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決勝戦 夏成国 対 秋成国

ヒハシが書いた言霊白書通りの未来を変えるべく、前世の記憶を持つ小照こてりはモズと共に儀式をし物語を書き換えるが未熟なゆえにその場で意識を失ってしまった。


一方、酔イ踊レ乱舞会場の外では狼族が暴れだす

その時、ありえない人物が現れ驚愕するヒハシたち。

地獄の門が開かれた、始まりの合図であった。

夕暮れの丘は橙色に海を染め、小高い丘に横たわるモズと小照こてりを抱き抱え静かに歩き出す男は大きく息を吸い込み、ただ静かにそっと息を吐くと、地面の草に霜が降りた。


「懐かしいな…」


男は一言呟くと、モズと小照をしっかりと抱き歩き出した。




夏成国 対 秋成国の決勝戦のドラが鳴り会場は人々の声援と熱気に包まれ、酔イ踊レ乱舞の最高潮の空気が肌に染み渡り、〝気〟を高め、又は落ち着かせ、決勝戦を前に夏成国、秋成国、両者とも譲れぬ思いを抱き、ただ真っ直ぐと前を見た。



だが、小暑の心は揺らいでいた。自国開催の酔イ踊レ乱舞、ここで勝てば夏成国の言霊使としての優秀さが証明される、だが、秋成国が勝たねば双成国が滅ぶと、予言書である言霊白書に書かれている…この迷いが仲間達に伝わらないはずもなく、芒種、睡蓮、海は小暑の心情を肌で感じる。


〝何か迷ってる? 小暑の〝気〟そのものが〝陰〟…というより…負陰の邪気が微かにする〟


海が小暑を見る


〝何を迷っているの小暑は…〟


睡蓮が真剣な眼差しを小暑に向けたその時、芒種が自身の天能力である〝治癒〟を発動させ小暑を包むと、ハッと我に返る小暑は小さく震えた自分の手を見た。


〝俺は…仲間を裏切れない…だが、言霊使である前に〝人〟として、己の感情に負けて多くの人々を殺せない。

小暑の目からは大粒の涙が流れていた。

その顔を見た、夏成国の仲間である、海、睡蓮、芒種は小暑が勝つ事を望んでいない事を悟った。


対戦相手である秋成国の言霊使もこの〝気〟を感じ取る


寒露、かぐや、葉楓は小暑の涙を見て確信する、この試合は秋成国が勝つと。

だが、夏成国は四人、秋成国は三人、初めから夏成国が優勢だったのが、同等になったとも言える。海、睡蓮、芒種が小暑なしで勝負に出れば、勝敗はまだわからない。

ただ、ここで何の共情もなしで小暑を切るだろうか…


観客達は涙を流す小暑の姿を見て困惑する


「あの言霊使の兄ちゃん、泣いてるじゃねぇか、ビビってんのか?」

「あの泣いている子、夏納様のお孫さんじゃないの? どうしたのかしら…]


ヒソヒソ…ヒソヒソ…ヒソヒソ


小暑の耳に次から次へと、人々の念が入り両手で耳を塞ぐ小暑

芒種が治癒を施すが効き目がない


〝まずいわ、負陰に入ってる〟

睡蓮と海が目で合図し芒種を見る


〝四人では戦えない、でも、ここで小暑を放って戦う事もできない〟

その時、そっと波の音が耳に入り、海、睡蓮、芒種は幼い頃を思い出す。


〝私たちは、ずっと四人で一緒に過ごしていた、小暑に何があったかはわからない、でも、小暑を決して一人にはしない〟


芒種がそっと小暑の肩に手を置き、四人の調和を解く、海と睡蓮の二人は気練りに集中した。


〝まさか、海と睡蓮の二人で戦うのだな〟

葉楓、かぐや、寒露の三人も夏成国の四人の決断を受け入れ、気練りに集中する


どの四字熟語を放つのか、会場中が一点を静かに見つめた。

その背後の夕日は完全に沈みつつ、狼の遠吠えがした。


会場の外で狼が人々を襲い、露店と共に倒れる人々。


ヒハシ、居待、山茶花、参時が手分けをして狼を捕まえて行くが、きりがない。


乱舞で振る舞われた酒のせいで、いつもの半分ほどしか言霊を使えずにいる四人は

狼族たちを気絶させてゆくがすぐに目を覚ます狼族に驚愕した。



「どうなっている…まるで効いていない…」

山茶花の額に油汗が滲む


「この狼族の者達は何か特別な施しでもされているだろう、体臭が異様だ」

参時が顔を歪める


「これでも、僕を信じてくれないの?」

ヒハシは憂目を向けた


「…今だけでもお前を信じよう、四人で気練りだ!」

居待は〝気〟を高めだす


「大人の酔イ踊レ乱舞か…」

山茶花が強い目で笑う


「一回勝負だ、いくぞ」


四人は腹の底から〝気〟を練り、東西南北に分かれ狼族を囲い瞳を閉じた


〝ヒハシ頼むぞ…〟

三人の心情がヒハシの頭に流れ込む、この時ヒハシの口元が笑った



凄まじい気は光を放ち狼族の動きが止まる


〝いま〟


「白河夜船」


山茶花、参時、居待、ヒハシは同時に言霊を吐くと狼族と人々は静かにその場で深い眠りにつく。


「医療班を呼びドクダミ様と診療所に負傷者を運べ。試合が終わり次第、芒種の所にも怪我人を運べ。」

居待が側近に告げると、負傷した人々を見てため息をついた。


その時、冷たい風が吹く


「双成国の民を殺されても狼族を殺さずに眠らせたか…まったく… 」

冷たい声が、山茶花、参時、居待、ヒハシの耳に降った。

その聞き覚えのある声に四人は顔を強張らせた。


「よう、久しぶりだな。」

氷のような眼差しに雪のような白い肌の男は歯を見せて笑った。


「……大命(たいめい…」


そこには煉獄堂に収監されているはずの大命の姿があった。


「どうしてここに…」

山茶花が驚愕する


「地獄の門は開かれた、そういう事だ。」

苦笑いの大命にそっと、近寄り抱きつくヒハシ

「二度と、会えぬと思っていた。」


「…まさか、これもヒハシ、お前が書いた筋書きなのか…」

参時が驚き目を丸くする


「...いや、私と同じ天能力の者がいる…その者が未熟ながらに力を使った事で歪みが起きたのだろう。早くこの子を見つけなければ、今頃〝気〟が枯渇し完全には元の自分には戻れなくなるだろう」


ヒハシは奥歯を噛んだ。


「何だって?お前と同じ先見視力の持ち主がいるのか?キツネ様からは聞いておらぬぞ!」

居待が冷や汗をかく


「キツネ様もその者にまだ知恵授かりをしていない、つまりは…まだ九つ前後の子供だ」

ヒハシは拳を握った。先見視力の天能力を持つ者の苦しみと自身の幼少期を思い出していた。


「何だと、一刻も早くその子を探せなければ...」

山茶花が声を上げた


「その子達なら、もうドクダミ様のところへ届けた」

大命は優しく微笑んだ


「その子、たち? 一人ではないのか?」

居待が困惑した顔をする

「子供ながらに知恵授かりの儀をしたようだ」

大命の言葉に眉間に皺を寄せる居待はハッとする


「まさか…モズか!」


「キツネ様の血を引いてる者意外、知恵授かりはできないからな…間違いなだろう」

大命は白い息を吐いた


「まさか…ありえない…」

居待は開いた口が塞がらない


「さぁ、どうするの?この狼族の山。まとめて獣国の王様にお返ししようか?」

大命が〝気〟練りをする


「お前、脱獄しておいて…何を言っている…」

山茶花が呆れ顔で大命を見た


「双成国の民を殺された、これは有事だ。再び双成国を守るぞ俺たちで。」

大命の冷たい目は怒りに満ちていた。


「さっき、四人で言霊吐いて〝気〟が残ってないでしょう?煉獄堂上がりの俺を舐めないでよね。」

大命が片目を瞑り口元の口角が上がると、俊足で狼族を束ね縄で縛った。


「剛力の言霊使とかいないの?いくら俺でも持ちきれないや」

圧倒的な言霊使としての力を放つ大命の姿に唾を飲む参時は言葉を絞る


「大寒を呼んでくる…」


「待て、子供たちに大命を会わせるのか?」

山茶花が大きな声を出す


「相変わらずだな…山茶花は」

大命が笑顔を見せた


「山茶花、これは有事だ。善と善の争いだ」

居待の震える声はあの大地震の時を思い出していた。


「酔イ踊レ乱舞は中止だとナオイク王様に申してくる」

と山茶花が背中を見せた


「待った…この日の為に修行を重ねてきたんだ。最後までやらせてあげよう、例え、

誰かが書いた筋書きだとしても、一生に一度の乱舞だ…だろ?」

ヒハシが山茶花の背中になげかけた。

山茶花は立ち止まるとすぐに何も言わず、振り向かずに乱舞会場へと歩き出した。 


「亡くなった者を、丁寧に安置所に運ぼう」

参時の声に続き、ヒハシと居待が死者の元に歩き出す


「居待は乱舞会場に戻れ、娘が出てるだろ…」

参時の声に静かに首を横に振り、亡くなった者の前に膝をつき手を合わせる居待


「いいから、行きなよ。」

大命が言葉に〝気〟を込めて言霊を吐いた


「お前の術にかかるほど、〝気〟が枯渇しているようだ…だが、私は親である前に言霊使だ。己の大義を全うする」


居待はそう呟くと、目を開けたままの死体の瞼にそっと手を乗せて瞼を瞑らせた。


「…そうだな…」

大命も手を合わせ死者を弔うのだった。




= 満月の夏風 =


乱舞会場では外の異変に気がつかず、試合が進められていた。

山茶花がナオイク王に耳打ちをする姿を遠目で見る獣国王と目が合うナオイク王、

決裂の瞬間に強い夏風が吹くのだった。

会場にいる朱雀はナオイク王の殺気に気がつき有事が起きたを悟り、席を立つ


「何かあったのか?」

露草が目線を変えずに問いかける


「王様の元に向かいます」

「御意」


会場中央では、夏成国の睡蓮と海が阿吽の呼吸で舞を始めると、美しい少女の舞に観客達は心を奪われる


睡蓮と海は呼吸を整えて夏成国と呼吸をすると二人は微動だにせずに動きを止めた


「忠君愛国」(ちゅうくんあいこく)陽の言霊を放つ



秋成国の葉楓、かぐや、寒露は夜空に輝く月を見て月の光を味方につけるように、体から光を放つと、対戦相手の二人の舞を照らすようにした。

これぞ、この世の摂理、他がいて初めて知る美しさよ。


「月夜ノ晩」(ツキヨノバン)陰の言霊を放つ



神々しい光の中で互いに放つ



「酔イ踊レ!!」

「酔イ踊レ!!」


真夏の夜空はまるで天界のように輝いた、眩しさに目を瞑る観客席の人々は薄めで目を開けると、夏成国、秋成国の両者もその場に倒れ引き分けかと思われた時、膝をガクガクさせながら、立ち上がる葉楓の姿が見えた。



「勝国、秋成国!」


蓮角の声が乱舞会場に響くと会場からは歓声と拍手が湧いた

葉楓は片手をあげた、その時だった。

獣国王が葉楓の横にで不適な笑みを浮かべる


「させるか!」

露草とカイが葉楓を死守すると、会場がざわめく


「双成国のみなさん、ご機嫌よう。我は獣国王リルである。このおめでたい日に宣言しよう。今日を持って我が獣国と双成国は国家統一に向けて戦おう!血が流れる事を恐るな。愛の民よ!」

リル王は懐から血の塊の肉を出すとムシャムシャと食べ出した


「ま、まさか人の肉か…」

観客の一人が叫ぶと一斉に悲鳴が上がる


「どうか、民よ落ち着いて聞いてほしい」

ナオイク王が大声で呼びかけると、観客達が静まる


「我が名は夏成国王ナオイク。ここにいる全ての命を守る責任が私にはある、だが、もう既に会場の外では死人が出てしまっている。そして各国の言霊使が被害の拡大を防いでくれた。どうか焦ずに、互いを思いやり手をとり家路についてほしい。そしてこの命をもって獣国王に帰国を願う。」


ナオイク王が頭を下げると、会場の人々は静かに深く頭を下げ、言霊使の指示のもと会場を後にしていく。



「お行儀が良い。民度の高さを渇望するよ。本当に良い。」


リル王とナオイク王が距離をとり互いの目を見る


「名ばかりの王もご立派に成長されたようだな。見たところ母親に似て病弱だな」


「母を存じ上げていたとは…」


「いい女だったなぁ」


「話はここまでに致しましょう、どうかお帰りください。」


「嫌だねぇ…言霊使は。今も力を使い言葉に〝気〟をい込めているが...今、人を食べたばかりか効かないなぁ。」


リル王がナオイク王に向かって鋭い爪を立てて襲ってくる、しなやかに避けるナオイク


「ほう、人がいない方に誘導してるのか…さっきから南の方に目線を向けるなぁ、好きな女でもいるのか?」


リル王の挑発に真顔で答えるナオイク王


「あぁぁ、朱雀だろ。夏成国の朱雀はかなりのご高齢だ。〝朱雀〟別の名を〝不死鳥〟

後任の朱雀がすぐそばにいるのだな? 朱雀無しでは生きられぬ王様か…憐れだ。」


首の骨を鳴らしながらナオイク王を煽るリル王


「人の血肉を喰らう王よ。実に憐れだ。」

透明な声で呟くナオイク王は〝気〟高め気練りをする


「ニジ・キジ」(七変化)


ナオイク王が静かに姿を変え始める、鷲の翼を羽ばたかせ三メートルほどの姿になったナオイク王の姿を見て、怯むリル王。


「其方が最も恐れる姿の者が見えよう、恐怖を与えた罰として恐怖を味わうが良い」


ナオイク王の声もまるで別人のようになる


先に試合に負けていた冬成国と春成国の言霊使の卵たちは、ナオイク王の姿を見て震える


「これが…ナオイク王の天能力…」

立冬が思わず息をのんだ


「王様が巨大熊になった…」

大雪が後退りをする


「えっ、王様は立春に見えるが…」

柱が眉を顰める


「見えてるモノが一人一人違うんだわ…」

晴明が震える



リル王は自我を保つ為、大声をあげ体を震わせるが、幻覚の恐怖と闘い、側から見れば一人で暴れているようにしか見えない


〝………ハァ…〟


ナオイク王の口から血が流れだした。それを見た側近の大犀鳥オオサイチョウが涙を流す


「これ以上はナオイク様の体がもたない。死んでしまう…」


ナオイク王の術が緩んだ一瞬をつき、リル王がナオイク王の心臓目掛けて爪を立て突き刺した瞬間、術が解けてナオイク王は静かに瞳を閉じた



「朱雀様!!」

大犀鳥が声を荒げた一瞬…


リル王の爪は朱雀の体を貫通していた。

朱雀はナオイク王の前に立ち、ナオイク王を守ったのだった。


「ふふふふふふっ、あはははははははは!」


術が解け大声を出して笑い出すリル王


「ハァァ…嫌な術をかけやがって性格悪すぎだぜ、ナオイク王よ。朱雀に守られた命、だが、朱雀が死ねばお前も死に王と朱雀がいない夏成国は潰れる。実に良い。

まさか、最後に潰そうと考えてた夏成国から自滅してくれるとは、手間が省けた。」


「それはどうかな?」

 カッと目を見開くナオイク王に不可解な顔をしたリル王。


その時だった。


東に山茶花

西にキツネ

南に日照

北にカイ


四人が一斉に言霊を放つ


「春夏秋冬」


光と共に最上位レベルの言霊を喰らうリル王の体は、身体中の毛が抜けては生え変わり皮膚からは血が溢れだす。あまりの痛みに唸り声をあげ、うずくまるリル王は嘔吐し

ころげ廻る

「イユは何処に行った!早く何とかしろ!」

上擦った声に引き寄せられイユがリル王の元に駆け寄り手持ちの薬を青ざめた顔で見つめる

「何をしている、早く何とか…」


リル王とイユの目があったその時、リル王はイユを生きたまま齧りつき食べ出した


リル王が一瞬でイユを食べ終わると、リル王の皮膚は鱗で覆われた

「分が悪い…」

リル王は横たわる、海と睡蓮を見て笑う


「なるほど…合いの子か…」


皆が瞬時に睡蓮を守る姿を見て確信するリル王は残された力で瞬時に海を抱えるとその場で姿を消したのだった。 


息絶える寸前の朱雀に露草が寄り添うと二人は白い眉に包まれ光の玉となった。


瀕死のナオイク王と鎮まり返った酔イ踊レ乱舞会場に夜空の月が静かに欠け始め、かぐやは白露の姿になる頃、未だ気を失ったままの睡蓮と秋成国の葉楓たち。

この状況を飲み込めずに立ち尽くす春成国と冬成国の仲間と頭を抱える小暑、会場外では怪我人の手当てにあたる芒種。


この物語を書き換えた小照はモズと医務室で眠っていた。

「さて、これからどうなる?」

ドクダミは幼い小照とモズの顔を見て呟くのだった。



次回、海奪還と音図の旅

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