追い詰めた
ロエル「リドル！そこにあのうなぎ野郎がいんのか！？」
リドル「あぁ！俺がどこに走ってるか教えるから追ってくれ！」
ロエル「任せとけ！」
リドル「右！左！そこだ！」
ロエル「おらぁ！」
ウツボ「ひいぃ…！？」
ロエル「ちっ…！避けられたか…！」
ロエル「おいうなぎ野郎！逃げてばっかいねぇで真面目に戦ってみたらどうなんだ！？」
ウツボ「逃げるなだの…真面目に戦えだの…うるせぇんだよ！これが…俺のやり方なんだよ！」
ー・・・
魔族「なぁウツボ、今回もしっかり囮役を頼むぜ…」
ウツボ「え、えぇ…分かってますとも…」
ー・・・
人間「待て魔族！」
ウツボ「ひいぃ…！」
魔族「こっちだぜ馬鹿が！」
人間「なっ…！？奇襲…ぐはっ…！」
ウツボ「はぁ…はぁ…！」
魔族「相変わらず足は速えよなぁ…けどもうちょっと敵の体力を削るなりできねぇのか？」
魔族「お前なんて魔王軍復活計画になんの貢献もしてない…むしろ足手纏いなレベルだな。そんなお前をこき使ってやってるんだから感謝しろよな役立たず…」
ー・・・
ウツボ「魔王様、要件とは…」
ウツボ「も、申し訳ありません…！私も他の魔族に並べる様日々研鑽しているのですが…！」
ウツボ「こ、この魔導書は…？」
ウツボ「次の任務に成功すれば…二十魔将に…！？」
ー・・・
ウツボ「すげぇ…全員死んでやがる…！この村には魔族狩りをしてる奴だっていたはずなのに…！」
ウツボ「全員…訳もわからずあの世送り…」
ウツボ「はっ…ははっ…！あっはっはっはっはっは！最高だぜこの魔法！これで….今まで俺を馬鹿にしてきたクソどもより上の立場なったんだ…！もうあのクソどもに頭を下げる必要もねぇんだ！あひゃっひゃっひゃっひゃ！」
ウツボ「…あ？」
ウツボが足元を見ると、自身をこき使っていた魔族が横たわっていた。
ウツボ「あぁ…そういえば魔族狩りを倒してから人間共を殲滅するって計画だったか…」
ウツボ「そんな面倒な事しなくても大砲雨で一掃だ…味方の攻撃で死にやがって、役立たずはお前だったな…！」
そう言って魔族の顔を踏み潰した。
ー・・・
ウツボ「はぁ…！はぁ…！」
ウツボ(クソっ…！部下も全員やられちまった…！まじで何なんだこいつら！ここまで強えとは思わねぇだろ！本当に人間か…！？)
ウツボ(大砲雨さえ使えればこんな奴ら簡単に…！)
ウツボ「あがっ…！」
ウツボはこけた、不意にバランスを崩した事で擬態を解いてしまい、ウツボの姿が露わになる。
ロエル「もうお終いか…？」
ウツボ「く、来るんじゃねぇ…！」
ロエル「二十魔将だというからどんな奴かと思えばこんな腑抜けか…」
ロエル「人間側としてはお前みたいな奴が二十魔将ならありがたいけどな」
ロエルは剣を振り被った。
ウツボ「た、助けてくれ…死にたくねぇ…！死にたくねぇ！」
ロエルが剣を振り下ろした瞬間、降り注ぐ雨の中でも一際大きい雨粒がロエルに命中した。
ロエル「がっ…！？」
リドル「ロエル！？」
ウツボ「へ…？」
実は剣が振り下ろされるまで、ウツボは「雨粒が吊り目のガキを貫いてくれないか」と願っていたのだ。
ウツボ「ま、まさか…」
ウツボは驚いたが、すぐにそれが原因だと気づくと、今度はリドルを貫くよう雲に向かって念じた。するとまた一際大きい雨粒がリドルの真上から降って来た。
リドル「うおっ…！？」
リドルは雨粒の存在に気づき、剣で弾いた。
ウツボ「なんだよ…こんな使い方も出来んのかよ…今まで逃げてたのが馬鹿みてぇじゃねぇか…！」
ウツボ「やっぱり俺は強え…いや、最強だ！」
ウツボ「ぶっ殺してやる人間共！散々俺コケにした…報い…！」
ウツボは我を忘れていた、それ故目の前まで迫っていたロエルに気付かず、胸を切り裂かれた。
ウツボ「あがっ…！？」
ロエル「まさか目の前にいた俺も見えなくなってるとはな…お前本当に二十魔将か…？」
ウツボ「い、痛ぇ…！ああぁ…！」
ウツボ「ああぁ…！」
ウツボはおぼつかない足取りで逃げ出した。
ロエル「とうとう言葉まで失っちまったか…？」
ウツボ「はぁ…はぁ…！あっ…！？」
無我夢中で走り、ふと我に帰った。前方ではリドルが、カフェを壊した時よりもさらに巨大なハンマーを構えていた。
ウツボ「ひぃ…！？」
セノ「逃しませんよ！」
ウツボ「がっ…！」
ウツボは反対方向へ逃げようとしたが、セノが瓶からビームを発射し、リドルの方へと吹き飛ばされた。
ウツボ「俺は…選ばれた者なんだぞぉ！！」
リドル「ぶっっ飛べえぇぇぇぇぇぇ！！！」
リドルは巨大なハンマーでウツボを撃ち返した。
ウツボ「俺は…！俺は…！」
ウツボは空中で灰となった。ウツボが消えると、雲が晴れ、ワステ全体に光が降り注いだ。
セノ「わぁ…！」
ロエル「何日も雨が降った後だと、陽の光も綺麗に見えるもんだな…いっ…！？頭が…！」
セノ「だ、大丈夫ですか…！？」
リドル「て…手が痺れる…！」
セノ「こっ、こっちも…！？」
サモ「皆…二十魔将を倒したんだな…！」
セノ「あなたが1番大丈夫ですか！？」
リドル「サモ…！？それ大丈夫なのか…！？」
サモ「まぁ血だらけだが…命に別条はないだろう」
サモ「それよりもやったな！再び二十魔将を討ったぞ！」
ロエル「まぁ二十魔将って言う割には、少し小物だったなぁ…」
リドル「あいつの部下の方が苦戦したぜ…」
ロエル「言えてる…」
サモ「一理あるな」
3人「あっはっはっ！」
サモ「ごふっ…！」
2人「サモー！？」
セノ(…す、すごい…！二十魔将をこんな少人数で倒せるなんて…！この人達なら…！)
セノ「あ、あの…」
リドル「大丈夫かサモー！」
セノ「僕のポーションを使ってください！応急処置にはなるかと！(まぁ今はそれが最優先ですよね…！)」
ー・・・
サモ「助かった…」
リドル「ふぅ…ありがとなセノ！」
セノ「ど、どういたしまして…(よし、今度こそ…！)」
セノ「あの…！」
リドル「ん？」
セノ「ぼ、僕を…！魔王討伐の仲間にしてくれませんか…！？」
リドル「うん、いいぜ」
セノ「軽…！？」
リドル「いや…さっきからめちゃくちゃ仲間になりたそうな目してたから…」
セノ(バレてた…！？)
リドル「それに、お前の作ったポーションとかめちゃくちゃ効果あるし、結界魔法とか色んな魔法使えるところ、俺はすげぇなって思うんだ」
リドル「そんな奴が俺達の旅について来てくれるなら、こっちからお願いしたいくらいだぜ…！」
リドル「じゃ、これからよろしくな！セノ！」
セノ「…！ありがとうございます！」
ー・・・
世界のどこかにある山岳地帯に、2人の男達がいた。
？？？「へぇ、また二十魔将がやられたのか。思ったよりペースが早いな」
？？？？「流石は勇者を名乗る者だな…」
？？？？「しかしウツボは呆気なかったな、もう少し粘ると思ったが…」
？？？「まぁ想定内っちゃ想定内だ。あいつは前に19がやられたせいで、急遽穴埋めとして二十魔将にしたからな」
？？？？「なるほどな…だが、あれ程良い魔法を貰ったのなら、もう少し上手く活用して欲しかった…」
？？？「所詮穴埋め…といったところかな…！」
？？？は鞘から剣を抜くと、目の前にあった山を両断した。
？？？？「はっはっはっ、流石魔王。相変わらず良い斬りっぷりだ」
？？？「お前だって、あれくらい造作もないだろう？」
？？？？「いやいや、君ほど綺麗に着ることは出来ないさ。私の剣は少々荒いからな」
？？？「でもお前にはお前の良さがあるさ」
？？？「いずれ俺達は勇者達と対峙にすることになる、その時はお前の力をまた見れることを楽しみにしているぞ…」
？？？？「ははっ、これは私も前より良いものを見せられる様、精進しないとな」
そう話しながら2人は山岳地帯を歩んでいった。
ー・・・
ラゼール「そうか…！二十魔将を…！」
ラゼール「本当によくやってくれた…！ありがとう…！」
兵士「流石だぜお前らー！」
兵士「まさかあの二十魔将を倒しちまうとはなー！」
ラゼール「もし君達の力が無ければ、ワステは亡きものになっていたかもしれない…感謝しても仕切れないな…！」
ラゼール「ところで話は変わるのだが…セノ、リドル君達と一緒に魔王討伐の旅に出るそうだな…」
セノ「はい…！リドルさん達の実力をこの目で見て、僕も同行させて欲しいと思ったんです…！」
セノ「僕自身も、魔王軍には因縁があるので…」
ラゼール「そうか…」
ラゼール「リドル君達」
ラゼール「セノと私は血が繋がっていない。道端で亡くなった実の両親の中で倒れていた、まだ幼かったセノを私が拾ったんだ…」
ラゼール「その原因は魔王軍の襲撃だ。彼の故郷を魔王軍に襲われ、故郷の人々、そして両親までも亡くしてしまった…」
リドル「…！」
ラゼール「それ以来セノは、2度とあの惨劇を起こされぬ為に、研究者となり様々な道具を開発してきた…」
ラゼール「セノもまた、打倒魔王を志す者だ、きっと君達の力になれるだろう…！」
リドル「俺達も、自分の故郷をめちゃくちゃにされたのが理由で魔王を倒す旅に出たんだ。建物は全部燃えて、村の人もたくさん死んじまった…俺はそんなことをした魔王が絶対に許せねぇ…！」
リドル「だからよ、絶対に魔王を倒そうぜ…！」
セノ「はい！」
ー・・・2週間後
リドル「列車の運行が再開したみたいだし、俺達はそろそろ行くよ」
ラゼール「ワステを救ってくれたことを感謝するぞ勇者殿、君達が魔王を倒せる様、武運を祈ろう」
リドル「なんかいざ勇者って呼ばれると照れるな…」
サモ「俺達からも、この街が一刻も早く元通りになれる事を願っている」
リドル「おっ、そろそろ列車が来る頃だな。じゃあなおっさん！」
ラゼール「あぁ…」
ラゼール「…セノ」
セノ「はい？」
ラゼール「あまり…無茶はするなよ…」
セノ「わかってます…！父さん！」
こうして2人目の二十魔将を倒したリドル達に新たな仲間が加わり、人と魔族が共存していると云われる村、ケイオラムを目指して再びを歩を進めるのであった。
