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霊の成る木 第1話 部室にて・地元の都市伝説

「霊の成る木があるらしいのよ」



 凛子が唐突にそう言ってきたのは放課後のことだった。


「……そう」

「なにそれ、もっと興味持ちなさいよ!」

「じゃあとりあえず聞くけど、霊が成るってなに」

「……知らない」


 ただでさえ大きな目を丸くして小首をかしげる。悪気もなくきょとんとして答える。


「はい、じゃあこの話はおしまい。ていうかなんでここにいるの」


 僕たちがいたのは読書部の部室だった。読書部ーー通称帰宅部。幽霊部員をたくさん抱えるこの部の部室に集まる部員は数少なく、今いるのは僕と凛子だけだった。

 東島凛子。彼女は僕の幼なじみだ。だがいつもクラスの中心にいる彼女と学校で話すことはほとんどなかった。彼女が言うには僕が一方的に避けているというが、クラスの端で本を読んで過ごすことの多い僕と彼女にクラスで接点があるわけがなかった。


 だから彼女が僕に用事があるときはこうして読書部の部員数に対してあまりに小さ過ぎる部室を訪ねてくるのだった。

 部室の一番窓際にある椅子に座って本を読んでから帰るのが僕の日課だった。


 視線を凛子から本へと戻す。どこまで読んだんだっけ。


「はいはいはい、ちょっともう少し聞いてよー」


 しゃがみこんで僕の前の机をとんとんと指で軽く叩く。

 無視。


「そこに霊が成るのは凶兆でね、それを見た人は失踪してるんだって」


 無視。

 見た人が失踪してるならどうして噂になるんだ。


「まぁよくある話なんだけどさ。気になるのはそこで誰かが死んだとかの曰くがあるわけじゃなくてそこに霊が『成る』らしいのよ」


 無視。

 目を本に走らせる。


「まぁつまり、『霊が生まれる木』なんだって」


 あった、ここまで読んだんだ。


「だからね、今日行こうよ!」


 凛子が立ち上がり楽しそうに言う。


「ちょ、ちょっと待って。どうしてそうなる?」


 思わず返事をしてしまった。


「明日から夏休みだからでしょ!」

「いやいやいや、そういう話じゃなくて!どうしてわざわざそんな気味の悪い噂を確かめに行かなくちゃならないんだよ」

「幽霊が見たいから!」


 凛子は昔からその手の話が好きだった。ホラーゲームも怖くてひとりでできないくせによく買ってきて何故かいつも僕の家でプレイしていた。


「いや……僕は遠慮しておく」

「なんでよ! 篝しか一緒に行ってくれる人いないでしょ」

「だったら……なんでもない」


 多分凛子が誘えばいくらでも着いてくる奴はいそうだけど。というのは言いかけて言わなかった。


「行かないよ。凛子もやめておきな。山の方の公園でしょ。あのあたりはあんまり人がいないから暗くなってから行くのは危ない」


 凛子が黙る。ようやく行く気がないことを理解してくれたのか。

 少しほっとして、半分は突然黙りこくった彼女の様子が気になって本から顔をあげる。

 そこにあったのは小さな子どものような満面の笑みだった。


「篝、やっぱり知ってたんだ!」


  ーーしまった。


「よっし、じゃあ決定! 善は急げ! 今日決行!」

「違う、少し小耳に挟んだ程度で、」

「わー! 楽しみ! じゃあ早く帰って準備しようよ!」


 僕だって目的地がもっとまともなところなら楽しみだったけど! 準備ってなに!

 言いたいことを色々あったが、色々ありすぎてなにも言えなかった。


「幼なじみが神社の息子で良かった!」


 東島凛子がわざわざ僕にこの手の話を持ってくる理由はひとつ、僕が神社の息子だからだ。


 だから除霊能力があったりーーということは、一切ない。

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