本当の話
翌日リドルはいつもの様に討伐依頼をこなしていると、サモザーラと出会った。
リドル「サモザーラ...!」
サモザーラ「昨日俺を呼ぼうとしていたな」
リドル「見てたのか...」
サモザーラ「で、何の用だ?」
リドル「お前、討伐対象にもなってないモンスターを殺しまくってるってのは本当なのか?」
サモザーラ「...そうだ」
リドル「どうして?」
サモザーラ「ただ楽しくてやってるだけさ...」
リドル「嘘ついてんじゃねぇよ。お前がそんな奴には見えねぇ」
サモザーラ「嘘じゃない」
リドル「あの時俺を助けるような奴がそんなクソ野郎なのか?本当のことを言えよ」
サモザーラ「本当だって言ってるだろ。人が目の前で死なれるのは流石にな...ってだけだ」
リドル「そうか...」
そう言うとリドルは近くにいた討伐対象外のモンスターの方へ飛びかかった。するとサモザーラはリドルが繰り出した拳を受け止めた。モンスターは驚いて逃げていった。
リドル「自分は良くて人がやるのはダメなのか?」
サモザーラ「...わかった。ついてこい」
サモザーラは平原の向こうにある森へと向かい、リドルはサモザーラの後を追っていく。
サモザーラ「着いたぞ」
リドル「ここ?」
案内されたのはいたって普通の森の中だった。
リドル「何も無いけど...」
サモザーラ「今からおびき寄せる」
そういうとサモザーラは持っていた袋から生肉を取り出して地面に置いた。
サモザーラ「あそこの茂みに隠れるぞ」
リドル「おう...」
数分後...
サモザーラ「出たな...」
リドル「えっ、何あれ...?めちゃくちゃ可愛い...!」
現れたのは短い足にくりくりした目、純白の体を持った小さな生き物だ。
リドル「もしかしてお前が狩まくってる奴ってあいつ...」
???「ぐわぁっ!」
突如謎の生き物の口が3つに裂け、体の何倍も大きくなった。口には無数の牙が生えており、置いていた肉を一瞬で飲み込んだ。
リドル「えっ...?」
サモザーラ「ふんっ!」
???「ギィっ!?」
リドルが呆然としていると、サモザーラが茂みから飛び出し謎の生き物にパンチをくらわせた。生き物は大きな口を開いたまま倒れ、すぐに灰になって消えた。
サモザーラ「可愛い見た目をしていただろ。だが、その本性はそういう見た目で人や他の動物を騙して食う立派な魔物だ」
サモザーラ「さらに厄介なのが...」
モンスター「ナァ〜」
サモザーラが話しているとさっきの魔物とそっくりなモンスターが茂みの中から現れた。
リドル「うわっ...!?」
サモザーラ「安心しろ、こいつはさっきの奴とは違って害はない。で、厄介なのがあの魔物はこのモンスターと見た目がほぼ同じってことだ。」
サモザーラ「人懐っこくて昔からペットとして飼う人もいてな、俺はそんな奴を虐殺してると思われてるから嫌われてるってわけだ」
リドル「なんでそのことを誰にも言わないんだ?」
サモザーラ「言っても信じてもらえなかったんだ。あの魔物は何か捕食する時以外、このモンスターと見た目も、動きも何ら変わらない」
サモザーラ「捕まえて見せたこともあるが、凶暴な素振りは見せず、あの巨大な口を見せることもなかった」
サモザーラ「まぁ信じてくれるわけがない。皆から見れば人を襲わない、そもそも草食の小さな生き物が人を食ってるとかホラ吹いて挙句殺してる、ただの異常者だ。いつしか信じてもらうのを諦めた」
サモザーラ「でもお前には真実を伝えることが出来た。あの時俺に失望して罵倒しに来たのかと思っていたよ」
リドル「サモザーラ...」
サモザーラ「そういえば名前聞いてなかったな」
リドル「そういえば言ってないな、リドルだ」
サモザーラ「リドル、リメリアは初めてか?」
リドル「え?うん」
サモザーラ「だろうな。リメリアに来たことある奴で俺の名前を知らない奴がいるはずない。闘技大会を見に来たのか?」
リドル「いや、魔王についての情報を探しに来たんだ。一応大会も見るつもり」
サモザーラ「魔王?もしかしてミリスの知り合いか?」
リドル「ミリスの事知ってるの?」
サモザーラ「友人でな、昨日お前の話を聞かされた。魔族に襲われてたんだってな」
サモザーラ「そういうことなら、明日お前に話したいことがある。明日の朝平原に来てくれないか」
リドル「わかった」
サモザーラ「助かる。じゃ、俺は魔物狩りに戻る、明日また会おう」
リドル「おう、またな」
リドルはサモザーラと別れ、残った討伐依頼をこなし宿屋へ戻った。