蒼竜
ドラゴン「くおあああぁぁぁぁぁ!!」
ロエル「あれがブルードラゴンか…!」
山頂に着くと、既に他の冒険者達とブルードラゴンが相見えていた。
全長50mはあるであろう巨体、美しい蒼の鱗を纏い、厳しい顔は獅子をも動けなくさせる様だった。
冒険者「ぐあぁっ!」
冒険者「くそっ!なんて強さだ!デタラメすぎる!」
全力で立ち向かう冒険者達を、ブルードラゴンは虫を払う様に蹴散らしていく。
リドル「こりゃあ…強ぇな…!」
デリーヌ「流石ドラゴンの上位種ってところね…どうする?何か作戦とか…?」
リドル「ないだろそんなもん」
デリーヌ「はぁ…?せっかく協力関係にあるのに何もないって…」
リドル「強いて言うなら…自分が得意なやり方で戦うのが1番!それが作戦だな」
ロエル「俺もそっち派だな」
セノ「えぇ…」
サモ「もっとちゃんと作戦を練るべきだろ…」
デリーヌ(あんた達本当に二十魔将を倒したの…?)
リドル「まぁ細かいことは、必要になったら考えればいいってこと!」
リドルは剣を生成し、ブルードラゴンへと走り出し、ロエルも後へ続いてく。
デリーヌ「はぁ…大雑把すぎるのよ…私達だけでも作戦を練らなきゃ…」
デリーヌ「…そういえば自己紹介がまだだったわね。私はデリーヌ、見ての通り魔法使いよ」
サモ「今やるのか…?」
デリーヌ「しょうがないでしょ!忘れてたんだから…!」
サモ「サモザーラだ」
セノ「セノ・リオです!」
デリーヌ「どういう戦い方を得意としているの?」
サモ「俺はリドル達と同じく近接戦が得意だ。それと一応氷魔法が使える」
セノ「僕はこの瓶に閉じ込めた魔法や、結界術を駆使して戦います!」
デリーヌ「なるほどね、じゃあサモザーラは近接メインに、セノは結界術とそれでリドル達を援護して欲しいわ」
デリーヌ「私は魔法で遠方から攻撃するわ」
サモ「分かった…!」
セノ「はい…!」
サモとセノもブルードラゴンの方へと向かった。
リドル「おらっ!」
リドルはブルードラゴンへ斬りかかった。しかし、鱗の表面が切れた程度で、ブルードラゴンはものともしていない。
リドル「硬ってぇ…がっ…!?」
ブルードラゴンが尻尾を振るった。
リドル「かはっ…!」
吹っ飛ばされたリドルは血反吐を吐いた。
ロエル「リドル!(嘘だろ…一撃であのダメージってマジかよ…!?)」
ロエル(けど動きはのろい…!最高スピードで近づけば…!)
ロエルは隼雷を使い、ブルードラゴンとの距離を詰める。しかしブルードラゴンの瞳孔がロエルの方を向き、口に魔力を溜め始めた。
ロエル「いっ…!?」
ブルードラゴンの口から火球が放たれる。火球が爆発し、周辺の木々が吹き飛ぶ。ロエルは間一髪で攻撃を避けていた。
ロエル「こいつ…俺の全速力を目で追いやがった…!」
サモ「はあっ!」
サモは氷纏で自分の腕に氷を纏い、ブルードラゴンの頭を殴る。するとブルードラゴンが少しだけ怯んだ。しかしすぐに体制を立て直し、鋭い爪を振りかざした。
セノ「結界!」
セノがサモの前に結界を生成し、攻撃を防いだ。
セノ「大丈夫ですか!サモさん!」
サモ「すまない!助かった!」
サモ「しかしなんて硬さだ…本気で攻撃でしてあれとはな…」
デリーヌ「炎王!」
デリーヌは後方から魔法で攻撃するも、ブルードラゴンの炎によって全て相殺される。
デリーヌ「完っ全に火力負けしてるわね…」
デリーヌ(それに山を登ってきた時に見たブレスより威力が低い…私達が全力で戦ってるのに空を飛ぶ素振りもない…)
セノ「リドルさん大丈夫ですか…?これ、ポーションです…!」
リドル「ん…ん…ぷは〜…!生き返る〜…!」
デリーヌ「リドル達!私達このドラゴンに舐められてるわ!全っ然本気出してない!あなた達ってなんか強い技とかないの〜!」
リドル「そんなに俺達の攻撃通ってねぇのか!?」
デリーヌ「そうよ!」
ロエル「サモ、その氷の腕飛ばす奴じゃダメなのか?」
サモ「それを使っても大きなダメージは期待できそうにない…」
ロエル「う〜ん…あっ!」
ロエル「いい考えがある!ちょっと時間稼いでくんねぇか!」
デリーヌ「分かったわ!」
ドラゴン「くああああぁぁ!」
デリーヌ達はドラゴンの注意を引きつける。ロエルは手を地面に置き、魔力を溜め始めた。
ロエル(泥波拳は魔力を潜伏させて泥の拳を放つ技だが…)
ロエル(魔力を一箇所に溜め続けたらでっかい拳になって、ドラゴンにダメージが与えられるんじゃねぇか…?)
実に単純な案である。
ドラゴン「カアァ…!」
何か企てていることを察したブルードラゴンが魔力を溜め、ロエルへ向けて火球を放つ。
サモ「やらせはしない…!」
サモが氷を纏った腕で攻撃を防いだ。
ロエル「助かったぜサモ!」
サモ「流石はドラゴンの中でも上位種と言ったところか…」
サモの纏っていた氷が粉々に砕けた。
サモ「新しく纏っても一撃で砕かれてしまうな…まだ時間がかかりそうか?」
ロエル「十分だ!アドリブだから魔力を溜めるのに手こずったがいけるぜ!」
ロエル「いくぞ新技…!」
ドラゴン「カアァ…!」
ブルードラゴンが再び魔力を溜める。
ロエル「泥波巨拳!」
地面から泥波拳より10倍以上も巨大な泥の拳が、ドラゴンの顔へと放たれた。ドラゴンは怯み、火球は空へと放たれた。
ロエル「っしゃあ!」
強力な一撃により、ドラゴンの牙にはヒビが入っていた。
サモ「効いてるぞ…!」
ロエル「こりゃあ後何発か打ち込めば折れそうだな!魔力も思ったよりは消費しねぇ!案外簡単に終わりそうか?」
ドラゴン「グルル…」
デリーヌ「何調子乗ってるの!ブルードラゴンはまだ本気を出してないって言ったでしょ!」
しかし、ドラゴンはロエル達に背を向けた。
デリーヌ「あれ…?」
ロエル「なんだ?逃げる気か?させる訳…」
しかし2人はすぐに気づいた。ドラゴンはロエル達の戦いを周りで見ていた冒険者達に向けてその大きな口を広げた。
デリーヌ「みんな逃げて!」
時すでに遅し、ドラゴンは羽虫達を消し飛ばさんと強大な魔力で練られた火球が放たれそうになっていた。
ドラゴン「カアァ…ガッ…!」
火球が放たれる寸前、ドラゴンの体に一筋の刃が走った。僅かに出来た傷から血が垂れる。
ロエル「ぶっ飛ばされてたたけどもう平気か?」
リドル「あぁ、セノの回復薬も相まってよ」
リドル「さて…今ので最悪な思い出がフラッシュバックしちまったよ…」
リドル「お前はなんにも関係ないけど…」
リドル「見せてるやるよ、俺達の強さを!」
ドラゴン「グルルル…」
ロエル「大口叩くじゃねぇか…!」
リドル「あいつ全然本気出してないんだろ?こんなに大勢がいて、めちゃくちゃ頑張っんのに舐められるってのは、ちょっと癪に障るっていうかな…」
リドル「魔王討伐を目指す身だ、ドラゴンに舐められるわけにはいかないんだよ!」
リドル「まぁ今の俺達じゃ倒せるかわかんないけど…」
ロエル「最初から倒す気なんてなかったろうよ。牙へし折って吠え面かかせる、そんだけだ…!」
ドラゴン「…クオアアァァァァァァ!!!」
土煙が舞い上がるほどの咆哮をあげる。
冒険者「な、なんて気迫…」
冒険者「やっぱり俺達にはブルードラゴンなんて無理だったんだ…」
冒険者「デリーヌさん達のサポートもできる訳ねぇし…ここにいたらいずれ巻き添えくらって死んじまう…」
冒険者「あ、後はデリーヌさん達に任せて…逃げるぞ!」
先程までたくさんいた冒険者達が一目散に逃げていく。その場に残ったのはリドル一行だけであった。
リドル「少しはやる気になったか?」
デリーヌ「こんな人数でブルードラゴンを相手にするなんて…怖いもの知らずもいいとこね…!」
ドラゴン「グアァ!」
鋭い爪がリドルへと襲いいかかる。リドルは攻撃を避け、すかさず巨大な槌でドラゴンの牙を叩く。
ドラゴン「グオアァ!」
ドラゴンは一瞬怯んだが、空中で隙だらけのリドルを噛み砕こうと巨大な口を開けて再び迫る。
ロエル「させるかよ!」
ロエルが泥波巨拳を放ち、攻撃を防いだ。
その後もリドル達は巧みなチームワークでドラゴンへと着実にダメージを与えていった。牙を集中して狙い、防ぎきれない攻撃はサモやセノがカバー、火球はデリーヌの魔法で相殺した。
リドル「こんだけ殴ってんのにまだ折れねぇのか…」
サモ「だがヒビは大きくなっている…!後何発か攻撃すれば…!」
ドラゴン「グルルル…!」
デリーヌ「来るわ…!」
ドラゴンはずっと閉じていた翼をついに開いた。そして一瞬で上空へと舞い上がった。
リドル「ようやく本気を出したか…!」




