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海、奪還と音図の旅

酔イ踊レ乱舞決勝戦の夜に獣国の王、リル王が奇襲をかけた事で乱舞会場は混乱に満ち、会場外では死者がでてしまう。夏成国王ナオイクは死の淵を彷徨い、緊急に言霊使達による会合が開かれた。



 = 夏成国 王宮内  鳳龍の間 =


横たわるナオイク王は穏やかな顔で眠っている。その横では繭になった朱雀と露草が光を放ちナオイク王の心臓を繋ぐかのように一筋の光が放たれていた。


その姿を心配そうに見つめるのは、ナオイク王の姉であるヒクイナであった。

美しい顔立ちに気の強い眼差しは、一国の存続が崩れそうである今をどうするべきかと心を一身に祈る気持ちと決断を背負っていた。


「私は弱音は吐きません、言霊使ですから。」

ヒクイナはすっと立ち上がると、息を整えてから襖を開けた。


襖の向こうには、各国の言霊使が揃い神妙な面持ちで一斉に頭を下げた。


「この度は、我が夏成国は獣国からの奇襲を受けました。民が死に、王も死の淵を彷徨っておられます。

起こってしまった事は変えられません、今、私たち言霊使が力を合わせて双成国を守ります。これより、話し合いをし作戦を立てます。」


皆が頷くと、遣いの者がヒクイナに耳打ちをする


「モズと小照が目を覚ました。二人をお仕置き部屋に行かせます。それで良いですか?キツネ様、日照様。」


「寛大なご判断を感謝いたします。」

キツネと日照はホッとしたような顔で頭を下げた。


「キツネ様と日照様の孫である、モズと小照が起こしてしまった事態だと捉える者もいるが小照にはヒハシと同じ天能力である先見視力を持ち、幼いながらも自らの命をかえりみず力を行使し事態を最小限に抑えたと考えます。また、知恵授かりの後継者であるモズがいなければ後世の言霊使は成り立ちません。ですが勝手な判断は危険を伴います。よって二人を三十六時間のお仕置き部屋にて拘束します」



ヒクイナの声は穏やかさを必死に保っているのが、言霊使の卵たちにも伝わる。

そっと大命に視線を向けるヒクイナ


「大命の縄を解きなさい。」


遣いの者たちは少し戸惑う


「責任は私が取ります。」

ヒクイナの指示で縄を解かれた大命はそっとヒクイナに頭を下げた


「縄をヒハシへ。」


ヒクイナの言葉に黙って従うヒハシは静かに両手を差し出した。


「では、ヒハシ話してもらおうか。お前が望んだ未来とリル王の望みを。」


「…」


 = 獣国の人質 =


ヒハシは真っ直ぐと綺麗な目で語りだす



「世界大地震が起こり、被害が獣国まで及び先見視力の天能力の持ち主である私は、未来を見通せず被害をもたらした罪と引き換えに声帯を取られました。獣国の王であるリル王は、声帯を失った後でも私の天能力を欲しがった。戦争を避けるために私は人質という形で獣国へ行く事になりました。

リル王は未来をモノにするため、世界を統一し、この地の唯一無二の王になる事を望んでいた。

すでに、蛇族、錬金術使、吸血族、狼族の地を手にしていた獣国は、最後の地である双成国を欲していた。

だが、古い契約の書がリル王を苦しめていた。

 双成国と獣国との平和条約書は強力な言霊の力が込められていた。燃やす事も破る事もできず、土に埋めても常に、リル王の前に現れ、まるで書が生きているようにリル王について周り、リル王は日々苛立っていた。

 そして、この忌々しい書を憎み、言霊使の力さえも憎んだリル王はある時、契約書の匂いを感じとった。そして書に書かれた血文字は吸血族の血だと気が付き、吸血族を集め拷問にかけ、この書の秘密を知っているはずだと突き詰めていった。そしてある吸血族の男に拷問をするとこの書の効力が弱まっている事に気がついたリル王は血抜きの拷問をし錬金術使の薬で事の真実を吐かせる事に成功した。

 この契約書は人柱の結界がかけられている事、吸血族の血を使って禁忌術を行使し双成国を守っている者、すなわち人柱になりこの書と同化してる言霊使がいる事を突き止めたリル王は、この吸血族の男を薬付けにしを密に双成国へ入国させた。そして人柱の血の契約をした子孫である桃の木学長を殺し、書の効力がなくなった事を確信したリル王は酔イ踊レ乱舞にて奇襲をかける事を決めていた。

錬金術使の薬で仮の声帯を手にした私は祈り祝詞を唱えると、また未来が少し見えるようになった。

私はリル王に秋成国を潰す事が双成国を手に入れる一番の近道である事を告げた。

乱舞で振る舞われる酒は秋成国で生産せれている。毒を入れ混乱を招き、農地を奪い、言霊使の儀をする祭司を潰す、そうすれば簡単に手に入ると入れ知恵をした。

だが、私にはリル王とは別に私自身の計画があった。それは…双成国の真の統一」


その言葉に眉間に皺を寄せる、言霊使たち。


「双成国の真の統一だと?どういう事だ?」


秋納であるキツネが声を荒げる


「言霊使の他国婚及び混血児による平和計画」


「何を寝ぼけた事言っている、そんな事をすれば四季が崩れ双成国に天変地異、奇病と災難がふりかかるぞ」

キツネが大声を出す


「寝ぼけた事を言っているのは、あなた方でしょう。本当に大命が双子の禁忌の力で世界大地震を起こしたとお思いか? ふっ、ハハハハァッ!!」


「何がおかしい?」

夏納の日照が殺気に満ちた声を出す


「あなた方の古い考えが自分の子供たちを苦しめていた、ただ祈ることの為に生まれた事に誇りを持て?国の為、民の為? いいや違う! 言霊使にも感情があり心がある、そうだろう!」


カイが目を瞑りながら口を開く


「ヒハシよ、其方の考えは正しい。だが、地震が起き多くの人が死に、言霊使が生まれない国ができ人食い族の獣国が来れば私たちは食べられ消滅する」


「あたなには、未来が見えないでしょう?私たちはどの道、ごく一部の者が生き、あとは眠る事になる」

ヒハシは悲しい目を向けた。


「ヒハシの見えた未来がどうであれ、お前は死ぬ。同じ天能力の者が現れ力を完全に受け継ぐ事になる。その未来は見えなかったようだな?」


日照の言葉に唇を噛むヒハシ。


「ヒハシ…私はあなたの先見視力の力を信じています。と同時に其方の力の苦しみを感じます。未来は変えられないのですね? 消えた音図を回収しハクビシンを呼びます。命に変えても双成国を守ります。あの大地震で消えた命と国の為に命を燃やした仲間の命を無駄にしない為にも。未来の子供たちの為にも。」


ヒクイナは瞳を一瞬潤ませると声を張った


「言霊使の卵たちに告ぐ。音図を集める旅にでてもらいます。そして人質になった我が国の言霊使、海を奪還します。それ即ちハクビシンに命を捧げる者、命をかけ戦う者がいる事になるでしょう。それが今世で私たちがこの世に生まれた使命のようです。行ってくれますか? 大人たちはこの状況を納る事に力を注ぎます。残念ですが言霊神伝通りに事を進める他はありません。そして、私は話さなければならない事があります。」


ヒクイナは膝をつき頭を垂れた。


「若いあなた達には、酷な話をします、そして先人の言霊使に謝らなければなりません。私たちは小さな希望に賭けましたが、運命には逆らえない事を受け止めました…全てをお話し致します。」


一同が困惑する中、トンボ、ツツジは涙を流す、そしてヒクイナは静かに話を続けた


「あれは、私たちが知恵預かりをした日の事でした…」






 = 十九年前 =


 秋成国では四季学仙中等部の知恵授かりの儀が行われていた。



春成国 ツツジ 桜 モネ    十三歳


夏成国 西瓜 あまり ヒクイナ 十三歳


秋成国 トンボ クツワ 錫   十三歳


冬成国 カブ 法連  ネギ   十三歳


 阿吽神社は麻が焚かれ皆が静かに座り〝気〟を落ち着かせて瞳を閉じ決められた呼吸をする

一人、一人に盃を回し僅かに神酒を口に含む。

ただ静かに行われる。



「子年閏生まれ 言霊使の卵たちよ、今日より天より授かった天能力を心に重んじ決して驕る事なく世の為、人の為、祈るとぞ」


秋納あきおさめの言葉が皆の胸に染み込むのが体を通して感じられた。

知恵授かりの儀は言霊使たちに静かに納められた。

空は蒼く澄み渡り虹が見えた。




「不思議な気持ちにはなったけど、自分に何の能力があるのか未だわからない…」

トンボが阿呆そうな顔で空を見上げた


「トンボ君は、いつも何処か上の空って感じね」

錫が笑うとトンボは顔を赤らめた


「せっかく秋成国に来たのにもう中等部へ帰るなんて何だか勿体無いわ」

春成国出身の、ツツジは少し残念そうにした


「仕方ないだろ、僕らは知恵を授かりに来たのだ。秋成国と中等部は歩いていける距離だ。またいつか来よう。」

夏成国出身の西瓜が阿吽神社を見渡すと、強い〝気〟を感じ後ろを向く。と、一人の男が立っていた。


「やぁ。可愛い僕の後輩の言霊使たちよ。」


「ヒハシさん!」

トンボが嬉しそうな声を上げた


「久しぶりだね。みんな大きくなったね。知恵授かりの儀は退屈だっただろう」

ヒハシは冗談ぽく言うと笑った。


「今日の祈り勤めは終えられたのですか?」

錫が純粋な顔でヒハシを見た


「そうだね…今日は大事な話があってみんなに会いに来たよ。今、君たちが授かった天能力が僕の見立と同じかを確かめにね。中等部へ帰る前に僕の家へおいで」

ヒハシが含み笑いで言霊を吐くと皆は黙ってヒハシの後に続き歩き始めた。



数十分ほど竹林を歩くと小高い丘が見え鳥居を潜る


「さすがだね、普通の人はこの鳥居を通れないんだよ、みんなは正真正銘の閏言霊だね」

ヒハシは少し悲しげな表情で足を進める

鳥居の先の空気はまるで別世界の物に感じられるほど澄み切っていた。

息を吸う度に心臓に染み渡るのがわかるほどだった。


ヒハシが足を止め両手をかざし言霊を唱えると何もなかった竹林の中に美しくも素朴な神社が現れる


皆は突然現れた神社に驚く


「さぁ、狭いがお入りください」

ヒハシの言葉に誘われるまま皆は体が勝手き動きヒハシの家の中に上がっていく。


「ようこそ。我が家へ。」


竹林の小高い丘の中にひっそりと佇む神社の中は決められた方位に置かれた祭壇と寝台と座布団があるのみで何処か寂しさを感じる部屋の窓には一輪の花と四羽のカラスが微風に揺られていた。


「ヒハシさん、ここは…ヒハシさんのお宅でしょうか?」

トンボは緊張している


「そう…だね。家というよりも祈り所といった方が正しいかな。君たちも、いつかはこのような場所で祈りを捧げる日々を過ごすのだよ。あまり時間が無いから手短に言うね。」


知恵授かりをしたばかりの十三歳の子供たちの瞳はキラキラと輝いていた。


「私は水仙道ヒハシ。私の天能力は〝先見視〟未来が見えるのだよ。遠い、遠い未来もね。そして、そう遠くない未来に私は声帯を取られて言霊が使えなくなるのだよ。」


ヒハシの言葉に驚く中等部の子供たち


「双成国を守る為に君たちの力が必要なんだよ。私を信じてくれるかい?」

ヒハシの目は真剣であった。


「〝先見視〟とは…未来が見えるとは…つまり、どのような事もわかるのですか?」

ツツジが驚いた顔で問う


「そうだね、知りたく無いこともね。僕達の親世代はどうも私を信じてはくれないのだよ。祈れば覆せると信じ込んでいる。これは世界の歪みと切り替わりだ。今私が話ている事がわからなくてもいいんだ。ただ、信じてほしい。これから起こる事が真実であり、春成国の桃木様が亡くなられた時が合図だと。そして、酔イ踊レ乱舞で発動する。」


「なんの話かがわかりません…何がこれから起こり、双成国の未来に何があるのですか?」

桜が眉に皺を寄せる


「簡単に言うよ、言霊使の消滅。つまりは双成国の消滅。時間を稼がせてほしい。唯一救えるであろう希望は自ら、双成国を一度破壊する。」


「破壊?とは…」


「地震を起こす。双成国の〝気〟を一本にする。 皆が一つになるからだ。ただ、大勢が死ぬ事になる」


「……………」

一同無言になる


「双成国の民も言霊使も。死ぬ。」

ヒハシは淡々と話す


「それは…平和を祈る言霊使の役目に反しているかと…」

錫が小さな声で呟く


「その通りだ。私はこれから禁忌を犯す。先代の言霊使で〝先見視〟の天能力があったのは言霊神伝の筆者のみ。言霊神伝に書かれていることは物語ではない、これから起こる未来の予言書なのだよ。そして私が見た未来も大方同じだ。言霊使の消滅はあってはならない」


「私たちの消滅を願う者とは…?」

ツツジが怯えた目をヒハシに向けた


「獣国の王家は獣国と双成国の統一を考えている」

ヒハシの目はくすんでいく


「獣国とは…何百年も前に協定を結んでいます。そう学びました。統一など不可能だと思いますが…」

錫は信じられない表情でヒハシを見た


「協定ね。紙切れ一枚の協定が崩れずにいるのは言霊使がいるからだ。破りたくても破られないでいるだけだよ。僕たちが居なくなれば、結界が崩れて双成国に獣国の者たちが溢れるだろう、そうなれば、この世界が終わる。ということだよ。」


「…私たちは今日知恵授かりをして未だ自分の天能力も分かりません。」

ツツジが声を上げる


「ツツジ、君は保護結界の力持っている今も春成国の皆に結界を張って無意識に仲間を守っているよ。そして君は教師になる西瓜もトンボも教師になるよ。君達は重要な役割を担う事だろう」


「私は高等部へ行くつもりはないです」

ツツジが強く言い返す


「そっか。」

ヒハシは微笑む


「次の酔イ踊レ乱舞は…どの国が勝つかは秘密にしておくよ。知りたくもなだろう?」

ヒハシは優しく微笑む


「ヒハシさん、私たちは貴方の話を信じる信じない。と言うよりも、まだ話が飲み込めないです。私たちの力が必要と言いましたが、この未熟な私たちに一体何ができるとお考えでしょうか?」

ヒクイナが冷静な眼差しを向ける


「さすが夏成国の姫様だ。落ち着いている。君たちには地震前後に生まれる辰年生まれ閏言霊使の護衛だ。おそらくここが山場だろう。」

ヒハシが一人一人の目を真剣に見た


「護衛?どういう意味でしょうか?」

ネギが困惑した表情を見せる


「ネギ君、君は冬成国だったね? 冬成国は辰年生まれの言霊使を最後に言霊使が生まれなくなる」


ヒハシの言葉に冬成国のネギ、法連、カブの三人は固まってしまう


「いくら、ヒハシさんに〝先見視〟の天能力があるとはいえ、そんな事…言われれば戸惑いますし、不安になります!」


ツツジが声を上げると窓際の四羽のカラスがヒハシの横に止まり少しずつ人間の姿に変わってゆく


桃色の瞳をしたカラスは春成国の山茶花の姿に

赤色の瞳をしたカラスは夏成国のカンナの姿に

金色の瞳をしたカラスは秋成国の居待いまちの姿に

碧色の瞳をしたカラスは冬成国の大命たいめいの姿に


「驚いたかい?これはね、居待の天能力、変わり身の幻影術。素晴らしいだろう?本物に見えるが触る事は出ないが会話はできるのだよ。ここにいる各国の言霊使は私の同期でね。君達と同じ知恵授かりをして言霊使になった者だよ」

ヒハシの笑みが柔らかくなる


「お姉様、これは…」

夏成国のあまりが幻影のカンナの姿を見て思わず声を上げる


「久しぶりね、あまり。中等部での他国との交流を楽しんでいますか?」

カンナが優しく微笑む


「まるで本物だわ」

冷静なヒクイナも驚いた表情を見せた


「いいかい?言霊使の天能力は様々だ。そして強い。一人一人に天から与えられた使命に己の命をかける。ただそれだけなのだよ。単純さ。」

ヒハシが淡々と話す


「若い君たちには酷な話だね。これは双成国を守る為に独自に作戦をする、だが誰が死に生きるかまでは私にはわからない…全てを見る事が出来ない…」


一同の目線はヒハシに注がれた。


「私が言霊の書〝言霊白書〟を書く、おそらく大方その通りに未来が進んでいく事になるだろう、しかし未来を全て平和に書き換えることはできない、双成国が滅ぶ事を防ぎ、尚且つ、言霊使の保管計画を実行する。」


トンボが震えた声を出した。


「この作戦はお父様に言う事は許されないと言う事でしょうか?」


「そうだよ。君の家は言霊使にとって永遠に必要だ。もう僕が見た未来の事もお伝えしたが、聞き入れてはくれなかったよ。」


「ヒハシ様はどうして未来を変えたいのですか?」

ヒクイナの強い眼差しが真意をつく


「誰かが死に、誰かを恨む。傲慢な心は欲に溺れ孤独になる。だから寂しくて全てが欲しくなる。奪われる前に恨まれる小さな種を蒔く、恨み憎しむ心を持つ国は必ず滅ぶ、親が傲慢であれば子が似る様に国もそうなる。種を蒔くんだ。」


「種とは…つまり自然を使うという事でしょうか?」


「その通りだよ。お互いに同じ様な種を蒔く、自然災害さ。互いを憎み合い奪い合う国と、助け合い平和を祈る国。天はどちらを選ぶだろう。それでも未来が変わらないのなら、祈る事を今すぐにでもやめてしまいたい。私は。」


死神のように疲れたヒハシの顔に幼い言霊使達は、一人、一人そっとヒハシの背中に手を置き、〝気〟を与えた。


ヒハシはその純粋な暖かさに涙が溢れるのだった。


「私はこの国と民を愛している。有難う。」


「つまりは、言霊神伝から言霊白書への書き換え、国と民を守る。と言う事ですね。ヒハシ様を信じます。」


ヒクイナの言葉に続き、ツツジ、トンボ、西瓜、皆がヒハシの計画に賭ける事にした。

秘密の出来事であった。


ヒクイナから話された言葉に、先人の言霊使達は頭を抱える


「知恵授かりを終えたばかりの幼い子達を使い、洗脳し地震を起こさせた。一番の罪はヒハシお前にある!」

日照の声が襖を破いた。

カイが日照を落ち着かせる様に立ち上がった。


「ヒハシにも同じに幼く子供の頃があっただろう、知恵授かりをした日があっただろう。お前の訴えを聞く大人達はいなかった。それがどんなに孤独だった事か。どれだけ無力に感じた事か。すまなかった、ヒハシ。これは私達、大人の責任でもある。地震で沢山の民が死んだが、双成国の者は確かに奪い合う事も憎みあう事もせずにいた。

そして、今がある。憎みの根源として自身を犠牲にした大命に感謝する。未来が見える言霊使が二重に存在する、同じ天能力重複する時、新しい力が生まれるとされる。

ヒハシと小照の先見視力、ドクダミと芒種の治癒。新しい時代の為にハクビシンを呼び双成国を守ろう」


「カイ、お前はどうしてヒハシの肩を持つ?恨みの種を蒔くだと?どれだけの人が死んだと思ってる?」


キツネが目を瞑り嘆く


「私はヒハシの寂しそうな幼い瞳に気がつきながらも、たまに会うヒハシの頭を撫でるだけで何もしなかった。誰からも信じてもらえず、ただ滅ぶ国が見える国の為に祈るはさぞ孤独だったであろう。あのような竹林に幽閉し、ただ平和を祈らせた。そんなヒハシを同期の仲間たちが見放すわけもなく、助け合い友情が生まれ、全ては国を想っても事。子供の声に真摯に向き合わなかった結果がこれだ。」


「人は間違う、言霊使であっても、王であっても、朱雀であっても。」

ナオイクが目を覚まし枯れた声を出した。


一斉にナオイクを案ずる眼差しを向けた。


「朱雀と露草が命に代えて私を生かしてくれた。私は私の役目を果たす。

朱雀と露草の葬儀の準備を。朱雀継承の儀を49日後にする。」


「お婆様、お祖父様!」

大粒の涙を流しながら、朱雀と露草の元に駆け寄る睡蓮の姿と朱雀と露草に静かに頭を下げる言霊使たち。

愛し愛を全うした朱雀と露草の姿は昼の日差しに反射し黄金色に輝いていた。


その光景は天のぼる不死鳥そのものであった。



次回、49日の音図の旅

 





次回、49日の音図の旅

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