魔道具“伝話”
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5万の敵を無力化した直後、防壁に亀裂が走った。20人以上の魔法士団の攻撃だった。
「撤収!砦に戻れ!」
ネズミを回収し終わった兵を砦に戻し、更に強固な防壁を張りなおす。今度は皇子が出る番だ。
王城襲撃の時と同じだ。ピアーデの魔法士は数人組で大魔法を放つ。彼らは皇子を囲み、氷槍を打ち込んだ。
「また氷槍か。他に無いのか」
素早く背後にまわり、1人また1人と雷魔法で意識を刈り取った。起きると面倒なので影に放り込む。
リコリスも応援に来る。ミナミも砦から土饅頭で援護してくれた。あっという間に敵は半減した。
「お前が黒い悪魔か!」
一際魔力の多い老魔法士が挑んで来た。早さも技の練度も高い。相手にとって不足なしと、皇子は挑戦を受けた。
「さては襲撃犯の生き残りがいたか。皆殺しにしたと思ったが」
軽く挑発すると、老魔法士は強烈な“風刃”を繰り出した。なるほど、あの風魔法士の師か。皇子は空中へ跳んだ。老人は雷魔法も使う。たちまち風と雷の嵐のような戦いになった。
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皇子が一番強そうな魔法士のジジイと戦い始めた。リコリスが数人をボコボコにする。ミナミはすることが無くなった。なので王城に連絡を入れてみた。ミナミ発案のもと、皇子が作り上げた魔道具“伝話”を使う。見た目はスマホっぽい。だが通話とショートメールぐらいの文字が送れるだけの道具だ。
「こーゆーの作りたいって言うだけで作っちゃうヨッシー、すごいわ」
同じものを老師とイザベラに渡してある。とりあえず老師にかける。
「もしもし?老師?今大丈夫?」
暫くして老師が出る。初めてのわりに慣れている。
『ミーナか。そっちこそ大丈夫なのか?モーリーが苦戦しとるように見えるぞ』
「してるわけないじゃん。生け捕りにしたいから手加減してるんだよ。騎士団長さんいる?」
いるらしいので代わってもらう。
「あ、ご無沙汰してます。すみません、こっちの捕虜の身代金の相場って幾らくらいですか?」
『ミーナ嬢?どうなってるんだ?なぜ声が聞こえる?』
普通の反応だ。声を伝える魔道具だと言うと絶句している。驚かせすぎたか。
「それでぇ、捕虜の相場なんですけど。やっぱ騎士と歩兵とか違いますよね」
『歩兵に捕虜交換は無い。戦奴として売るしかないな』
奴隷制があった。ミナミは衝撃を受けた。仕方ないので歩兵は釈放することにする。騎士が1人当たり200万ゴルドが相場らしい。ウルフの毛皮より安い。
「それ、ウチが頂いても良いですよね?ウチらが捕まえたんだし」
『それは…陛下に聞いてくれ。そもそもピアーデが挑んだのは我が国だからな』
(今王様と話したくないんだけどな)
そうも言えず、礼を言って切った。だが金庫番として働かねば。ミナミはイザベラに伝話をかけた。
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皆で戦いの推移を見守っていた後宮の部屋に、ふいに奇妙な音楽が流れた。イザベラは慌てて懐から薄い板を取り出した。ミナミが渡していた魔道具“伝話”だ。
「はい。イザベラです」
『あ、ごめんね。今大丈夫?』
思ったよりずっとはっきり聞こえる。すぐ隣にミナミが居るように感じた。
「大丈夫です。ミーナ様もご無事ですか?モーリー様は?」
『全然大丈夫。ヨッシーも、あれ手加減してるから』
ほっと胸を撫でおろす。するといつの間にか横に王太子がいた。
「イザベラ?!何それ?何でミーナと話してるの?」
綺麗な顔をぐいと近づけ、伝話を見る。イザベラは失礼が無い程度に下がって距離を取った。
「これはミーナ様よりお預かりした魔道具です。距離に関わりなく話ができます」
『殿下いるの?イザベラちゃん、右下の赤いラッパマーク押して。スピーカーになるから』
ミナミの指示の通りにすると、魔道具から大きな声が聞こえた。これで部屋にいる全員に聞こえる。
『殿下、すいません、捕虜のことなんですけどぉ』
王太子は魔道具と、思いもよらない内容に二重で驚かされた。
「捕虜?あのネズミのこと?」
『安心して下さい。元に戻せますから。騎士団長に聞いたら、騎士は200万ゴルドで交換できるって。それ、ウチで頂いて良いですか?』
「それよりモーリーが…」
『あー。生け捕りにするつもりなんで。めっちゃ手加減してます。大丈夫。ほら、ジジイ落ちた』
確かにスクリーンには空中から叩き落される敵魔法士が映っていた。
「生け捕りにしてどうするのさ」
『そりゃ吐かせますよ。諸々』
王太子が何と答えようかと迷っていると、ユリア姫が口を開いた。
「ミーナさん!」
『ユリア姫?ご機嫌よう!どうでした?ネズミ、面白かった?』
「ええ!とっても!みんなで大笑いしたわ!」
ミナミがリコリスにだろう、『姫にウケたわー!大成功!』という声が聞こえた。
「…ありがとう。モーリー様にもお伝えしてください」
『承知しました。もうちょっと待っててくださいね!ピアーデの悪い奴にお仕置きしてくるんで』
明るい声で物騒なことを言う。姫は苦笑した。
「あまり無理なことは…。私はもう大丈夫よ」
『いや。天誅を下します。二度と毛が生えない魔法をかけてきます』
部屋にいた女性が皆笑う。王と王太子は複雑な顔をして頭を触った。




