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斬撃の使い手

ロエル「うなぎ野郎の部下はどこにいやがるんだ…けどうなぎ野郎によりゃあ、あいつら自分達から近づいてくるみてぇだし、ちょっと待ってみるか…」

皆と分かれ1人になったロエルは、木の下のベンチに座っていた。


兵士「あんちゃん、ちょっと隣良いかい?」

ロエル「あぁ、構わないぜ」

兵士「ありがとな、よっこらしょと…」

ワステの見回りをしていたであろう中年の兵士がロエルの隣へ座ってきた。


ロエル「あんた兵士だろ?勝手に休憩していいのか?」

兵士「大丈夫さ、俺達はワステ屈指の兵隊だ。1人抜けたところで大事には至らん。もし見つかってもあんたを守ってましたって言えばいい」

ロエル「それでも兵士かよ…」

兵士「それよりその格好…もしかして冒険者か?」

ロエル「まぁ、そんなもんだな」

兵士「なんでワステに来たんだ?ここにゃお宝も強力なモンスターもいねぇのに」

ロエル「本当はここに滞在するつもりは無かったんだけどよ、列車が運休になっちまったからな…」

兵士「そいつは災難だったな…実は俺もちょっと災難なことがあったんだ…」

ロエル「何があったんだ?」

兵士「俺の相手がお前だってこと」

兵士は鞘から剣を抜いてロエルの首目掛けて斬りかかった。


ロエル「っ…!」

???「躱すか、やるじゃねぇか」

兵士は人間の姿から化け物へ変貌した。


???「しかし、ウツボ様に人間に化けてるって言われたすぐそばから人間を近づけるとはなぁ…」

ロエル「やっぱり魔族か…けど思ったより変装が上手ぇじゃねぇか…魔力も殺気も何一つ感じなかったぜ…」

???「そいつはどうも。しかし初戦がこんな奴じゃ、あっさり終わっちまいそうだなぁ…ほんと災難だぜ…」


アゾ「自己紹介が遅れたな、俺の名前はアゾ。ウツボ様の側近として使える魔族だ」

ロエル「ロエルだ、覚えるかどうかは好きにしろ…」

アゾ「ふん…まぁ長々と話をする気はもうない、早速始めようぜ…!」

アゾは再びロエルへ斬りかかった。


ロエル「さっきは不意打ちだったが…今度はどうかな…!」

アゾ「な…!?」

ロエルはアゾの攻撃を躱し、胸を斬った。


アゾ「ぐ…!」

ロエル「お前、結構硬いな。伊達に二十魔将の部下じゃねぇってわけか…」

アゾ「ちっ…!ちょっと舐めてたな…まさか俺の鋼鉄の肉体を斬るとは…」

アゾ「仕方ない、本気を出すか…」


アゾ「環虎斬(ダティー・レコード)!」

ロエル「…!」

そう唱えると、アゾの周囲の建物がスパッと切り裂かれた。


アゾ「これが俺の能力、斬撃を発生させる魔法だ…!」

ロエル「それが本気か…」

アゾ「なんだ、ビビったか?」

ロエル「いや、なかなかだと思うぜ。じゃあ、俺も少し本気を出してやるよ」

アゾ「少し?おいおい舐めてんの…」

アゾが喋っている最中、ロエルは高速でアゾの体を何回も斬りつけた。


アゾ「がはっ…!?」

ロエル「あぁ舐めてるさ。この前の二十魔将に比べたら、お前は大したことないからな」

アゾ「なんだとぉ…!ガキが…舐めてるんじゃねぇぞ!」

アゾ「環虎盾(ダディー・シールド)!」

アゾは自身の周囲に斬撃を発生させた。今度は攻撃というより、常に斬撃を発生させることでバリアの役目を果たしている。


アゾ「へへっ、どうよ…!」

ロエル「おぉ、これは普通にすげぇな」

アゾ「これで終わりじゃねぇぞ!」

さらにアゾはロエル目掛けて複数の斬撃を飛ばす。


ロエル「っ…!」

斬撃の一つがロエルの頬を掠った。


ロエル(斬撃のバリアを張りながらこっちへも斬撃を飛ばしてくるか、器用だな…)

ロエル(バリアを常に張られちゃ近づけねぇな…突破口は…う〜ん…)

ロエル「ちょっと逃げる!」


アゾ「はぁ!?おいおい嘘だろ、俺のこと舐めてたんじゃねぇのかよ…!?」

アゾ「ようやく立場がわかったか…逃すわけねぇだろ!」

アゾ「って、逃げ足速すぎんだろあいつ…!待ちやがれこの野郎!」



ロエル「ようやく来たのかよ遅ぇな」

アゾ「なんだ、今度はまた余裕ぶっこきやがってよ。死ぬ決心がついたか?」

アゾ「なら一瞬で殺してやる。今日はなかなか楽しめたからそれに免じてな…!」

アゾ「環虎斬(ダディー・レコード)乱舞(らんぶ)!」

アゾは先程よりさらに多くの斬撃を放った。


ロエル「数は増えても、2度も同じ手は食らわな…」

ロエルは斬撃を躱したと思ったら、躱した斬撃がロエルの元へと返ってきた。不意をつかれたロエルの腹を刃が切り裂いた。


ロエル「が…!?」

アゾ「追尾だって出来るんだぜ…?」

ロエル「なんだよ、ちったぁやるじゃねぇか…!」

ロエルは追尾する斬撃を巧みな剣技で全て弾くと、近くにあった板金をアゾへと投げつけた。


アゾ「今度はヤケクソか?そんなもん環虎盾(ダティー・シールド)の前じゃ紙同然だ!」

しかし板金が環虎盾(ダディー・シールド)へ触れた次の瞬間、アゾの首をロエルの剣が貫通していた。


アゾ「が…!?な…何故…!?」

ロエル「板金で斬撃の動きを止めて、一瞬無防備になった所を突いた」

ロエル「お前のそれはちゃんとしたバリアじゃなくて、ただ斬撃を絶え間なく周囲に発生させてるだけだからもしかしたら…と思ったらあっさり成功しちまった」


ロエル「普通に斬撃飛ばして板金斬りゃ良かったのに、馬鹿だなお前…」

アゾ「この…クソガキが…!」

ロエルが首から剣を抜くと、アゾは膝から崩れ落ち、すぐに灰となった。


ロエル(腹の傷は浅いな…これくらいならなんの問題もなさそうだ…)

ロエル「とりあえず1人目か…リメリアの道中で出会ったカエル野郎ほどじゃねぇが、まぁ悪くはねぇな」

ロエルは次の敵を見つけるべく再び街を歩くのだった。

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