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肝試しと花火と噛み合わない僕たち 第1話 来なかったら許さない

 午後五時。


 夏の空はまだ明るく夕方らしさのない青空が広がっている。昼間に比べると日差しは幾分か落ち着いていたがまだまだ暑く、時おり吹く風が心地よい。

 そんな時間に高校の校庭にクラスメイトのほとんどが集まっていた。有志の発案で行われることになったクラスイベントの日だからだ。正式な学校行事ではないがほとんどが集まっているのはクラスの雰囲気に恵まれているからだろう。

 集まったクラスメイトはまだ並びもせずただわいわいと仲の良い者同士集まって話しているだけだが、いつもと違う雰囲気にすでに盛り上がっている。


 僕はというと『絶対に来てよ! 来なかったら許さない』と脅されているので半ば強制参加だったわけだが、そうでも言われなければ行かなかったかもしれないので丁度よかったのかもしれない。

 校庭についてあたりを見回したが、参加すると言っていた仲の良い友達はまだ来ておらず適当にぶらついていて時間をつぶす。もしかしたら二人とも来ないのではないだろうか。


「あっ!」


 響く声が聞こえた。遠くからでもよく聞こえる。反射的にその声の方を向いてしまった。見なくても声の主は分かっていたのに。

 瞬間、ポケットの中のスマートフォンが震える。

 もしかしたら友達からの連絡かもしれない。もうすぐ時間だというのに一体何してるんだかーー。


『なんでそんな離れたところにいるの?』


 チャットの文を読んでから一度画面を消す。すぐにもう一度付けたが画面は同じ文面を映すだけだった。

 僕は仕方がなく返事を打つ。


『みんな来なくて暇なんだよ』


 間髪いれずに返事がくる。


『こっちに来たらいいのに』


 画面から目を離しうろんげな視線をチャットの主へ送る。その先にいるのはクラスメイトにわちゃわちゃと囲まれて忙しそうな凛子の姿だ。片手にスマートフォンを持ってはいるが、あの状態でよく僕に連絡する暇があったものだ。

 彼女のまわりのクラスメイトとは別に仲が悪いわけではない。だが別に仲が良いわけでもなく、むしろちゃんと話しすらしたことがない人がほとんどだ。良い人ばかりだとは思うが、ちゃんと話すほどの共通の話題もあまりありそうにない。

 僕が返事を打てずにいるうちにまたスマートフォンが震えた。


『楽しみだね!』


 だろうね。


『一緒のペアになれるかな』


 どうだか。


『私は篝と一緒にまわりたい!』


 ……だろうね。


『ちょっと! 返事してよ!』

『ねー』

『おーい』


 スマートフォンが通知で震え続ける。見ないで打っているのか? 返事を催促されているが返事をするより前にメッセージを受信し続けているので仕方がない。画面を確認して僕はそっとスマートフォンをしまった。


「篝ぃー」


 自分の名前を呼ばれたからだ。


「ごめんごめん、まだ始まってないー?」

「ギリギリセーフだよ」

「ほい、篝の分」

「なに?」


 校門からふたつの人影が歩いてくる。僕が答えるとひとりからアイスを渡された。

 仲の良い友達二人と合流し、クラスメイトの輪の近くへ戻る。ちらりと見ると凛子がなんだか不満げな視線を送ってきていた。

 僕は肩をすくめ、スマートフォンを取り出す。


『楽しめるといいね。でもペア決めはくじでしょ?』


 申し訳程度に返事を送る。このままだとみんなの前で噛みつかれかねない。

 ただ彼女の期待するほどのことが起きるとは思わないけれどそれは言わないでおいた。今日はそういう事情は抜きにして、クラスのイベントなのだからとりあえず何の問題も起きずに楽しく過ごせればそれで良いと僕は思っていた。



 事の始まりは一学期の終わりの日。

 夏休みの中日にクラスのみんなで集まろうと提案があった。話を聞くとクラスメイト何人かが夏休み中にみんなで集まれないかと企画し、担任に掛け合い学校で行う許可を取ったという。本当は許可もいらないし公園かどこかで個人的にみんなを集めようとしていたらしいが、学校でやりたいという意見が出てこうなったらしい。

 誰が言い出したのだか知らないけれど。なんとなく想像はつくけれど。

 それにしても最後に花火をやるらしいのによく許可がおりたものだ。担任がわりとゆるいタイプの教師だったからか、企画に関わった生徒がわりとしつこいタイプだったからか。


「みんな集まってー! くじ引き始めるよー!」


 実行委員のひとりが号令をかける。それに合わせてぞろぞろと人が集まってきてあちこちに散らばっていた輪が小さくなる。あっという間に校庭の朝礼台前に人だかりが出来上がる。


「行こうぜ。まあどうせ俺たちはあまりくじだろうけどさ」

「うん」


 苦笑しつつ輪の中心へ向かっていく。

 ポケットの中でまたスマートフォンが震えている。けれど内容を見る暇がなくてそのままになってしまった。


「お前こういうの得意?」


 隣を歩く友達、上田が聞く。


「そこそこ」


 無難な答えを返す。嘘ではない。


「マジかー……俺結構苦手なんだよなぁ」

「一緒に行く?」

「わりとマジでお願いしたい……」

「じゃあやめておこう」

「なんでだよ!」


 吠える上田を置いてさっさと歩いていく。


 さあ、肝試しの始まりだ。

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