戦いの街リメリア
リドル「ん...うぅ...」
力の反動で気絶していたリドルは目を覚ました。葉々の隙間から茜色の光が差し込でくる。
リドル「クソ...またかよ...」
ロエル「ようやく目が覚めたか」
声の聞こえた方を見ると、負傷していたはずのロエルが木にもたれかかって座っていた。
リドル「ロエル!無事だったのか...!ってお前怪我はどうしたんだ?」
ロエル「あぁ...それなら...」
???「あ、やっと起きた」
森から女の人が出てきた。白い肌、青く澄んだ瞳に、茶髪でポニーテールの女性だ。歳はリドルと同じかそれ以下といったところだろうか。
リドル「...誰?」
???「私はミリス。ミリス・メインザよ」
ロエル「こいつが回復魔法を使えてな。助けてくれたんだよ。」
リドル「俺はリドル。助けてくれてありがとな」
ミリス「心配したよ〜!薬草集めしてたら大きな音がしたから来てみたらあなたとロエルが倒れてたんだから!」
ミリス「そういえば、リドルは全然怪我してなかったわね。ロエルは大怪我だったのに...」
ロエル「そういう体質なんだ。怪我してもすぐに治っちまう」
ミリス「ふ〜ん...なんだか魔物みたい...」
リドル「魔物ね...俺は勇者に憧れてるんだけどなぁ〜...」
ミリス「なんかごめん...何はともあれ2人が無事で良かったわ」
ミリス「もう日が暮れそうね、今動くのは危ないし今日はここで野宿しましょうか」
日が暮れ、3人は火を囲んで話をしていた。
リドルとロエルの過去や旅の目的について...
ミリス「あなた達の故郷が...ひどい話ね...」
リドル「あぁ、だから俺はあいつらを裏で操ってる魔王をぶっ飛ばす!」
ミリス「でも魔王って勇者によって討たれたはずじゃ...」
リドル「えっ、そうなの?」
ミリス「知らなかったの...?」
ミリス「300年前、この世界を滅ぼそうとしていた魔王シルヘネを勇者ダエラが討伐した歴史があるの。」
リドル「あぁ!あれっておとぎ話じゃなかったんだ...」
ミリス「話自体は知ってるのね...」
ミリス「まさか魔王が復活したっていうの...?真偽は不明だけど、ここ最近の魔物による事件のことを考えると、魔王を名乗っている奴が事件の黒幕ってのは事実っぽいわね...」
ロエル「...なぁリドル、お前今日魔物と戦ってた時のあれ、今出来るか」
リドル「ん?あぁ」
そう言うとリドルは何もない空間から赤黒い剣を生み出した。
ミリス「すごい...!物を生み出す魔法なんて...!でも変ね。なんか禍々しいし...」
リドル「そうだよなぁ...邪悪な雰囲気がなぁ...」
ロエル「まぁ魔法を使えるようになっただけ良かったじゃねぇか。それにしてもいきなり使えるようになったよなぁ。昔一度使えたっきりでてっきり魔法の才能がないもんだと思ってたけど...」
リドル「へへっ、やっぱ俺には才能があったんだよ。でも勇者って感じの魔法が欲しかった...」
ロエル「まぁ魔法ってのは1種類しか使えないわけじゃ...寝るな!」
リドル「ぐぉ〜...」
ミリス「あはは...ふぁ〜あ...私も眠くなってきたからもう寝ようかな」
ロエル「確かにもう夜になって結構経ったか...俺も寝るか。」
ミリス「おやすみ〜...」
ロエル「おう...」
夜が更けてきた頃、3人は眠りについた。
(い...お...おい...)
リドル(これは...まさかあの声...!?)
(おき...お...おい...!)
ロエル「起きろやぁ!」
リドル「ぐはぁっ!?」
朝、リドルはロエルによる強烈な腹パンで目を覚ました。
リドル「優しく起こしてくれたって良いじゃん...」
ロエル「それで起きねぇからこうやって起こしてんだよ!」
ミリス「あはは...」
ミリス「そういえば、あなた達ってどこへ向かってたの?」
ロエル「この先にあるリメリアって街に行くつもりだったんだ。魔王について知ってる人を探すためにな」
ミリス「そうなの?私リメリアに住んでるの!よかったらリメリアまで案内するわ」
ロエル「そいつは助かるな、頼むぜ」
リドル「お腹痛い...」
支度をした後、2人はミリスに案内され森を後にした。
歩く事数時間、3人はリメリアへと到着した。
リドル「ここがリメリアかぁ〜。なんか強そうな奴がたくさんいるな!」
街を見回すと、剣士や魔法使いといった者達がたくさん見られた。
ミリス「そう!ここは戦いの街リメリア!年に一度いろんな街から戦士達が集まってあそこの闘技場で戦うの!」
ミリスが指差す先には猛々しくも気高さを感じる大きな白い闘技場があった。
ロエル「あぁ、パラノテアの張り紙で見たな。その年に一度最強を決める大会ってのが近いうちにあるんだろ?面白そうだし情報収集のついでに見てみるか」
リドル「俺それ出てみたい!」
ミリス「あぁ〜...エントリーは今朝で締め切られたのよねぇ...」
リドル「え〜...」
ロエル「まぁそういうこった。リドル、宿に荷物置いたらギルドで討伐依頼とか受けて金稼いできてくれ、俺は魔王やらの情報収集をしてくる」
リドル「へーい...」
ロエル「じゃあなミリス。街まで案内してくれてありがとな」
ミリス「えぇ。また怪我しないように気をつけるのよ」
ロエル「あぁ、できるだけな」
街についた2人はミリスと別れた。
リドル「おらぁ!」
一方リドルは討伐依頼で街の近くにある平原でモンスター狩りをしていてた。
リドル「うしっ、今日はこんなもんかな。」
リドル「はぁ〜...俺も大会出たかったな〜...」
そう愚痴を呟いていた時だった。
ドーン!
と大きな音が鳴った。リドルが音の方向を瞬時に向くと、身長2m程のムキムキな大男と、その前に男の身長と同じくらいの高さのモンスターが男に殴り倒されていた。
モンスター「あぎゃあ...!」
リドル「うおぉ...すげぇ...!」
大男「おいお前、後ろからこいつが近づいてたぞ。ここは街から近いといっても手強いモンスターがたくさんいる。油断はするな」
リドル「え、あ、ごめん...」
大男「...じゃあな」
リドル「...な、なぁ、おっさん強えな!あんなでけぇモンスターを一撃で倒してさ!」
大男「そいつはただでけぇだけの奴さ...後、俺は28だ。おじさんはやめてくれ」
リドル「あ、ごめん...(ギリギリおっさんだと思うけどなぁ...)」
リドル「で、でも俺はあんたが強いって思ったぜ...!と、闘技場の大会とか出たりするんじゃねぇか...!?」
大男「...あぁ、出るよ」
リドル「へぇ...!応援するよ!」
大男「ありがとな...」
そう言うと男は去っていった。
リドル「...」
リドルは少し不思議そうに男が去っていく姿を見ていた。
男「なぁお前、リメリアは初めてか?サモザーラと話してただろ?」
ギルドへ戻って討伐報酬を受け取っている時、受付の男に話かけられた。
リドル「えっ?」
男「お前が話してたでけぇ男だよ。藍色の髪の男があいつと話してるってちょっと話題になってんだよ。」
リドル「なんで?」
男「あいつはな、関わっちゃいけない奴なんだよ。依頼外のモンスター、それもかなり弱い奴を勝手に殺しまくってるんだ」
リドル「本当か?俺が見た時はそんなことする奴には見えなかったけど...」
男「本当さ!そんなことについての目撃者がたくさんいる。俺も受付やってるとあいつについての話をよく聞くのさ」
リドル「でも、何か理由があるんだろ?そいつの素材で装備を作るとか...」
男「それはねぇな、あいつはいつも手ぶらで帰ってくる。」
男「まぁどんな理由かは知らん。でも、あんなか弱い生き物を討伐依頼も出されてないのに殺すなんて碌な奴じゃねぇ。楽しくてやってんだろ」
リドル「理由も知らないのにそんな言い方はねぇだろ...!」
男「俺はあいつを擁護するのは別に構わねぇ。でも他の奴の前でそういうことは言わない方がいい。お前もやばい奴だと思われて除け者にされるぞ」
リドル「はぁ...?」
男「...自分から話しかけといてなんだが、他の奴にも報酬を渡さないといけねぇから早くどいてくれねぇか」
リドル「...」
リドルは怪訝な表情を浮かべながら報酬金を持ってギルドから出た。
リドル(絶対あいつはあんな理由で生き物殺すほど酷い奴じゃねぇ...!今度会ったら聞いてみるか...)
そう思いながら暗くなっていく街を歩き、宿屋へと向かった。
ロエル「よぉ、やっと帰って来たか」
リドル「なんか良い情報手に入った?」
ロエル「全く。それどころかあいつら「いつの話だよ」とか「馬鹿みたい」とかムカつくよこの街の住民は!」
リドル「まぁ、皆からしてみれば魔王なんて昔の話だからなぁ...」
ロエル「はぁ...よし、憂さ晴らしに飯行くか!」
2人は飯屋へと向かった。
リドル「もぐもぐ...もぐもぐ...」
ロエル「ガツガツガツ...!」
ロエル「...どうしたんだリドル?帰って来てからずっと浮かばねぇ顔して」
飯を食べていると、ロエルに問いかけられた。
リドル「なんでもねぇよ...」
ロエル「そうかぁ。もぐっ...ズズズッ...もぐっ...ゴクゴク...ぷはぁ〜...!好きな人でも...」
リドル「違ぇよ」
ロエル「じゃあなんだよ」
リドル「ロエルには話せないこと」
ロエル「なら聞かねぇ」
リドル「...俺、先に宿屋に帰るから」
ロエル「もぐもぐ...おう」
飯を食い終わったリドルは、ロエルよりひと足先に宿屋へと戻った。
リドル「あっ...!」
宿屋へ向かっている道中、サモザーラがいた。ギルドの男から聞いた通り大きな袋を背負っており、周りの人はサモザーラを避けている感じがする。
リドル「サ...!」
(俺はあいつを擁護するのは別に構わねぇ。でも他の奴の前でそういうことは言わない方がいい。お前もやばい奴だと思われて除け者にされるぞ)
リドル(今は話しかけられないな...)
リドルはサモザーラに声をかけられず、そのまま宿屋へと帰った。