霊の成る木 第2話 田舎道・昔のように
夏の陽は長い。
陽が落ちてきたのは夕飯を終えて合流した頃だった。
外灯の少ない田舎道は陽が落ちると共に一気に暗くなる。数少ない外灯が照らす少し歩道が広目の交差点で僕たちは待ち合わせしていた。
僕と凛子が住んでいるのは中心部から少し離れた、けれど少し離れるだけで一気に田舎感の出る規模だけはそこそこ大きな町の古い集落だった。
古さ故に黄味がかった外灯の光を頼りに僕らは軽い挨拶を交わした。近くにあるニュータウンが羨ましかった。
「本当はもう少し遅い時間が良かったんだけどなぁ」
私服に着替えた凛子が不満そうに言う。
「仕方ないだろ、むしろよくOKが出たもんだよ」
「お母さん、篝だったら良いって。むしろ今日も帰り遅くなるから助かるって。夕飯も一緒にうちで食べれば良かったのに」
「それはさすがに悪いよ」
「別にいいのに。今日は私が適当に作るだけだったし、誰もいないし」
僕はなにも答えなかった。
凛子の家は両親とも多忙でよく夜遅くまで留守にしている。幼い頃はよく遅くまでひとりにならないようにうちで一緒に過ごしたりしていた。
子どもの少ない地域であるとか、家が近いとか、きっとそういう状況で育ったから僕らは今でも交流があるのだろう。
「さっさと行こう、そしてすぐ帰ってくる。良い?」
「おっ行く気になってくれた?」
「そういうわけじゃない。人気も少ない場所だし単純にあまり遅くなると危ない。それに僕が行かなかったら1人で行く気でしょ?」
「うん」
悪びれもせずに頷く。僕はため息をついた。
「小学生か」
「いいじゃん、だから篝に頼んでるんでしょ。こんなことに付き合ってくれる人他にいないもん。せっかく近所で都市伝説ができたんだよ、行かないと!」
「……何もないと思うけど」
「それならそれでいいの。何もないじゃーん! って言って、おしまい」
凛子は薄明かりの中で子どものように無邪気に笑った。
僕はもう一度ため息をついた。けれど幼い頃に戻ったようなどこか懐かしい感覚がして少しだけ薄暗い気持ちが軽くなるのを感じた。
僕は友達が少ない。昔から多い方ではなかったけれど、高校生になってからはさらに少なくなった。家が高校から少し離れているということもあり放課後に友達とどこかに寄るなんてこともあまりなかった。仲の良いクラスメイトもあまり人を誘うタイプではなかったし、僕から誘うこともなかった。放課後に教室や部室でダラダラと話をしたりするくらいだ。
だからこうして誰かに出かけようと誘われること自体は本当のところ、すごく嬉しかったんだ。
「お参りしてから行こ、篝の家の」
「……そうだね」
僕は自転車を押して来た道を引き返した。凛子はその少しだけ後ろをついてくる。
幼い頃と重ね合わせて感じた温かい懐かしさは薄暗い焦燥感に書き消されそうだった。




