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桜舞う軍事国家  作者: カニ・カマボコ
第一章 幼年期
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第二話

再び暗転した世界に僕は立っていた、だけどさっきと違って僕はぼろぼろと涙を流し太祖を探す。さっきの恐怖が蘇り情けなさと申し訳なさでぐちゃぐちゃになりながら、必死に太祖を探すと最初の時と同じように静かに寂しそうな眼をした太祖が座っていた。


「どうじゃ解ったか?」

「僕は・・・・・間違いだらけでした」


泣きじゃくりながら頷く僕をとても優しく太祖が撫でてくれる。


「それでよい、今気付けたならそれで良いのじゃ、だが・・・・後はそうじゃなぁ」


太祖が僕を撫でながら何かを考えるかのように空いている手で自分の髭を撫でている。

そんな太祖を見ていると僕があまりに失敗をしすぎて、それを太祖が見ていられなくて忠告してくれたに違いないと僕は考え出した。


「お主に他人の感情が解る目をやろう、それならお主も間違うまい」

「他人の感情が解る?」


意味が解らず首をかしげる僕に太祖がとても優しい顔をして頭を撫で続けてくれる。


「そうじゃ、お主に悪意をもったものは赤を纏って見える、お主に善意を持ったものは蒼を纏って見える、その感情が強ければ強いほど色が濃くなって見えるのじゃ」

「赤が・・・・悪意、蒼が善意」


絞り出すような僕の言葉を聞いて目を細めてやさしく撫でながら太祖がうなずいてくれる。


「その目を使い忠臣を集め国を治め民を安んじてほしいのじゃよ、できるの?」


とても優しく、そしてとても威厳のある声で太祖は僕を見つめる。

そんな太祖を僕も見つめしっかりと頷く。


「太祖に恥じないよう僕は頑張ります」


その言葉を宣言すると太祖は今まで以上に微笑んで僕に握手を求めてきた。

とても大きな手だったけど僕も太祖の手を握り返して決意を新たにする。


「まず儂を見てみるがいい、感情を見たいと思って相手を見るのじゃ」


言われた通りに太祖を見ると真っ蒼で顔も見えないぐらいの蒼でおおわれていた。ちょっと目の奥が痛いけど太祖は心底僕のことを心配してくれているのだと安心できた。


「うむ、出来たようじゃな、しばらく使っていればゆっくり馴染んでもう少し性能が上がるのでな」

「あ・・上がるんですか?」


ちょっと驚いて少し声が大きくなってしまう。そんな僕を微笑んでまた頭をなでてくれる。


「感情だけではなくそのうち威圧やカリスマも使えるようになるわぃ、皇帝として当然のスキルじゃ」

「威圧とカリスマ・・・・僕には似合いそうにないですね」


言われたスキルを復唱しながら無理っぽいなぁと苦笑する。


「大丈夫じゃよ、最初は蒼いものを探し、そしてその者が言う忠言に耳を傾けるのじゃ」

「はい」

「そうすれば自ずとお主の味方と敵に解れていくはずじゃ」


太祖はさも当然と頷き話を続ける。

そんな太祖を見ながら僕は必死に言われた言葉を心に刻み込む、あんな思いをしないため、そして何より僕が間違えた道を歩まないために。


「全てを完璧にやる必要はない、そうじゃな、信用できる部下に任せるのもありじゃ」

「任せる・・・・ですか?」

「そうじゃ、全て自分でやるなどこの帝国において不可能じゃ」


地図を広げるとここからここまでが帝国じゃと教えてくれる、なるほどそれだけ見ると帝国は海もあり山もあり平原もありとかなり広い地域を治めているのがわかる。


「その仕組みを考えるのもお主の仕事であり民の平和を保障するのもお主の仕事だ」

「多すぎてこんがらがっちゃいますね」

「安易に楽な道に走れば民は苦しみ国は疲弊する、そしてお前がみた現実をもう一度今度は確実な死をもって味わうのじゃ」


思わずさっきの状況を思い出し身震いをする。今でもあの熱さ、そしてあの宰相の寂しそうな眼をすぐに思い出せる。

全ての人々に見放され、仲がいいと思った将軍にも裏切られ、周りの兵士の恨みの声を一身に浴び、侮蔑と軽蔑の目にさらされた。

そして真っ赤に焼けた王冠をかぶせられ断頭台の露と消えた。


「あんな・・・・・あんな道に僕が行かないために頑張らないといけないんですね?」

「そうじゃな、辛い、面倒くさいと思ったらその光景を思い出すのじゃ、前に進む勇気になろう?何せ一度死んだのじゃ、そうそう怖いことなどなかろう」


目に一杯涙をためる僕を見つめて太祖が静かに頷く。

僕の目標は見つかった、そして太祖は僕が道を間違えないように道しるべの力をくれた、なら僕はこの後できることを精いっぱいやって間違った道に進まないよう努力しなければ。


「僕はもう一度頑張ります・・・・帝国を滅ぼさないためにそして、太祖の手助けを無にしないように」


今までよりもはっきりと太祖を見て頑張って断言する、困ったり悩んだりするかもしれないけど僕は結末を知ってしまった。ならばその結末を変えるために頑張るんだ。

そんな僕を見つめていた太祖が名残惜しそうにゆっくりと口を開いた。


「もう時間がないのぉ、最後に頼みがある、儂はどれほど頑張っても無理だったがお主には可能性がある、儂の足跡を追ってその最後まで追い求めた夢を叶えて欲しい」


その言葉を最後に答えを答える暇もなく僕の目の前が暗転しだす、慌てて太祖に対して言葉を紡ごうとするけど言葉にならずに完全に暗転してしまった。

最後に見た太祖はとてもいい笑顔で僕を見送っていた・・・・・・・・・。

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