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研究者の戦い

セノ「ウツボの手下…一体どこに…」

一方セノもウツボの部下を探していた。


セノ「ただやみくもに探しても見つからないし、あれを使うか…」

そう言うとセノは役所の水晶とはまた別の、ランプの様な装置を取り出した。


セノ「効果範囲は狭いけど…その分より微弱な魔力を感知してくれる上に、魔力の放出先も教えてくれるのところが便利だなぁ…」

セノ「おぉ、早速…!」

セノが呟いていると、ランプから魔力の煙が漏れ出した。煙は伸び続け…やがてある人物を指した。


セノ「魔族め…観念しろ!」

男「…はぁ?」

セノ「あ、あなたが魔族ってことは分かってるんですよ…!」

男「いや、何言ってるか全然わかんないんだけど…」

セノ「騙されませんよ…!これは魔族の魔力にだけ反応する道具なんです…!」


男「お前、ラゼールさんとこの奴か?さっきから兵隊の姿もよく見るし…なんかあった…」

突然、男の腹が裂け、そこからサソリの尾が飛び出して来た。セノは間一髪で尾を避けた。


セノ「っ…!?」

???「あら、幼い顔してやるじゃない」

通行人「きゃー!」

通行人「腹から魔族が…!?」

周りにいた人達がざわつき始めた。


セノ「罪のない人を…!」

???「ふふ、食い物の善悪なんて関係ないのよ。この男は大して美味しくなかったわね…」

クロムナ「私の名前はクロムナ、ウツボ様からあなた達のことは聞いてるわ」

クロムナ「その幼い顔、私のタイプだわ…さっきの男よりも断然美味しそう…」


通行人「ま、魔族がこの街に…!?」

兵士「出たな魔族め!我らワステの兵士達がその首を打ち取ってくれる!」

クロムナ「さっきから外野がうるさいわね…」

セノ「…!」

クロムナ「ほんと人間って邪魔くさい…」

クロムナは前方に手をかざすと、紫色の液体を民衆目掛けて発射した。


クロムナ「…あら?」

突然半透明な壁が現れ、民衆への攻撃を遮った。周りを見渡すと、半透明なドーム状の壁が周りを隔てていた。


セノ「民衆の方々に手は出させません…!」

クロムナ「へぇ、よく出来た結界ね。私の毒で溶けないなんて…」

クロムナ「ならこれはどうかしら…!」

クロムナ蠍の様な尻尾を結界に叩きつけた。しかし結界は無傷であった。


セノ「この結界魔法は僕の魔法人生で特に力を注いでいる魔法です。そう簡単には壊させませんよ…!」

クロムナ「結界魔法に力を注ぐなんて変わった子ね…そんなところもまた魅力的なのかしら…」

クロムナ「けどいいの?私が他の人間に手出しは出来なくなったけど、結界外の人間もあなたに助太刀出来ない…あなた1人で私を倒せるかしら!」

セノ「わっ…!?」

クロムナは尾をセノへと打ちつけるが、セノはギリギリ躱した。


クロムナ「やっぱりさっき私の攻撃はまぐれじゃなかったのね」

セノ「子供みたいだからといってあまり甘く見ない方がいいですよ!」

セノは身につけているローブの中から小瓶を取り出し、蓋を開けると中からビームが発射された。


クロムナ「っ…!?」

腕でビームを塞ぐが、ウツボの部下の中で屈指の硬さを誇るクロムナの腕が焦げていた。


セノ「ぐっ、硬い…!」

クロムナ「へぇ…私の腕を…どうやら可愛がってる場合じゃなさそうね…」

クロムナ「最愛之貴方(コクローチ)

クロムナがそう唱えると、クロムナの足元から翡翠色の物体が広がり始めた。


セノ「あ、足が動かない…!?」

クロムナ「これが私の魔法、それに触れたものは足を動かせなくなっちゃうの。地味だけど強力な魔法よ」

セノ「くっ…!」

クロムナ「瓶は使わせないわよ」

セノが取り出した小瓶を尾で弾き飛ばした。


セノ「あっ…!?」

クロムナ「ふふ、もしかしてあなた結界術以外に魔法が使えないのかしら?だからそうやって誰かの魔法を詰めた瓶に頼ってるんでしょう…?」

クロムナ「もうどうしようもなくなっちゃたわね…」

そう言うとクロムナは尾でセノを嬲り始めた。


セノ「あっ…!ぐっ…!」

クロムナ「あぁ…いいわ…!痛みに悶えるその可愛い顔…!」

クロムナ「今すぐにでも食い殺したい…けどこんな可愛い子すぐに食べちゃ勿体ないわ…」

クロムナ「そうだ、取引をしない?」

セノ「取引…?」


クロムナ「ええ、もし今結界を解いてくれたら今回ばかりは見逃してあげる。結界外の野次馬共にあなたほどではないけど上物が何人かいてね、今回はそれで済ませてあげるわ」

クロムナ「あなたみたいな可愛い子はそう簡単には殺したくないし、あなたにも悪い話じゃないでしょ?」

セノ「…わかりました」

セノは結界魔法を解いた。


クロムナ「意外とあっさり受け入れてくれたわね…やっぱりまだまだ幼…」

セノ「誰かそこに落ちてる瓶を割ってくださーい!!!」

クロムナ「…え?」


兵士「お、おい皆!あの瓶になんでもいいから投げつけるんだ!」

1人の兵士がそう言うと他の兵士達は手に持っていた武器を、民衆達はたまたま持っていた所有物や地面に落ちている石ころなどを拾い瓶目掛けて投げつけた。


クロムナ「まずい…!」

クロムナは尾で向かってくる投擲物を弾き返すがあまりの数に全ては弾けず、ある主婦が投げた、その日たまたま買った料理本が瓶に命中した。瓶は割れ、中から煙が広がると、クロムナはその場にへたり込んだ。


クロムナ「か、体が…動か…!」

セノ「体を麻痺させるガスを発生させる魔法です。今度は僕のターンですね」

セノ「ん…ん…ぷはっ…!」

セノは赤い液体の入った瓶を取り出し、中の液体飲み干した。


セノ「これは身体強化の効果があるポーションです。これを飲め…ば…!ぐぎぎっ…!」

セノが足に目一杯力を入れると、最愛之貴方(コクローチ)から足が剥がれた。


クロムナ「うそ…でしょ…!?」

セノ「ピンチな時は…!こうやって…!パワープレイでどうにかするのが…!1番…!です…!」

クロムナへと少しずつ歩み寄り、目の前まで近づくと、今度は緑色の液体が入った瓶を開け、液体をクロムナに飲ませた。


クロムナ「うっ…」

セノ「これは僕が開発した毒薬です。この瓶1つで竜をも殺せるほどの猛毒…」

セノ「今あなたを倒すためにはこれしかないと思いました。1分程耐え難い苦痛が襲いかかりますが、恨まないでくださいね…」

クロムナ「…ふふ、可愛い顔して残酷な一面もあるのね」



クロムナ「どうやら私の負け見たいね…好みの子だろうとすぐに殺してれば…私の悪いとこね…」

クロムナ「あぁ…その体少しでもいいから食べておけば良かった…うぐっ…!」

クロムナは血反吐を吐いた。次第に体が痙攣し、口から泡を拭き始める。


クロムナ「がっ…!あぁ…!」

やがて体が朽ちていき、灰となって消えた。

それと同時に最愛之貴方(コクローチ)も縮んで消えた。


セノ「ふぅ…今まで戦った魔族の中でも結構手強かったな…」

セノ「でも1人で倒すつもりだったのに結局人の力を借りちゃったな…もっと強くなれるように頑張らなきゃ…!」

兵士「うおお!魔族を倒した!流石セノさん!」

セノ「いえいえ…皆さんがいなければあの魔族は倒せませんでしたよ…」

兵士「いやいや!もしセノさんが結界魔法を使ってなければ俺達は今頃無惨な姿になってましたよ!」


兵士「ところで、怪我は大丈夫ですか?どっか痛い所とかありますか…?」

セノ「この程度なら大丈夫です。じゃあ僕は他に魔族がいないか探してきますね」

兵士「俺達も警備頑張ります!セノさん無理はなさらず!」

セノ「はい…!」


セノ「街の皆さんのためにも、一刻も早く魔族達を倒さなきゃ…!」

最愛之貴方(コクローチ)という名前で粘着系の能力、ゴ◯ブリホ◯ホイですね。

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