落とせ!
リドル「飛んでこそドラゴンだな…威圧感がまるで違う…!」
デリーヌ「警戒して!…!ドラゴンの上位種が本気を出したら、私もどうなるか分からないわ…!」
ブル−ドラゴンは上空で翼を羽ばたかせながらリドル達を見下ろす。
ドラゴン「カアァ…!」
ブルードラゴンが今までとは比べ物にならないほどの魔力を溜め、炎の息をリドル達へと向けて放った。
セノ「はっ…!?結界!」
咄嗟にセノが結界を作り、リドル達を覆った。炎の波が押し寄せる、木々はいとも簡単に塵と化し、山がどんどん炎に飲み込まれていく。
セノ「結界が…!?」
次第にセノの結界も蝋のように溶け始める。
セノ「なんて火力…!このままじゃ結界が溶けて炎に飲み込まれてしまいます!」
デリーヌ「嵐翔!」
デリーヌは炎に向けて嵐翔を唱える。しかし微風と言わんばかりに簡単に押し返されてしまう。
デリーヌ「嘘…これじゃ時間稼ぎにもならないじゃない…!」
ロエル「俺の泥波巨拳もすぐに溶かされちまうなこりゃあ…」
セノ「も…もう限界です…!」
リドル「デリーヌ!セノ!俺に案がある!」
リドル「俺が合図したらセノは結界を解除、デリーヌはその嵐翔って奴をもう一回撃ってくれ!」
デリーヌ「撃てって…最大出力でも止められるのは一瞬よ!」
リドル「十分!」
デリーヌ「あなた何する気…?」
リドル「いいから賭けてみろよ、無策よりマシだろ?」
デリーヌ「なんかちょっと不安だけど…分かったわ!」
リドル「セノもいいな!?」
セノ「はい…!」
リドル「3…!2…!1…!今!」
デリーヌ「嵐翔!」
セノが結界を解除し、デリーヌが魔法を唱えたと同時に、リドルはおもいっきり地面を殴った。
デリーヌ「へ…?」
セノ「えっ…?」
地面が陥没し、リドル達は地面の中に埋もれた。
リドル「…とうっ!」
しばらくしてドラゴンの攻撃が止み、リドル達が積もった土砂を突き破り、地面の中から出てきた。
リドル「いや〜うまくいった〜…!」
デリーヌ「ギリギリすぎるわ…」
セノ「地中でも凄まじい熱気が…」
リドル「まぁ助かったし結果オーライつってね…!」
ロエル「うわ、マジかよ…」
辺りを見回すと、山の緑が全て消え去っていた。それもリドル達のいる場所だけでなく、その周囲にあった山も全てはげ山と化していた。
サモ「全て燃やし尽くすとは…なんて凄まじい…!」
リドル「けどこんだけ炎だせば流石のブルードラゴンも少しは疲労が溜まって…」
そう言っている最中に、ブルードラゴンはリドルに向けて火球を放つ。サモが即座に氷纏でリドルを庇った。
サモ「まだまだ余裕がありそうだな…」
リドル「えぇ…」
ドラゴン「クアァ…!」
ドラゴンが急降下し、鋭い爪でリドル達に攻撃を仕掛ける、リドル達は攻撃を躱し、ドラゴンは再び上空へと戻った。
ロエル「上空に行かれちまって攻撃が出来ねぇな…」
セノ「今みたいに急降下してきたところを狙うしかないですね…」
デリーヌ「それなら私に任せて!風舞…!」
デリーヌは風を纏い、宙へと浮いた。
セノ「浮遊する魔法…!本当に色々出来ますね…!」
デリーヌ「これは嵐翔を応用して空を飛べるようにしたの」
デリーヌ「私が魔法で攻撃してドラゴンを地上へ引きつけるわ」
デリーヌ「さぁブルードラゴン、追いかけっこを始めましょうか…!」
デリーヌ「炎王!」
巨大な火球をドラゴンへ向けて放つ、ドラゴンはそれをひらりと躱し、デリーヌを追いかけ始めた。
デリーヌ「っ…!デカブツのくせに俊敏ね…!」
デリーヌ(ちょっと無理してでも飛ばないと追いつかれちゃう…!)
デリーヌはドラゴンの攻撃を受けないよう飛びながら、リドル達の元へと誘導する。
ロエル「ふんっ!」
泥波巨拳をドラゴンの顔へと打ち込む。しかし、先ほどより効果がある様子ではない。攻撃されたドラゴンはロエルの方を向いた。
デリーヌ「嵐翔!」
デリーヌ「どこ見てるの!私はこっちよ!」
ドラゴン「グウゥ…!」
デリーヌはすかさず自分へと視線を向けさせる。ドラゴンは再びデリーヌを追いかけ始めた。
デリーヌ「炎王!」
デリーヌは空を飛ぶブルードラゴンへ火球をぶつける。しかしドラゴンは避けようとも、迎撃しようともせず、そのまま火球へと突っ込んだ。
デリーヌ(やっぱり硬い…!ただでさえ飛んでて攻撃しにくいってのに硬くなるとか卑怯でしょ…!)
ドラゴン「クオアアァァ!」
デリーヌ「なっ…!?」
ドラゴンがデリーヌの前に回り込み、強靭な尻尾で地面へと叩き落とした。
リドル「デリーヌ!」
デリーヌ「かはっ…!」
すぐにリドルとセノがデリーヌの元へと駆け寄る。
リドル「大丈夫か…!?」
セノ「これ…ポーションです…!」
デリーヌ「あり…がと…」
デリーヌ「…ぷはっ…!あと少し当たりどころが悪かったら即死だったわ…」
デリーヌ「それでも一撃が重すぎる…あとちょっとしか飛べそうにないわね…」
デリーヌ「あれを使うしかないか…」
リドル「あれ?」
デリーヌ「えぇ…とっておきの魔法よ」
デリーヌ「これやると魔力はすごい消費するし、数日は寝たきりになるくらい疲れるのよねぇ…」
デリーヌ「けど、四の五の言ってられないか…」
デリーヌ「見てなさいよブルードラゴン…!その巨体撃ち落としてあげるわ…!」
デリーヌ「月落とし…!」
デリーヌがそう唱えると、ドラゴンの真上に現れた黒く巨大な球体が、ドラゴンへと落とされる。
ドラゴン「グアアァァ!」
とてつもない質量を持った球体に、流石のブルードラゴンも耐えきれず、地面へと撃ち落とされた。
リドル「おぉ!すげぇ!」
デリーヌ「上位種でもこれは大ダメージね…!」
ドラゴン「グルル…!」
デリーヌ「しばらくは飛べないってところかしら…!今がチャンスよ…!」
デリーヌ「私は…もう魔力は空だし…体に力が入らない…」
リドル「流石は熟練の魔法使いだな…!後は、俺達に任せてくれ…!」
ドラゴン「クアアアァァァァァァ!!!」
ドラゴンが雄叫びを上げる。それは不利になった焦りではなく、対等な敵を見つけたという高揚の様な咆哮だった。
リドル「はぁっ!」
ロエル「おらぁっ!」
サモ「ふんっ!」
セノ「やぁっ!」
ドラゴン「グオアアァ!」
4人がドラゴンへと猛攻を仕掛ける、それに負けじとドラゴンもその強靭な肉体を振り回していた。
サモ「ぐはっ…!」
セノ「サモザーラさん!」
サモ「かはっ…!」
サモは巨大な尻尾で吹き飛ばされ、重い一撃に口から血を吐き出す。セノがそれを見て、サモへとポーションを投げた。
サモ「攻撃の苛烈さが増している…!まるで底が見えんな…!」
サモ「気をつけろ!強くなっているのはブレスだけじゃない!」
ロエル「敵が強くなったのなら…俺達はその上を行けばいい!」
ロエルはそのスピードでドラゴンの怒涛の攻撃を避けていく。
ロエル「泥波巨拳!」
巨大な泥の拳をドラゴンの顔へ打ち込む!
リドル「おらぁ!!」
すかさずリドルも牙目掛けて攻撃した。
リドル「よし!後ちょっと!」
ロエル「後1発殴れば折れそうだぞ!」
???「それはよしてもらおうか」
突然背後から声が聞こえた。
リドル「お前…今度はなんだよ…」
バケット「まぁ武器を下せ、でなきゃこいつが死ぬぞ」
バケットは休んでいたデリーヌを捕まえ、首元で剣をちらつかせる。
デリーヌ「ごめん…こいつのこと忘れてたわ…」
バケット「俺はなぁ…ぽっと出の分際で手柄を持っていく奴が気に食わないんだよ…!」
バケット「どうやらドラゴンの牙が欲しい見てぇだな…俺に牙を渡すか…こいつを殺されるか選べ…!」
リドル「…いくら俺が嫌いとはいえ、それは流石にないんじゃねぇか…?」
バケット「俺は今まで茶番をやってきたわけじゃねぇんだよ…!」
バケット「さぁ、どうする…?」
リドル「…ロエル」
ロエル「しゃあねぇなぁ…」
2人は武器をしまった。
リドル「牙は持ってけ、だからデリーヌを解放しろ」
セノ「なっ…!?そんな簡単に開け渡していいんですか!?」
リドル「仕方ねぇだろ、仲間を見捨てられねぇよ」
セノ「それはそうですけど…」
バケット「それでいいんだよ…おい」
取り巻き「はい」
バケットの手下がデリーヌを押さえる。
バケット「俺が牙を獲るまでは解放できん、安心しろ、約束は破らん」
バケットは剣を鞘から抜きながら、ドラゴンの元へと歩いていく。
ドラゴン「グルル…!」
バケット「ふん、空気の読める奴だな。俺達の状況を読み取って攻撃してこなかったか…」
リドル「あぁ、そうだ!」
バケットがドラゴンの目の前まで来たところで、リドルはバケットに声をかける。
バケット「ん?」
リドルの方へ顔を向けたバケットに、ドラゴンの尻尾が飛んできた。
バケット「がはっ…!?」
油断して無防備のまま攻撃を受けたバケットはそのままぶっ飛ばされた。
リドル「っしゃー!!!よそ見してんじゃねぇぞ!!!」
取り巻き「バ、バケットさ…!」
ロエル「人質を解放してもらおうか」
取り巻き「ひぃ…!?」
リドル「邪魔が入って気をたたせちまったみたいで申し訳ねぇなぁ!ブルードラゴン!」
リドル「お前の牙もそろそろ折れる…次の1発で〆としようぜ…!」
ドラゴン「クオアアアァァァァ!!!」




