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逃げる者

マスター「最近カフェに変な事?あぁ、1週間くらい前に壺を拾ったな。少し禍々しかったが、余りにも綺麗だったもんでな……もしかして、ダメなやつだった…?はっはっはっはっ!」


ー・・・


リドル「よぉ、また会ったな…!」

ウツボ「なんで俺がここにいるってわかった…!?」

リドル「お前の居場所を教えてくれた人がいたんだ。まさかカフェにいるなんてな…」


リドル「お前の手下は3人倒した。あれぐらいの実力者はそう多く従えられないだろうし、次はお前の番だぜ…!」

ウツボ「ぐっ…!」

ウツボ「…なぁ小僧、世の中には千差万別の戦い方があるんだよ…中にはな…」

ウツボ「逃げるって戦術もなぁ…!」

そう言うとウツボは後ろを向いて全力で走り出した。


リドル「…は?」

全員が目を丸くした。本命の二十魔将がどれほどの強敵かと思えば、敵前逃亡をするのだから。


リドル「嘘だろあいつ…!?」

ロエル「待ちやがれこの野郎!」

ロエルはウツボを追いかけた。


ロエル「おい!待てつってんだろ…!」

ロエル(追いつけちゃいるのに差が埋まらねぇ…!隼雷の最高速度で走ってるっつうのに…それと同じっていうのかよあいつは…!)

ウツボ(なんだあのガキ…!?なんで俺について来れんだよ…!?)


セモ「なんて速さ…!僕達もバラけて、いずれかで挟み撃ちにしましょう…!」

リドル「おう!」

サモ「わかった…!」



リドル「しっかしあいつなんで逃げてんだ…?二十魔将だよな…?」

リドルは飛ぶ鳥の様に素早く逃げるウツボを見ながら考えた。


ウツボ「はぁ…!はぁ…!」

ウツボ(なんでだよ…なんでなんだよ…!?)

ウツボ(今まで命の危険に脅かされることなくやって来た…!大砲雨(たいほうあめ)を使ってどこかに隠れていれば、格上の敵だって傷を負う事なく倒せた…!それなのに…!)


ウツボ(なんでいきなり俺の隠れ場所がこうもあっさりバレたんだよ…!?居場所を教えてくれた…!?ふざけんじゃねぇよどこのクソ野郎だ…!?)

ウツボ「はっ…!?」

無我夢中に走り続けていると、氷纏(アイス・フォルン)で氷を腕に纏うサモが目の前に立っていた。


サモ「来い!二十魔将!」

ウツボ「クソがあぁ…!」

ウツボ「来い!ニオおおおぉぉぉぉ!!!」

ウツボが突然叫んだ。すると近くの建物を突き破って何者かが現れた。


ロエル「はっ!?」

サモ「人間…!?いや…魔族だ…!」

現れたのはもちろん魔族だった。しかし、角も翼も尻尾もない、体が異常に大きいとか、小さいということもない。なんら人間の少女と変わりない姿をしていた。


ロエル「人間みたいな見た目の魔族なんているのかよ…!?」

サモ「まぁ魔族というのは種であってその姿に明確な定義はないからな…人間みたいな奴だっているんだろう…」


ニオ「ボス、ピンチなの…?だから鍛えろって言ったのに…」

ウツボ「うるせぇ…!」

ニオ「はぁ…じゃあボス、命令は…?」

ウツボ「こいつらを殺せ…!」

ニオ「わかった…」

命令を受けたニオは装備しているモーニングスターをサモ目掛けて叩きつけた。すると叩きつけたと同時に大きな爆発が起きた。


サモ「ぐっ…!」

ロエル「サモ!」

サモ「大丈夫だ!ロエル達は引き続きウツボを追いかけろ!この魔族は俺が倒す!」

ロエル「本当に大丈夫か…!?その魔族強いぜ…!?」

サモ「あぁ、問題ない…!」

ロエル「じゃあなんかあったらすぐに助太刀するからな!頼んだぞ!」

そう言ってロエルは再びをウツボを追いかけた。


ニオ「すごい自信…」

サモ「お前を倒せなければ魔王なんて到底無理だからな…!」

ニオ「ならその自信…潰してあげる…」


ー・・・


セノ「結界(エリア)!」

セノは四角形の結界を生成しウツボの動きを止めようとするが、するりと避けられてしまう。


セノ「くっ…!小さすぎた…!」

ウツボ(ちっ…!あのつり目のガキ…!さっきからずっと走り続けてんのに全く表情を変えねぇじゃねぇか…!こんなやべぇ人間見たこと無ぇよ…!こうなったら…!)

ウツボ「擬態(ミミクリー)!」

ウツボがそう唱えると、街の中へと溶け込んでいった。


ロエル「消えた…!?」

セノ「いや、魔力探知機には反応があります!恐らく擬態魔法かと…!」

ロエル「ならその煙を追えば良いのか!?」

セノ「そうなのですが…敵の動きが素早くて探知機が追いついけていません…!反応も小さくなっていって…!」

ロエル「なんなんだあいつ…!さっきから逃げてばかりでよ!」

ロエルは目を閉じ、小さな魔力気配を見つけようと感覚を研ぎ澄ました。


ロエル「いた…!おらぁ!」

ウツボ「うおぉ…!?」

気配を察知したロエルはそれに向けて切りかかった。しかし、間一髪のところで避けられてしまう。


ウツボ「くそっ…!もっともっと…!気配を小さくしねぇと…!」

ウツボ「殺されちまう…!」

ロエル「さっきから…逃げ回ってんじゃねぇぞこの野郎!!」

ロエル「くそ…!また消えやがった…!」


ウツボ(逃げ回るなって俺ぁ戦えねぇんだよくくそが!今までこんな逃げなきゃならねぇ事は無かったのに…!)

ウツボ(そもそもなんで俺が殺されなきゃならねぇんだ…!魔王軍は悪…?しょうがねぇだろ!魔王軍に就けば人殺しができる…!人殺しってのは楽しいんだからよ…!)


ロエル「…ダメだ、探知できねぇ…!」

セノ「厄介ですね…すばしっこいし隠れちゃうし…」

ロエル「ほんとに二十魔将かあいつ…?」


ー・・・


サモ「ふんっ!」

ニオ「ぐっ…!この…!」

サモ「ぐあっ…!」

ロエル達が追いかけっこをしている中、サモは熾烈な戦闘を繰り広げていた。


サモ「はぁ…はぁ…強いな…!」

ニオ「あなたも…人間のくせに…強い…」

サモ「攻撃力だけなら二十魔将クラスだ…とてもそこら辺の魔族と同じは思えない…!」

ニオ「でも私はノロマだから…二十魔将にはなれない…」


サモ「しかし、この強さでありながらなぜウツボの部下に…?あんな逃げ回るだけの卑怯者のどこが良いんだ…?」


ニオ「…ボスはね、攻撃力…耐久力が下っ端レベルの魔族よりも低い…けど足はすごく速い…」

ニオ「今使ってるボスの魔法…大砲雨(たいほうあめ)が発動すれば強い…けど使うには時間を要するから…発動までどこかに隠れる…」


ニオ「だからボスのために…私がいなくちゃいけない…素早いボスと、ノロマな私は…相性抜群…」

ニオ「他の皆は仕方なく従ってるけど…私は、ボスを支えてあげたい…」

サモ「…なるほど、お前達そういう仲か!」

ニオ「変な事…考えるな…」


ニオ「後、戦い方には…無限の方法がある…逃げるとか隠れるとか…そういうのも含めて…だから…」

ニオ「何も知らない奴が…ボスを馬鹿にするな…!」

ニオはサモとの間合いを詰め、その一撃をお見舞いした。


サモ「ぐはっ…!」

ネオ「逃げる事は…卑怯な事じゃない…!」

雨の勢いが激しくなってきた。


サモ「…確かに、逃げる隠れるもまた戦術の1つ…そうだな、自分の命が脅かされにくい良い戦術だ」

サモは氷を纏ったパンチをニオにお見舞いした。


ニオ「がっ…!?」

サモ「だがな、俺はその戦い方を嫌う!」

ニオ「所詮人間…私達の考えは…分からないみたい…!」

そう言うとニオは魔力を溜め始めた。


ニオ「エクスプロード…!」

魔力を溜め終えたニオはモーニングスターを叩きつける、すると先ほどよりも大きな爆発が生じた。


サモ「ぬぅ…!」

サモ「凄まじい威力だ…!そう何発も受けれる技ではないな…!」

ニオ「倒れないんだ…私の必殺技を受けても…」

ニオ「なら、もう一回…次は倒す…」

ニオは再び魔力を溜める。


サモ「なっ…!?」

ニオ「エクスプロード…!」

ニオが再びエクスプロードを放つと、先程よりも強力な爆発が生じた。が、土煙が晴れると、血だらけになりながらも、モーニングスターを両手で受け止めるサモの姿があった。


ニオ「嘘…!?」

サモ「はぁ…!はぁ…!」

サモ「逃げるくらいなら受けるまで…!それでこそ…戦士だ!」

サモは全力のパンチをニオの顔面にお見舞いした。


ニオ「かはっ…!」

サモ「勝負…あったな…」

ニオ「…負けちゃった…」

ニオ「強いね…人間のくせに…」

サモ「人間も人間で、日々腕を磨いている…」

ニオ「ふ〜ん…なんかムカつく…

ニオ「ボスを馬鹿にしたことも含めて…人間…本当に…理解できない種族…」

ニオは灰となって消えた。


ー・・・


ウツボ「ニオの…気配が消えた…!?」

ウツボは擬態(ミミクリー)を使って息を潜めていた。


ウツボ(まさか倒されたのか…!?嘘だろ…!?)

ウツボ(あいつは部下の中じゃ1番強いんだぞ…!?もっと粘れよクソが…!)

ウツボ(まぁいい…部下が倒されようがあいつらに俺を見つける事は出来ない…)

ウツボ(大砲雨(たいほうあめ)が発動するまで後24時間を切った…このまま乗り切れば…あ…?)

そう考えている時、ふと前を見ると、擬態しているはずのウツボを斬らんと剣を振りかぶっているリドルの姿が目の前にあった。


ウツボ(うおぉ…!?)

ウツボはリドルの剣をギリギリ回避のところで回避した。


ウツボ(あっぶねぇ…!…だが、所詮は山勘…魔力を完全に消した俺の擬態(ミミクリー)を見破れるはずがねぇ…2度はな…)

そう思っていたが、リドルはウツボの方へと振り返り、再び剣を振った。


ウツボ「なっ…!?」

リドル「俺には見えてんだようなぎ野郎…!」

元々逃げ回るキャラというスタンスで構成を練っていましたが、思ったより小物になってしまいました。

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