表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/63

学校の階段 第4話 何もなかったってことなのかな

 僕たちは凛子に連れられてきた最寄りのファーストフード店で向かい合って昼食をとっていた。


「本当に夕方まで待つ気?」


 フライドポテトをつつきながら聞く。一度外へ連れ出すことには成功したものの、凛子はもう一度あの場所へ戻る気満々だった。


「もちろん」

「何時まで?」

「もちろん逢魔時! 十八時頃がいいかな! ……って言いたいところだけど、さすがに門閉められたら困るしね。まだ明るいけど四時頃かなぁ」


 思ったより妥当な時間だ。それでもあと二時間程あるわけだけど。


「なるほど。ところで、忙しいならこんなことしてないで帰ってもいいと思うけど?」


 凛子は席についてからずっとなにやら熱心にスマートフォンをいじっていた。友達からの連絡か、ゲームか、勉強……はないか。


「何言ってるのよ。私の忙しい理由に心当たり無いの?」

「無いよ」


 当然のようにそう答えると、凛子は得意気な表情をして言った。


「過去のニュースを調べてるのよ」

「ニュース?」

「うちの学校で飛び降り自殺とかそういう事故があったかどうかよ。まぁそういう事件だと報道されてない可能性もあるけどね。とりあえずネットで調べられる範囲は見ておこうと思って。そういうことがあったならあっちこっちで書き込みしたりする人もいるでしょ?」

「熱心なことで。それで、どう? 何か分かったの?」

「……全っ然」


 だろうね。

 という言葉はどうにか飲み込んだ。

 先ほどまでとはうってかわってつまらなそうな顔でスマートフォンをテーブルの上に投げ出した。片手の指でテーブルの上のスマホを意味もなく撫でながらつぶやく。


「……つまり、何も無かったってことなのかなぁ。地元の私たちも聞いたことないし。学校みたいに人が集まる場所なら何かいると思うんだけどなぁ。昔から学校に怪談はつきものでしょ」


 そう言ってテーブルの上にうなだれる。僕は床にぶちまけられないようにポテトを端に寄せた。


「はぁぁー……。でも声が聞こえたって言ってる子は本当にいたのよ」

「本当に人がいただけだったりして」

「あんなところに? 何もないじゃない」

「何もない、誰もいないからこそあそこを使う人もいるんじゃない? あまり良いこととは思えないし、近づかないに越したことはないね。何をしていたのか分からないし悪いことではないにしても人に見られたくないからあんな場所にいたんだろうし。何も知らなかったふりをしてあげよう」

「……つまり?」


 凛子が怪訝な顔で尋ねる。


「帰ろうか」

「嫌!」


 だめか。


「僕が帰るって言ったら?」


 呆れて聞くと、凛子はにやりと笑った。


「何言ってるのよ」


 今度は僕が怪訝な顔をする番だった。

 すると凛子は自信たっぷりに言った。


「篝が私を置いて帰るわけがないじゃない」





 夕方。僕たちは再び屋上前の階段にいた。不本意ながら凛子の宣言通りである。


「懐かしいね。小学生の頃もさ、こうやって夕方まで学校を探検してたことあったね」


 凛子は僕に背を向けていた。


「あの時も、何も見つけられなかったなぁ」

「そうだね」


 凛子がどんな気持ちでそう言ったのか、僕には分からなかった。

 その日、結局僕たちには何も聞こえなかった。


「帰ろうか」

「うん」


 短い会話をして、僕たちはそこを後にした。

 一度だけ振り返る。


ーーつまり、何も無かったってことなのかなぁ。


 昼間の凛子の言葉を思い返す。きっとそうなのだろう。ここでは自殺ほどの事件は無かったのだと思う。


 それなら。

 それなら、屋上の扉の前にいくつも感じる違和感はなんなのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ