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外伝~トモと友~13 再び友に

          ♠




 大公が被告人控室に入ると、友久は倒れていた。慌てて抱き上げ脈を測るが異常は無い。ただ眠っていた。


「魔力切れではないでしょうか?まずはこれを外しましょう」


 護が魔力封じの首輪と手枷を外した。とりあえず簡易ベッドに寝かせて様子を見る。そこへ王が気軽にやってきた。護衛騎士たちは渋い顔で四方に立った。


「あー面白かった。何この子。いいなあ。ウチに欲しいなあ」


 満面の笑みを浮かべて眠る少女を眺める。いい年をして若造のような言葉遣いだ。


「異世界人なんだっけ?何で寝てるの?」


「分からん。魔力など、どこで使ったのか…」


 大公は診察をしながら考えた。すると息子が思いついたように声を上げた。


「スキルですよ!先ほどの見事な弁舌です。トモは“交渉”のスキル持ちなのでは?」

 

 なるほど。それなら説明がつく。記録の中でしか見たことがない珍しいスキルだ。どんな交渉でも負けない。あるいは僅差で勝つ。


「すごい!王族になったら無敵な力だよ。羨ましいなぁ」


「気に入ったか。側妃にするか?」


 半ば本気で大公は提案した。王なら友久を守れるかもしれない。


「うーん。ユリウスがぞっこんなんでしょ?可哀そうだよ。それより早くユウキって子に会わせてよ」


 さすがにもう調べ済みか。勇気の大伯父になる王は機嫌よく帰っていった。友久は護が神人族領に連れて帰ると言うので、任せる。とりあえず裁判は勝った。大公は安堵して法廷を後にした。




           ◇




 また悪夢だ。大尉は3年間、毎晩k島にいる。部下を探している。炎と煙、塹壕の瓦礫。倒れた兵士の1人1人を確認するが生存者がいない。大尉は1人で戦場をさ迷っている。


「おたあさま。起きて」


 息子が布団の上から覆いかぶさってくる。目をつぶったまま、大尉は息子を抱きしめた。帰って来た。


「目が覚めましたか?トモ」


 聖女様の声がする。大尉は起き上がった。


「ありがとうございます。勇気がお世話になりました」


 聞けば裁判の後、大尉は丸3日間眠っていたそうだ。1週間以上息子を預けっぱなしだった。感謝しかない。


「ユウキはとても良い子でしたよ。ね?」


「はいっ!」


 美しい聖女様にすっかり骨抜きにされている。他の奥方様も絶世の美女だ。極楽だったようだな。息子よ。それでもやはり母親が落ち着くらしい。久しぶりに会った息子は大尉から離れなかった。


 族長に、本調子になるまで仕事は休んで良いと言われる。大尉はお言葉に甘えることにした。今日は幼稚園を休み、公園で息子とたっぷり遊んだ。夕方には疲れて寝てしまったので、背負って帰ろうとすると、


「トモ」


 ふいに背後から声をかけられた。ユリウス公子が立っていた。驚いた。瞬間移動ができたのか。とりあえず大尉は謝罪した。


「約束を破って、申し訳ありませんでした。公子」 


「いいんだ。裁判、大変だったね。何の力にもなれなくて。ごめん」 

 

 公子は辛そうな顔で言った。


「いいえ。相手の情報をいただけて助かりました」


「母たちの力だし…」


 ますます辛そうになる。


「それに陛下が来てくださったのも助かりました」


「父が呼んだんだよ…」


 背には眠る息子。前には泣きそうな公子。大尉は困ってしまった。日も暮れて来たので、族長の屋敷に案内がてら帰ることにした。


「その子がユウキだね。起きたら紹介してくれる?」


 多分、言わなくても父親だと分かる。閣下や妃殿下を身内と当てたくらいだから。そう教えると、公子は驚いていた。2歳で魔力波が分かるのは凄いらしい。


「蛙の子は蛙ですね。おっと失礼。蛙呼ばわりして」


 大尉が軽口を叩くと、公子は立ち止まった。


「僕をユウキの父親だと認めてくれるの?」


「はい」


 公子の目に涙が浮かぶ。そんなに喜ぶとは思わなかった。大尉はその美しい碧い瞳を見つめた。夕日を浴びてますます輝く金髪も、どこか非現実的に思える。魔王の息子だけあって神のような美貌だ。


(勇気も成長したら、こんな青年になるんだ)


 しっかりと目に焼き付けよう。大尉があまりに長く凝視したせいか、公子は頬を染めて戸惑っていた。


「どうしたの?トモ。そんなに見つめて」


「夢みたいだなと思って」


 大尉にとって彼はこの世界そのものだ。夢の様に美しく、優しい。


「僕こそ夢みたいだよ。また君と会えた。…トモ。もう一度、友達からやり直せないかな」


「良いよ。じゃあ、明日の昼食をおごってくれ」


「そんなので良いの?!」


「給料日前でね。言っておくが族長は十分に払ってくれているぞ。母子寮の知人に送ってるんだ。世話になったからな」


「ああ。良い人だったね。僕も会ったよ」


 3年の月日はあっという間に埋まった。公子と大尉は再び友となった。


 公子はその夜は族長の屋敷に泊まるというので、門の前で別れる。結局息子は起きなかった。


「じゃあ、また明日。トモ」


「ああ。またなユリウス」


 2人は笑顔で約束した。だが大尉に明日は来なかった。




          ◇




 翌朝、朝食に来ないのを不審に思った使用人が、部屋で遺体を発見した。すぐに族長が呼ばれたが手遅れだった。詳しく死因が調べられたが不明だった。

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