霊の成る木 第4話 公園の入口・噂の行方
森林公園は文字通りに小さな田舎の山の麓を切り開いてできた、自然の中に多少のアスレチックがある公園だ。
子どもの頃はたまに遊びにきていたが、管理されているとは言いがたい鬱蒼とした古い公園に行くことは成長と共になくなっていた。
「それで、森林公園のどのあたり?」
公園の入り口に自転車を停めながら聞く。
ちらほらと申し訳程度に外灯が光っていた。
「一番奥の、水道の近くにぽつんとある木なんだって」
「ふーん、そんなのあったっけ」
記憶を掘り出していくつかの遊具を思い出す。特に印象もない場所だった。
「あれ、篝もこの噂聞いたことあるんじゃないの?」
「聞いたことはあったけど、そんなに深く知ってるわけじゃないから詳しい場所までは」
僕がこの噂を知ったのはインターネットの掲示板だ。あまり最近めぼしい話題のなかったスレッドだったためささやかながら多少の賑わいを見せているようだったが、自分の地元の話であると分かってからは意図的に見ないようにしていた。
遠く離れた噂ならともかく、身近な話題にしたくなった。
「……真偽はともかくあんまりこういう話をするのは良くないよ」
「そんなの今さらでしょ?」
「……今さらだな」
まったくその通りだ。さすがに公園の入り口まできて引き返す凛子ではない。
「それで、霊の成る木っていうのはつまりなんなの?」
「なんだろうね? 幽霊か精霊かただの見間違えか……」
「失踪するっていう噂については?」
「それは、私はそれっぽい話をくっつけただけのように感じてる」
凛子は力強く頷いた。
僕は一瞬言葉に詰まった。
「……そこはそう思ってるんだ?」
「そこまでは噂として行き過ぎじゃない。失踪者から霊の成る木の話を聞いていて、幽霊を見たーって連絡受けていた友人からそういう噂が広まったとするよ? でもそれはたった1人だし、霊の成る木を見たから失踪するって言うのは大げさだと思う。仮に他にも失踪者がいるんだとしたらそういう連絡を受けた第3者が多すぎじゃない? 本人は噂を広められないわけだし」
「……はぁぁ」
何となく感嘆してため息が出た。
面白都市伝説であればなんでもいいというわけではないらしい。それなりの美学があるようだ。
しかしそれは逆に、幽霊というものについてささやかな興味ではなく彼女の中にしっかりとした興味として根付いていることを示しているようで僕は多少げんなりした。
……根が深そうだ。
中学、高校と話す機会が減っていたこともあり、この手の話への興味はなくなったのかと思っていたがそうでもなかったというわけだ。
「霊が成る……霊が生まれる、か」
仕方がないので噂の内容に考えを巡らす。
幽霊か、精霊か、見間違えか……。
霊が生まれるということは、死者の魂がそこで一般的に幽霊といわれるような存在に変換されているのだろうか。
しかし何か由縁のある木なら地元の僕らも聞いたことありそうだが、とりたててこのあたりでそのような話は聞いたことがない。
見間違え、もしくは誰かの面白おかしい創作話。これが一番ありそうだけど。どこかで似た話を聞いたことがあるような気もするし。
でももし、どれも違うとしたら?
何かしらの存在が幽霊と間違われているのだとしたらーーそれはもはや幽霊ですらないのではないだろうか。




