(Ⅱ)
いつのように基地の中央オペレーションロビーに足を運ぶと、いつもと違う存在に目がいった。
広々としたフロントカウンター隣で、負けじと大きな赤い敷物を広げ、その上で箱や袋から荷物を取り出している一人の子供……が見える。
横目で気にしつつ、オペレーターとの報告作業を終えると、いつの間にかその子供……はこちらを凝視していた。恐ろしいほど目力を感じる。
「そこの士官さん! 気になるものがあるなら見ていってリロっ!」
物珍しい目で見ていたのがバレたのか、片っ端から声をかけているのか、その子供……は無遠慮に手を振り大声を上げる。そして近くのオペレーターに静かにするよう注意を受けていた。
こうも派手に声を掛けられては相手しないわけにもいかず、その子供……に近づく。
どうやら商売人らしく、雑然と積まれた商品らしいものに囲まれていた。
品物に埋もれてよく見えなかったが、近づいてみると小さな女だとわかった。
まず目に入ったのは裾があちこちほつれたロングコート。その下はフリルのついたブラウスに、コルセットとショートパンツが一体化したようなものを履き、太めのベルト二本を締めていた。ベルトにはそれぞれ大きめのポーチがいくつも掛けられている。
髪は、両サイドで編み込んだ三つ編みを大きなわっかにして留めていた。クレーンゲームで引っかけやすそうだな、と思った。三つ編みはかなり長く、わっかから余った部分はそのまま無作為に後ろに垂らしている。
背は低く、140cmほど。顔も丸く幼い。外見は子供そのものだが、派手めの赤いアイラインと、つやのあるピンクベージュのリップがその容姿に対してアンバランスな印象を与える。
「……えーと、あなたは?」
ミリスは、何をやってるのか、雑多な品物はなんなのか、場所に似つかわしくないその出で立ちなど、疑問をすべて含めた雑な質問を投げかけた。
「リリロロは、リリロロというリロ」
と、大きな目をぱっちり開けて、にこやかに答える。
名前のことを言っているのか、と理解するまで間があいたが、かまわずリリロロは続ける。
「リリロロは行商をやってるリロ。日々がんばっている士官さんたちのために、はるばる遠方から貴重な品物をもってきたリロー。ここでしばらくお店を開く許可を取ったからゆっくり見ていくリロ!」
この広げた敷物を店といっていいものか。
……それにしても言葉の端々に付くリロとはなんだ? なんのつもりだ? という疑問を一旦押しとどめる。
「行商人……ってこと? 一人で? 小さいのにすごいね」
ミリスはその容姿とのギャップにすこし引きつつ答える。
「リリロロは立派な大人リロ。23歳リロ」
――げっ、年上。
つい子供扱いしてしまうが、年齢はほんとうに読めない。――そんな特徴をもつのはまさしく、チルキキ族だ。
チルキキ族は古来より地下に住んでいる民族で、成長が遅いのか童顔で身長は低い。ただ、古代技術と言われる未知の技術に深く関わっており、独特の知識と技術を有していると言われている。文化の違いこそあれど、基本的に友好的でコミュケーションもとれるが、閉鎖的な性格で、あまり外で歩き回る姿は見ないのだが……。たまにこういう活発な者もいるのだろうか。
「何を売ってるんですか?」
ミリスは歳を聞かされた衝撃で思わずかしこまって聞いてしまった。




