表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーリフレイン~プリムフィアリンク~  作者: ミヤジマハルオ
幕間 ~行商人リリロロ~
16/89

(Ⅰ)

「レイン、その格好で寒くない?」


 ミリスはレインが眠る病室の中にいた。ベッドのそばの椅子に座りながら、〈霊体〉のレインのほうを見て体調を気遣うように尋ねる。病室は小さな個室になっており、他人の目には映らない霊体に向かって遠慮なく話すことができた。


 レインは()()()()を見るのに抵抗があるのか、ベッドからすこし離れたところにいた。床に座り込んで、おなじく〈霊体〉の犬――リックとじゃれていた。


 レインはリックの鼻先に小さな手のひらを広げ、ちょっとまってね、という仕草をしてからミリスのほうを見る。


「んー、あついさむいとか、なんとなくは感じるけど……それが快適とか、つらいとかって感覚にはならないかなあ。やっぱり実際の体じゃないからかなあ」と、答えて、


「あ、でも、この帽子とケープはつけてたいかな。せっかくミリスにもらったんだもん」と付け加えた。


「そんなお古じゃなくて、レインが望むなら、好きな服とか買ってあげるよ?」


「ううん、これでいい。ミリスと繋がりができる気がするから」


 レインは少し目を伏せて言った。


 ――レインにとって見知った人との繋がりが、心の()り所といっていいかもしれない。


 家族や知人の記憶がなく、その幽体の姿のようにぷかぷかと〝心〟が宙に浮きっぱなしなのかもしれない。


 世間や人とつながる鎖は、時に(かせ)にもなり得るが、その実、自身の存在をつなぎとめる(くさび)ともいえる。大袈裟かもしれないが、アイデンティティの喪失は存在の消滅にほかならないのだ。レインのさみしい顔を見るたびに、そう実感させられる。


 ……だから決めたのだ。この子の繋がりにならなければ、と。


「ミリス? どうしたの?」


「……ううん、なんでもない。何か体調に異変があればすぐ言うんだよ。

 気温のことだけじゃなくて、頭痛いとか、おなか痛いとか……」


「もー、心配しすぎだってばー」


 レインはそう言ってオーバーにうなだれた。


「レインがすぐ無茶するからでしょ?」


「ミリスだって」


 間のない言葉のラリーに、お互いムッとした顔を見せつける。


 ……反抗期なのかな?


「――じゃ、私は任務報告書、提出してくるよ。すぐ戻るから!」


 と言い捨てて、ぷいっと振り返って立ち上がり、ドアノブに手をかける。


「すぐ帰ってきてよ!」


 とレインもふくれっ面で吐き捨てるように言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ