覚醒
リドル達はパラノテアを発った後、森を歩いていた。
ロエル「おっさん達元気にしてたか?」
リドル「母ちゃんは元気だったよ」
ロエル「母ちゃんは?」
リドル「父ちゃんはいきなり旅に出るとか言ったらしくて留守だったんだよ。急にどっか行って朝になっても帰って来ないなんてことは子供の頃からあったけど、旅まできたかぁ...」
ロエル「お前の父親って思ったよりすごい人なんだな...」
2人で何気ない?話をしていると...
魔物「ぐるるる...!」
突如魔物が飛び出した。
ロエル「いきなりおでましか」
リドル「腕がなるなぁ...!」
ロエル「今人探しをしてるとこなんだよ!」
先に仕掛けたのはロエルだった。魔物の横へと素早く回り、剣を振った。
魔物「ぐあぁ!」
しかし魔物はロエルの剣を鋭い爪で防ぎ、押し返した。
ロエル「うおっ!」
吹っ飛ばされたロエルは地面に手をつき体勢を立て直した。そして瞬時に魔物の横へ回り、剣を振った。
魔物「ぐああぁ!」
またしても魔物は攻撃を防いだ。が...
魔物「ぐがぁっ!?」
ロエルの手をついた場所から拳が出現し、魔物の胴体を殴った。
ロエルは修行で魔法を取得していた。
その名も「泥波拳」
自分の手が触れた場所にエネルギーの塊を潜伏させ、任意でエネルギーを拳状に変化させ相手へぶつける技である。威力は能力者本人の力に影響する。
ロエル「へっ、ざまぁみやがれ!」
リドル「やっぱすげぇなぁロエルは...!俺も、行かせてもらうぜ!」
リドルは地面を思いっきり蹴って魔物との距離を詰めた。
リドル「おらっ!」「このっ!」「どりゃ!」
リドルはロエルと違い修行で魔法を取得していない。強いていうならロエルより少し力が強くい程度である。そうこう言ってるうちに魔物が仕掛けてきた。
魔物「ぐらぁ!」
リドル「うおっ!」
魔物が鋭い爪でリドルの顔目掛けて攻撃した。直撃は避けたが、頬をかすった。
ロエル「リドル!」
リドル「大丈夫だ!」
かすった箇所の傷口はすぐに塞がった。
リドルは治癒能力が高かった。修行中、傷を負うことが何度もあったが、すぐに完治していた。だがビアー曰く魔法の類ではなく、本当にただ治癒能力が高いだけらしい。
リドル「よくもやりやがったなぁ...!」
リドルは剣を強く握り締め、魔物へ振りかぶる。
魔物「ぐがぁ...あぎゃ!?」
魔物が攻撃を防ごうとすると真下から泥波拳の一撃が決まり、怯んでしまった。その隙をついてリドルは魔物を両断した。
魔物「ぐ...ぎゃ...」
魔物は灰となり風に飛ばされた。
リドル「余裕!」
ロエル「そういう割には攻撃くらいそうだったけどな。」
リドル「そうだったかなぁ〜...?」
リドル「それにしてもロエルは良いよなぁ。魔法使えて...」
ロエル「ま、俺はすごいからな!リドルも頑張れば使えるようになるだろ」
ロエル「てかお前ガキの頃魔物が襲ってきた時すげぇパンチしてたじゃねぇかよ」
リドル「あぁ、あれあの時以来やろうと思っても全く出来ねぇんだよ...なんかあの時は必死だったからたまたま出来た...」
???「お前らが村の襲撃から生き延びた奴らか〜...」
リドル、ロエル「!?」
突然背後から声が聞こえた。振り向くとそこには身長2m程のぽっちゃりした魔物が立っていた。
ロエル「誰だお前!」
リドル「やんのかデブ!」
魔物「直球!」
魔物「初対面で生意気な...!俺様はリポファ様だ!さっきは俺のペットをよくもやってくれたなぁ...」
リドル「ペット?あぁ、あの変なやつか」
リポファ「変な...俺様はお前らを殺しに来たんだ。様子見で俺様のペットを戦わせたら...」
リポファ「まぁ大して気に入ってた訳ではなかったから問題ないがな。次は俺様が直々に相手をしてやろう...」
リドル「いいぜ。ボッコボコにしてやんよ...!」
リドル「どらぁ!」
リドルは鞘から剣を抜きリポファへと飛びかかった。
リポファ「ふんっ」
パキン!
リドル「なっ...!?」
リポファはリドルの剣を素手で受け止め、へし折ってしまった。
リポファ「俺様のペットを倒したことは褒めてやろう。だが所詮その程度なんだよ!」
リドル「ごはっ...!」
リドルは腹に強烈なパンチを喰らい、吹っ飛んで木に激突した。そのパンチはぶつかった衝撃で木が折れてしまう程の威力だった。
あまりの威力にリドルは気絶した。
ロエル「リドル!てめぇ!」
リポファ「お前もあの世に送ってやるよ!」
リポファはロエルにも強烈なパンチをお見舞いしようとするが...
リポファ「ちっ...あっ?あだっ!」
ロエルはパンチを躱し、あらかじめ潜伏させていたエネルギーをリポファにお見舞いした。
ロエル「隙ありぃ!...は?」
リポファ「てめぇ!」
ロエル「ちっ...!」
怯んだ隙にリポファの腹へと剣を振った。が、全く刃が通らない。リポファが反撃のパンチを仕掛けるも、ロエルは再び躱した。
ロエル(デブなだけあるな...でも顔は少し攻撃が通る...!)
リポファ「よくも...いでっ!」「舐めや...あだっ!」「この野...いだっ!」
ロエルは攻撃を躱しつつ泥波拳で少しづつダメージを与える。
ロエル「おらぁ!」
リポファ「うぎゃあ!」
隙をつかれたリポファは顔を斬られ、傷がついてしまった。傷口からは血が垂れている。
ロエル「全然斬れねぇ...剣じゃダメだな」
リポファ「すばしっこい奴だな...!なら!」
リポファはしゃがみ、拳を握り締め、体を震わせている。まるで力を溜めているような...
ロエル「あいつ何する気だ...?なんかやばそうだし距離を...」
リポファ「くたばれぇ!」
リポファは力を溜め終えたのか地面を抉れるほど強く蹴り、ロエルへと跳んだ。
ロエル「はやっ...がはっ!?」
ロエルをも上回るスピードで跳んだリポファは頭突きを喰らわせた。先程のパンチよりも遥かに高い威力で、ロエルは木を何本も薙ぎ倒しながら吹っ飛んだ。
リポファ「はぁ...はぁ...舐めやがって...!」
リドル「ん...はっ...!やべっ、俺気絶して...ロエル!?」
意識を取り戻リドルの前には頭から血を流して倒れている親友の姿があった。
ロエル「り...ど...」
リポファ「まだ息があるのか...なら今すぐ殺してやる。」
リドル(こんなの子供の頃と全く同じ状況じゃねぇか...!)
リドル(このままだとロエルが殺される!でも今の俺じゃ...頼む、あの時みたいなことができるようになってくれ!)
リポファ「じゃあな」
リポファは拳を振りかぶっている。
リドル(頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む!あいつを!倒させてくれ!)
リポファ「死ね!..........!」
リポファは背後に異様な気配を感じた。
それが何かはわからない。
冷や汗が止まらない。
恐る恐る後ろを見た。
もう1人の青年がいた。
赤黒い剣のようなものを持っている。
気配の正体はこれだと一瞬で確信した。
そして天命を受けたかのように今自分がすべきことを理解した。
あいつを殺す
リドル「これは...」
リポファ「おまえええええ!!!!!」
リドル「...!」
リポファ「がはっ...!?」
リポファは天命を実行しようとしたが、鉄の刃も通さないはずの腹をいとも簡単に斬られてしまった。
リポファ「あ...あぁ...!」
リドル「よくもロエルを!おらああああ!!」
リドルの持っていた剣は斧へと変形し、リポファを両断した。
リポファ「なん...だ...これ...は...」
斧の一撃はリポファを両断するだけでなく、大地にヒビを入れた。
リドル「はぁ...はぁ...ぁ...」
リドルはあの時と同じ様に気絶した。