リアル鬼ごっこ
2022年の夏。
電車の車窓が開いていて、セミの鳴き声がよく聴こえる。大合唱のように鳴いていてやかましい。アブラゼミの鳴き声だから、大量の揚げ物を揚げている音がより正確だ。それだけではない。
夏が嫌いだ。
蒸し暑いのが苦手である。
一日中サウナにいる気分じゃないか。にもかかわらず、学校はケチってエアコンを使ってくれないし。
そう、私は高校生だ。
今年入学した一年生だ。既に、高校生活に呆れている。中学生のときは憧れていたものが、いざ現実になると目が覚める。
制服はダサいし、校則は厳しい。
スケバンのようなスカート折った時点でレッドカードレベルだ。リボンやネクタイがなくて、胸元が寂しいから生活指導室に訴えた人がいるらしいが、学校側は見事に無視。
入学する前に、制服を見ておけばよかったと今頃後悔している。
あと、家から学校までが遠い。
電車通学だ。田舎だから時間が掛るし、一日の本数も少ない。
授業開始時間が遅くなったのに、中学生のときと起きる時間が変わらない。更には、電波が悪くてスマホが使えない状態。
今どきの必需品ナンバーワンだろ?
こんなことあるか?
それでもまあ放課後の今、電車に乗っている。定期考査後だから、部活無しの早帰り。悪いようで、実際は一番いい日だ。田舎あるある、人がいないから座りたい放題&騒ぎたい放題。だからといって、暴れるわけではないよ?
口の悪さはともかく、ドッカリと座らずに座る。手には本。この年にはそぐわないかも知れない『オペラ座の怪人』を読んでいる。何回も読み直して、ヘナヘナに草臥れた本。
普通、高校生の大半は英単語を片手にしている。
そんなんで頭に入ったら、誰も苦労しない。だったら、自分の好きな本を読む時間に当てたほうがいい。
そのことを中学の友達に言ったら、
「相変わらず、偏屈ばあさんだねぇ。高校生らしいし、なんか頭良さげじゃん?」
「肝心の中身が空っぽだったら、意味がないでしょ。」
「花はわかってないなー。そこに詰めるんだって。」
わかってないのはどっちだー!
内心そう叫びたかった。口では納得したが。
花というのは、わたしの名前で大橋花がフルネームだ。
時間を確認しようとふと顔を上げた。その時、電車は停車していた。
ドアから、外の熱風が入ってくる。
日差しを浴びて、ワイシャツが汗でじっとりとしている。
背中が気持ち悪い。
座る位置をずらしていると、人が一人入ってきた。
そこで知らない人だったら、また読書をしていただろうか。生憎、私はソイツを知っていた。
日に焼けて小麦色の肌。
ガッシリした肩幅に、大きなブラウンの目。
飯倉亮平。
小、中学校一緒だった奴だ。優等生ヅラしていて、嫌いな奴。教師が見えない裏では生意気なクソガキに過ぎない。卒業式に一発殴っておきたかった。
ドアに凭れ掛かって、颯爽とスマホ取り出す。
電車に乗り慣れていないらしく、電波が悪いことに首傾げている。振ったり、方向を変えて試している。
「この電車じゃ、スマホ使わんほうが良いよ。」
「あっ?そうか…」
向こうは私が、誰かわからずに反応していた。
「無理して使おうとすると、料金が発生するから止めておきな。」
やや、ションボリな顔をしていた。
やっと顔を上げて、私が誰か見る。
「大橋か…久しぶりじゃん!」
ニヤッと笑う。
相変わらず、むかつく顔だ。
話し掛けなければよかった…
今日は凶だな…
「こっちでは見掛けないけど、どこの高校に通ってるの?」
「都内の高校に通っているー。向こうは夏休みが始まっているから、ちょっと帰って来たところ。」
「もしかして、スポーツ推薦?」
「あっ。そうそう!まぁでも、スポーツ推薦でなくとも入れた高校。」
さすが、テニスで全国大会に出場した人。
へえへえ、天才はいいですね。
才能に恵まれて。
こっちは運動も脳味噌も頑張って普通なんですよ。
睨み付ける目にならないように気を付ける。
したくもない会話だ。
《次は〇〇駅〜〇〇駅〜》
電車のアナウンスが流れる。
次の駅で降りるので、本をカバンに戻して立ち上がった。亮平とは反対側のドアに向かう。
「そういえば、大橋に聞きたいことがあるんだけど…」
きまり悪そうに、亮平が話す。
私は振り返って、
「何かいいた…」
何かいいたいことでもあるの?と言おうとしたとき。
ガゴゴコゴッッン!!ドゴゴゴッッンン!
電車が突然大きく横揺れをした。吊り革がも揺れ、ぶつかり、音を立てる。
――――――――っつ!???
地震だろうか?
とてもじゃないが、バランスが保てないっ!
「どうなってんのっっ!!?」
「ヤッベッ――――!うわっ――――!」
お互いに顔を合わせ叫ぶ。足が崩れてへたり込むが、それでも上手く動けない。亮平のバックが飛んできて、頭に当たり激痛が走る。
それでも電車は走り続ける。たが、脱線して電車が空中に投げ出される。
放り出されたせいか、車内の上下が反転する。
体が床から天井の方に、落ちていく。
お尻で着地して痛い。亮平は列車の奥の方に行って、姿が見えない。いや、奴なんかの心配なんてしなくていいだろう。
窓からは外が見えた。
見たことがない空。いや、空とは言えなかった。それは異様な光景だった。
螺旋状の形をした映像が流れている。
幾つものの映画館の画面を貼り付けたかのよう。大量の情報が流れている。
大きな波。
壊れていく建物。
波に流される人々。
工場の爆発。
そして――――――――――
―――――――――――私は画像の中のものを見たことがある。
真っ白い画像の中に黒い点が一つあった。黒い点が、段々と大きくなる。
そして黒い点が、画像から出てきた。
貞子でも見ているのだろうか?
点は物体化していた。ゆっくりと、近づいてくる。
恐怖で金縛りになり、体が動かない。
今日は凶じゃなく、大凶だ…
小説は、初めて書きました。拙い文章すみません。伝わりにくいところがあると思いますが、徐々に小説らしい書き方にしようと頑張ります。
改善したほうがいいころがあったら、ぜひ書いてください。宜しくお願いします。