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ゲーム 第1話 来ちゃった

ーー暑い。


 高校一年生の夏休み。僕は自室のベッドに仰向けで転がっていた。暑すぎて何のやる気もでないからだ。

 夏休みの課外授業は終わった。夏期課題はそれなりに順調に進んでいるし、まだ焦るほどの日付でもない。部活はほぼ全体での活動がない部だし、塾も通っていない。バイトは禁止。している人もいるけれど。友達はいなくはないが自宅は市街地から離れていて友達と気軽に遊ぶこともままならず、中学のときの友達はなんだか誘いにくい。手持ちの漫画も本も読んでいないものは今はない。インターネットも見飽きてきた。


 つまり。


「暇だ……」


 誰に言うでもなくつぶやいた。

 夏休み前半戦、むしろ始まったばかりにも関わらず僕は手札を切らしていた。

 やりたいことがないわけではなかった。けれど実際時間ができるとなかなかやる気が出ない。言い訳ばかりを脳内に並べ、できない理由を探し始めてしまう。こんなことならばもう少し活動的な部活に転部でもするか、バイトでもすれば良かったか。……とは思っても実際行動を起こすかと言われたらきっと僕は何もしないだろう。せいぜい初期設定をミスしたことを呪うくらいだ。


 やっぱり誰かに連絡をとろうかとスマホを手に取り、やっぱり面倒になってそのまま立ち上がる。図書館にでも行こう。エアコンが効いてるしお金もかからないし駐輪場にも困らない。

 自室のドアノブに手を掛け扉を開けると同時に階下からインターホンが鳴る音が聞こえた。

 家には僕しかいない。何の気なしに玄関へ向かう。

 本来ならリビングにあるモニターで相手を確認してから出るべきであり、普段の僕ならそうしている。けれどこの時の僕はあまりに暑くて判断能力が下がっていた。ドアスコープを覗くことすらせずに玄関のドアを開ける。


「わっ! 急に開けないでよっ」


 玄関の前にはスマホの画面を見ながら前髪をいじっている凛子の姿があった。凛子は僕の姿を見ると慌ててスマホをしまった。


「来ちゃった!」


 いたずらっぽい笑みを浮かべながら凛子が言う。

 今日は凛子からの連絡は無かった。だからもちろん家に来るなんて思ってもみなかった。僕が面食らって黙っていると凛子は拗ねたように唇を尖らせた。


「なんか言ってよー! 恥ずかしいんだけど!」

「えっと……どうしたの?」

「実はさぁー……お願いがあって」


 きっとろくなお願いではない。断られることを見越して連絡も無しに突撃してきたのだろう。


「あのね、ちょっと一緒にゲームでもしない? 篝どうせ暇してたでしょ?」

「どうせ暇って……」

「図星でしょー?」


 図星だけど。悔しいので返事はしなかった。


「ね? そんな篝にはちょうどいい提案でしょ? 大丈夫、ちゃんとハードも一式持ってきたから! 篝と場所とテレビさえ貸してもらえればすぐできるから! 篝の部屋、まだテレビあるよね?」

「あるけど……わざわざ持ってきたの?」

「うん! どう? いいでしょ? ねっ?」


 よくみると凛子の手にはキャリーケースが握られていた。この暑い中この荷物を持ってきたのか。徒歩五分の距離だ。僕を呼んで家に連れていった方がこの準備をするよりも早かっただろう。

 当の凛子は僕の反応に満足げに笑っている。わざわざここまで準備してやってきたのだ。確かに断り辛い。


「一応聞くけど、何のゲーム?」

「それは準備しなが説明するから。入っていいでしょ?」


 この返事がほぼ答えのようなものだ。少なくともジャンルは確定した。

 で、僕の返事はと言うと。


「いいよ」

「うそっ! いいの? やったぁ! おじゃましまーす!」


 凛子が嬉々として上がり込んでくる。

 その後ろ姿を見届けてから僕は玄関の扉を閉める。自宅の鍵は所定の位置に返した。予定変更だ。

 


 この時の僕はあまりに暑くて判断能力が下がっていてーー何より暇だったのだ。

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