第十話 賭け
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※3/24一部表現修正
「……チェロ、さっきまでの余裕はどこに……!」
と、言ってミリスはチェロルカの肩を揺らす。しかし、チェロルカは一向に顔を上げない。
ミリスは青ざめる。そして、思考をめぐらす。
私とレインでなんとかなるのか?……この数。
「ミリス、どうするの……?」
と、レインも不安な表情を浮かべて言った。
レインは平気そうだ。子どもって虫とか平気だもんね……、とか、思ってる場合ではない。
とにかく、戦うのは無理そうだ。ここは引き返すしか……。
「ミリスっ!」
そのレインの声に、はっ、として後ろを振り返ると、――広間中にペリームがうごめいている。何匹もいた。むしろ前方の穴から這い出た数よりも多い。
――完全に囲まれていた。
……そんな馬鹿な。
広間を見渡すと、来た時にはなかった細かい穴がいくつかあいていた。そうか……こいつらが床を破って穴をつくっていたんだ。そして船内を這いずり回っているのか――。
「ミリス……」
この状況にレインも涙目になって寄り添って来た。
前後からじりじりと迫りくる大量のペリーム。そしてそれらがいっせいに飛び掛かろうとぐっと、触手を縮めて構える。
――その時、ミリスは勢いよく息を吸い、空気を肺にためこんだ。
宙に水弾を3つ、4つ、5つ……と、次々と作り出していく。
さらに、もっと――。これでもかと、水弾を前後のペリームたちに向かって急速に生成していく。
水弾は、前後20発分ずつ、――全部で、40発。
――そして、それらを、すべて同時に、――射出する――っ!
〝ドォン――――ッ〟
いっせいに放たれた水弾が、音を重ね巨大な破裂音を起こして広間に響かせる。
弾はミリスを中心に広がるようにはバラバラの方向にとんでいき、不協和音を奏でるようにそれぞれが風を切る。
――これが私なりのプリムス活用法――。
いわばこれは、――〝水弾の散弾〟だ――。
精度もなにもない。どこに向かって飛ぶのか、どこに着弾するか、そんなのしったことではない。
――そして、それはペリームたちも同じである。
跳弾も含め、予測できない弾道に混乱し、食らった食らわない、どちらにもかかわらず、後退せざるを得ない。
……ショットガンが盛大に放たれた後には、広間の壁や床はいたるところに穴が開き、煙がくすぶっている……。
実際致命傷を受けたペリームは、大した数ではないだろう。
しかし、次なる乱射に警戒してペリームたちは動けないでいた。
こういうときは、めちゃくちゃなのが、いい。派手なほど、威圧を与えるだろう。
ただし――。
ミリスは膝をつく。
どっ、と汗がふき出し、呼吸が荒々しくなり、胸が前後に激しく動く。空気を取り込むのに必死で、口を閉じていられない。
……ただし、これは、大雑把で、不器用で、燃費が最悪の技だ。――チェロとは大違い。
これを使ったらもう、後はない。とてもすぐには立て直せないほど疲労してしまう。
だから、賭けろ――! 私とは違うプリムスの爆発力に!
ペリームたちがひるんだ、その隙に。――いましかないっ!
「チェロっ!」
ミリスは叫んで呼びかける。
「……だめだぁ……ミリス、こんなんじゃ力出せない……」
と、ミリスの腕に突っ伏しながらチェロルカは涙声でよわよわしく言う。
だが、それにカツを入れるように、ミリスは叫ぶ。
「――見なくていいっ!」
と言い、さらに続ける。
「前も後ろも、見なくていいっ!」
そして、ミリスは天井を指さす。
「見るのは、――穴だ! 穴の先を見ろ――っ! やつらが穴から出てきたというのなら、チェロぉ――っ! 私たちだって穴を通れるんだ――っ!」
すると、チェロルカはミリスの声に応じるように、静かに答える。
「……ミリス、――わかった」
――その直後、ミリスたちの真上の天井が、メキメキと激しい音がした。
「ここを、脱出する――っ!」
と、チェロルカは涙をこらえ声を上げた。上だけを見て、手を伸ばしていた。いつのまにか投げられたヨーヨーが天井に強く、固く、張り付き、激しく回転している。それによって、天井はメキメキメキときしみ続けている。
そして、次の瞬間、思いっきりヨーヨーを下に引っ張る。
――バキンッと巨大な音とともに、天井が観音開きのように大きくふたつに割れる。その残骸が周囲に落ち、ペリームたちを押しつぶす。床もずたずたに崩れ、ミリスたちの足元が大きくかたむく。
すかさず、チェロルカは、ぽっかり開いた天井に向かってヨーヨーを投げ込み、上の階の床にひっかけた。
三人はしがみつきあい、ヨーヨーに糸を巻き取らせて上昇していく。
崩れゆく広間を見下ろしながら……。




