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ドラゴンの噂

セノ「それにしてもリドルさん達って凄いですよね、二十魔将を2人も倒せるなんて…」

セノ「二十魔将を倒せるほどの実力を持った人なんて世界にそう多くないのに、その実力者が3人もこの場にいると思うと…何か感動するものがありますね…」


リドル「照れるからやめろよ〜!」

ロエル「調子乗ってんじゃねぇよ馬鹿が…」

ロエル「セノにも魔族を倒せる実力があるんだろ?まだ子供だし、これから二十魔将も…」

セノ「あの…もう25です…」

リドル&ロエル(えっ…!?年上…!?)


ロエル「…強さに歳は関係ないぜ!」

セノ「そ、そうですね…」


ロエル「さて、話を変えるが、ケイオラムに行く前に寄りたいところがある。

ロエル「コミュールドって街なんだけどよ…そこにドラゴンが出現するらしいんだよ」

サモ「ドラゴン…?それがどうかしたのか…?」


ロエル「ドラゴンつっても上位種のブルードラゴンだぜ」

サモ「ブルードラゴンだと…!?」


ロエル「あぁ、実は俺の剣がもういつ折れてもおかしくないぐらいにボロボロなんだ」

ロエル「リメリアに行く前、一度魔族に剣を折られてな、一応頑張ってくっつけたが、やっぱり完全には直せなかった」


ロエル「だがちょうど良いところにブルードラゴンがやって来る!あいつの牙は鉄よりも硬い竜の牙の中でも屈指の硬さと鋭さを誇ってる!あいつの牙で剣を作ればとんでもねぇものが出来上がるって寸法だ!」


サモ「ブルードラゴンと戦おうっていうのか…!?ただでさえ強いドラゴンの上位種ともなると、俺達全員でまとめてかかっても勝てるはずが…」

ロエル「別に倒そうってわけじゃねぇ、ただ剣を作るのに必要な大きさの牙が取れればそれで良い。それに…」


ロエル「良い修行にもなる。あんな良い修行相手そういないぜ?」

リドル「おぉ、確かにそりゃ良いな…!」

サモ「う〜む…つくづく怖いもの知らずだなお前達は…」


サモザーラ「確かに俺達が強くなるには良い相手かもしれない…だが、くれぐれも命を落とすなんて事は絶対にするなよ…?」

ロエル「当たり前だ」

そうこう話しているうちに、列車はコミュールドに到着した。


リドル「ここがコミュールドかぁ〜…!」

コミュールド、人口は他の街と比べると1番少なく、目立った建物や装飾もほとんどない、街というより村の様な場所である。


リドル「のどかだなぁ…」

ロエル「いや、周りをよく見てみろ」

周りを見渡すと、住民と思われる人達の他にも武器を担いだ人達もちらほらいた。


ロエル「あいつら全員ブルードラゴン目的でやって来た奴だろうな」

ロエル「ドラゴンってのは強えし商品価値が高えからな、戦ったっていう力自慢や、鱗一枚でも欲しいって奴がわんさかくるんだ」

ロエル「それも今回は上位種ときた、今はまだ多くないが、ドラゴンが来る日にはとんでもねぇ数の戦士達が集まってくるぜ」

リドル「へぇ〜」


ロエル「ドラゴンが来るのは明後日だ、それまではこの地域の討伐依頼をこなして体を温めとこうぜ」

セノ「僕は研究や道具の開発をしながらでも大丈夫ですか?」

ロエル「あぁ」


ー・・・


リドル「まぁドラゴンまで変に張り切らない方が良いし…こいつ倒すか」

リドルは掲示板の依頼書を剥がし、受注を済ませると、すぐにそのモンスターがいる森林まで向かった。


リドル「モンスターはと…」

リドル「おっ、いた…!」

リドルの前方には全長10m弱で、巨大な角を持ったモンスター、ビッグブルがリドルを睨んでいた。


ビッグブル「ぶるる…!」

リドル「俺のことを獲物じゃなく敵として見てるな…やっぱモンスターってのは勘が鋭いな…!」


そう言いながらリドルはビッグブルの顔にパンチをお見舞いした。


ビッグブル「ぶもおおぉぉ!!」


殴られ激昂したビッグブルは鋭い角をリドルへ向けて突進する。


リドル「よっ、ほっ」


しかしリドルはその木々を薙ぎ倒すほどの猛攻を軽々と避ける。そして隙をついてビッグブルの前脚を掴んだ。


リドル「うぉらぁ!」

ビックブル「ぶもぉっ…!?」


前脚を掴んだリドルは綺麗な背負い投げを決めた。地面に叩きつけられたビッグブルはそのまま動かなくなってしまった。


リドル「う〜ん…意外と早く終わったな…もうちょっと高ランクの奴に挑むか…」


リドルはビッグブルを担ぐと、酒場の方へと戻っていった。


ー・・・


リドル(帰ってる間に日が暮れちまった…続きは明日だな…)


討伐報酬を受け取り、酒場から出ようとしたが、突然謎の男達がリドルの前に立ち塞がる。


???「おい、お前冒険者か?見ねぇ顔だな…」

リドル「誰…?」

???「はっはっは、俺の顔を知らねぇとは…まぁ新入りなら無理はないな…」


バケット「俺はバケット。Bランク冒険者だ、覚えときな」

リドル「へー…」

バケット「リアクション薄くないか…?俺はBランクなんだぞ…!」

リドル「俺そういうの興味ないから…」


バケット「なんだそういう質か…つくづく鼻につく野郎だ…」

リドル「そんなことより俺に何の用だよ」


バケット「どうやらビッグブルを倒したそうじゃないか、奴は新米冒険者では到底倒せないモンスターだ」

バケット「だが、奴は所詮Eランクモンスター…新米が倒せたからといって、あまり調子に乗るなよ…?」


リドル「わかった!じゃあな!」

バケット「いやおい!」


バケット「生意気なガキだ…!少しお灸を添えなきゃならんようだな…!」

取り巻き「ならバケットさん、ここは俺達が…!」

???「ここでの喧嘩はやめてもらえる?」

突然小柄な少女が割って入ってきた。


バケット「おいおい邪魔するなよ、今いいところなんだ」

???「いいわけないでしょ、普通に迷惑。それに新米いじめて…あんたプライドってものはないの?」

バケット「別にいいじゃねぇか、冒険者ってのは格差の激しい業界なんだ…今のうちに慣らしておかねぇと…」


???「あんたねぇ…これ言うの何度目だと思ってるの…?マジで喧嘩しようってのなら私があんたのこと消し飛ばすわよ…!」

バケット「あぁ分かったよ…俺もお前とだけはやりたくない…」

バケット「いいか新入り、この世にはお前より上のやつなんて腐るほどいる…でしゃばるような真似したら死ぬぞ…行くぞお前ら!」


そう言ってバケット達は酒場から出ていった。


???「全く…それはこっちのセリフって感じよね…」

リドル「いやぁ〜助かったぜ…いきなり変なやつに絡まれたからよ…」

???「あいつはあれでもちゃんとBランク冒険者の名に恥じない実力は持ってるんだけどねぇ…何のためか新米狩りとかいうしょうもないことしてるのよ…」


リドル「確かに、俺もあいつからは相当な実力を感じたな…それにしてもお前すげぇなぁ〜!まだ子供なのにあんな大の大人数人に立ち向かえるなんて…!」

デリーヌ「子供じゃないわよ…!私の名前はデリーヌ、これでもあいつと同じBランク冒険者なのよ!」


リドル「俺はリドル!よろしくな」

デリーヌ「リドル、冒険者ってのはあんな感じで、自分より下のランクの奴を見下しているうな輩も沢山いるから気をつけるのよ。じゃあね!」


そう言うとデリーヌも酒場から出ていった。


リドル「あいつに夜道を1人で歩かせて大丈夫かな…」


リドルもまた酒場を出ていき、宿屋へと向かっていった。


リドル「ただいま〜…」

ロエル「おう」


リドルが部屋に戻ると、ロエルがベッドに座って綺麗な何かを眺めていた。


リドル「何それ?」

ロエル「これか?スチールカイマンってモンスターの鱗だ。討伐対象だった奴から一枚だけ取ったんだよ」

ロエル「こいつの鱗は鋭くてな…」


そう言うとロエルは手のひらサイズの石を手に取り、それに鱗を振りかざす、すると石は真っ二つに割れた。


ロエル「良い切れ味だろ、でもブルードラゴンの牙はこんなもんじゃねぇ…石を切れるこの鱗だって、あの牙の前じゃ紙同然だ」

ロエル「こいつも悪くないが、魔王討伐には出来るだけ強い武器が欲しいからな」


リドル「そういえば、その牙をどうやって剣にするんだ?鉄より硬い牙なら、普通の鍛冶屋だと作れないんじゃ…」

ロエル「それはな、この街の先にある巨人族の村ティタイルって街にいる腕利きの鍛治師に作ってもらう。どうやらその人は、世界でも有数の技術を持った鍛治師だと」


リドル「巨人の鍛治師か…すげぇ奴なんだろうなぁ〜」

ロエル「でもまずはブルードラゴンの牙が取れなきゃ話にならねぇ、ブルードラゴンが出現する日は、死ぬ気で頑張らねぇとな」

リドル「おう!」


ー・・・


翌日リドルは再び酒場へとやって来た。


リドル「さて今日は…こいつだな」

リドルはそう言うと依頼書を手に取り、討伐対象へと向かった。


リドル「昨日奴もデカかったけど、こいつもデケぇな…」


今回の討伐対象はキマイラ。ビッグブルよりもワンランク上のDランクモンスターだ。複数の動物やモンスターの体を併せ持つモンスターであり、個体ごとによってその種類が変わる不思議なモンスターである。今回のキマイラは、ビッグブルよりも巨大な体を持つ個体だ。


キマイラ「クルルルル…!」


鳥の頭を持つキマイラがリドルを威嚇している。


リドル「やっぱワンランク上がるとモンスターの雰囲気も全然違うな…!」

キマイラ「クルアアアアァ!」


キマイラが鋭い爪を振り下ろす、その爪をリドルは素手で受け止めた。


キマイラ「カ…!?」

リドル「ふんっ!」


リドルは掴んだ爪を力一杯握り、爪を砕いた。


キマイラ「ピアァァァァ!」


キマイラが怯む。リドルはそこにすかさずパンチをくらわせる、キマイラは何十メートルとさきまで吹っ飛んだ。


キマイラ「クアァ…!」

リドル「立てんのかよ…!?結構力入れて殴ったんだけどな…」

キマイラ「カアアァ…!」


キマイラは口に魔力を貯めると、リドルへ向けて放った。リドルが躱すと、魔力の砲撃はその後ろの木々を薙ぎ倒していった。


リドル「すげぇ…流石はDランクだな…」

リドル「なら俺も…」


リドルは赤黒い剣を作り出した。


リドル「こいつでぶった斬る!」

キマイラ「クルルアアァァ!」


リドルがキマイラに飛びかかった。キマイラは再び魔力を貯めるが、リドルは魔力ごとキマイラを一刀両断した。


リドル「…やっぱり俺この前よりちょっとだけ力が増してる気がするな…」

リドル「戦いの中で成長してるって事なのか…?」


そう呟いていると、突然森から眩い光が発せられる。光が消えたかと思えば、リドルが戦った個体とはまた別のキマイラがリドルへと吹っ飛んできた。


リドル「うおっ…!?」

デリーヌ「ちょっと威力強すぎたかしら…丸焦げになってなきゃ良いけど…」

デリーヌ「あらっ?あなた昨日の…」


デリーヌはそう言いながら真っ二つになったキマイラへと目を向けた。


デリーヌ「それ、あなたがやったの?」

リドル「おう」

デリーヌ(Dランクを無傷で…?本当に新米冒険者なの…?)

デリーヌ(それより、よくよく見ればこの顔どこかで…)

バケット「なんだ…またお前らか…」


森の中からバケットとその取り巻き達が現れた。


バケット「でけぇ音が聞こえたから何かと思えば…」

デリーヌ「何よ、彼だって冒険者よ?討伐依頼くらい受けるわ」

バケット「だったらFランク程度のモンスターをこそこそ狩っとけって話なんだよ」

バケット「なのに今度はDランクか…やはり昨日1発入れといた方が良かったか…」


デリーヌ「逆にまた喧嘩しようって言うの?私が昨日注意したのに…あんた鳥頭か何か?」

バケット「それはそこの新米に言ってほしいね。こんなアホは久しぶりだ、お前が止めようと、俺はもう我慢ならん…」


デリーヌ「それは私にも喧嘩を売ってるって言うことになるけど…?」

バケット「当たり前だ、久しぶりの大喧嘩といこうじゃねぇか…!」

取り巻き「や、やべぇ…!逃げるぞー!」

リドル「ストップストーップ!」


互いが睨み合っているところにリドルが割って入ってきた。


リドル「バケットだったか…はっきり言う、俺はお前と喧嘩をするつもりはねぇ!」

バケット「あぁ?てめぇが立場を弁えねぇ馬鹿だからこうなってるって分らねぇのか…!」

リドル「知らねぇよ、いきなり喧嘩ふっかけてくるお前の方が馬鹿だよ」

バケット「こいつ…!」


バケットは背中の鞘から剣を抜いた。


デリーヌ「この馬鹿…!そこまで本気に…へっ…?」


デリーヌは杖を掲げ呪文を唱えようとするが、リドルに身につけているローブを引っ張られた。


リドル「逃げるぞ!」

バケット「喰らえぇ!!」


バケットが剣を振り下ろすと、木々が小枝の様に切断された。しかし、すでにリドル達の姿はどこにもなかった。


バケット「あの野郎…」

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