(Ⅰ)
――暗闇。
――星。
――天体。
――そして、青と緑の球体――。
――ここは、惑星ジアースと呼ばれていた。
周長約4万km、海水が7割を占め、大気中に酸素が20.9%含まれるこの星は、
24世紀初頭に、医療、食料、エネルギー問題を次々に解決したことにより、世界人口1800億人超えを記録していた。
一方で、土地の開拓のために、大規模な自然淘汰が行われ、――そして枯渇した環境に耐えきれず多くの動植物が絶滅した。
しかし、24世紀も終わるころ、同時多発的に宇宙から隕石が飛来し、大陸の大部分が沈没。
さらに、隕石の破片が灰となり降り注ぎ、世界は白に染まったという。
生き残った人類は巨大地下シェルターに避難したが、灰に含まれていた病原体による疫病が蔓延し、人類衰退に拍車をかける。
それから、幾年の時を経て、地上の灰汚染がおさまった頃、人類は再び地上に帰還する。しかし、そこには、地上に残された多くの動物が、汚染環境に適応し、未知の〝進化生命体〟となって地上で暮らしていた。
――そして、〝進化生命体〟は、まるで過去に淘汰されてきた復讐の念を持っているかのように、地上に戻って来た人類に容赦なくその牙を向けた。
その生命体の名は――、
人類に対して〝怒れる者〟を意味する〝フューリアン〟。
――縮めてFRANと呼称され、人々の畏怖の対象となった。
――すでに地上には人が安心して住める場所はなかった。
しかし、食料や資源不足により、地下での生活が限界に達していた人類は、それでも地上に戻らざるを得ない。
追い詰められた人類は、FRANに対抗するすべを開発する。
――灰汚染すら撥ねのけた生命力をもつFRANから採取した『適応進化遺伝子』を人体に組み込み、FRANに対抗しうる身体能力を獲得したのだ。
さらにそれにより、人が本来持つ潜在能力が開花され、特殊な能力を操ることが可能になった。
――その能力を、人の〝根源たる魂〟――〝プリムフィア〟
――通称プリムスと呼んだ。
――そののち、人類は、FRANに対抗しながら領地を獲得していき、再び地上で日の光を浴びることができた。
だが――、人類が地上に戻ってきてから幾数年経った今でも、かつて地上を掌握するほどに栄えた文明を、取り戻すには至っていない。