター「あの青い鱗に厳つい角…思い返すと、よくあんな奴と張り合えたなぁ…」
リドル「すげぇなおっさん…!もっとその話聞かせてくれよ…!」
マスター「おぉ良いぞ、何時間でも話してやる!」
マスター「他にはなぁ、あんなことやこんなことや…」
ー・・・
マスター「まぁこんなもんだ」
リドル「すげぇ〜…!」
ロエル「があぁ…」
サモ「…」
この数時間、リドルは話を熱心に聞いていたが、ロエルとサモはすっかり寝ていた。
リドル「じゃあ俺達はそろそろ行くよ、ほら起きろよロエル、サモ」
リドル「ん?あぁ…って、まだ雨止んでねぇじゃん…」
リドル「でも結構な時間この店にいるぜ、そろそろ出た方がいいんじゃねぇかな…」
マスター「この店は客足が少ない、わしはまだまだ話題の引き出しがあるぞ?」
ロエル「いや、もういいよ。流石に長居しすぎたな」
マスター「むぅ…」
ロエル「なぁマスター、この街で傘売ってるとこって知らねぇか?」
マスター「あるにはあるが、ここからだと10分くらいかかるぞ?」
ロエル「遠いな…」
マスター「だがこんなこともあろうかと…ちょっと待っててくれ」
待つこと数分
マスター「ふっふっふ…ほれ」
マスターは手に3つの傘を持ってきた。
ロエル「おぉ、貸してくれんのか?」
マスター「500ゼニー」
ロエル「え?」
マスター「傘3つで500ゼニーもらう」
ロエル「金とんのかよ…」
マスター「当たり前だ、だが店で買うよりは安いぞ?」
マスター「それにわしの話をしっかり聞いてくれたら、タダでくれてやっても良かったんだがなぁ…」
ロエル「はぁ…?ったくしょうがねぇなぁ…」
ロエルはポーチから500ゼニーと、コーヒー代を取り出してマスターへ渡した。
マスター「毎度あり。確かに年寄りの話は長いかもしれんが、タメになるこもある。聞いておいて損はないぞ?」
ロエル「もうちょい簡潔に話してくれたら聞くかもなぁ…」
マスター「はっはっはっ、全く今の若者は…」
リドル「機会があったらまた冒険譚聞かせてくれ!」
マスター「おう、またな」
マスターに見送られながら、3人は店を去っていった。
ロエル「しっかし長いなぁ、通り雨かと思ったんだけどな」
サモ「数時間前までは本当にそれぐらいの雲だと思ったんだがな、なんだかだんだん雲が大きなっているような…」
ロエル「まぁ見間違いかもな、とりあえず今日はもう遅いし、飯食って寝るか」
3人は飯屋へと向かった。
ー・・・ワステのどこか
???「本格的に雨が降って来たな…さて、そろそろ出るか。モイモンを倒した人間、どれぐらい強ぇかな…」
ー・・・
リドル「見て!頑張って魔力操作したら傘作れた!」
ロエル「さっき作れよ」