プロローグ
「皇子、もう少しですぞ?」
木の下から仲の良い将軍が応援をしてくれる、木を伝いもう少し先と必死に手を伸ばす。
「皇子、頑張ってください」
応援してくれてる声をに気を取られたときに僕の傍の枝から小さな破滅の音が響いた。
「あっ」
そして僕の世界は暗転した。
真っ暗な中僕は周りを見渡す、当然誰もいないはずなのだがなぜか目線の先に椅子に座ったお年寄りがこちらを見つめていた。
「情けないのぉ」
開口一番ディスられた、なんなんだろうかと少し不機嫌になる。
「わが子孫ながら全く人の善悪が見えないとは情けない」
「え?」
子孫・・・・えっと子孫というとこの方は・・・・・・・。
「儂は初代マリンブロッサム一世じゃよ、お主は15代先の子孫じゃな」
「た・・・・太祖様でありますか」
よく見ればお城のど真ん中に飾ってある太祖の絵にそっくりなおじい様だった、思わず敬語になる僕に苦笑しながら頭をなでてくれる。
「お主、このまま忠臣と奸臣を見分けられないと死ぬぞ?」
「お・・・お言葉ですが僕は見分けてるつもりです」
太祖の言葉に自信をもって言い返す。
「・・・・・・・それは本心か?」
「は・・・・はい」
太祖の目が鋭くなるが僕は精一杯自分の意見を押し通す、僕だって僕なりに頑張って人を見ているつもりだ。
「心底情けない、お主底抜けのお人よしか大馬鹿者じゃよ」
「な・・・・」
きっぱりと断言してくる太祖を前に言葉が思わず詰まってしまった。
「忠臣を見分けているならお主はここに来ることはなかったはずじゃ」
「え・・・でもそれは木を登って勇気を見せようと・・・」
太祖はそんな僕を見て心底悲しそうにため息をつき首を振る。
「忠臣ならお主に嫌われようとそのような馬鹿な真似をさせないのが忠臣じゃ」
「で・・ですが木の一つや二つ登れないとといわれまして」
そんな僕の言葉をもう一度大きなため息をつき遮ってくる。
「木に登ってお主が死んだらなんとする?そのものはそんなことすら考えてないと思ってか?」
「そ・・・・・・それは」
「お主が死ねば国の屋台骨が完全に折れるのだぞ?それを進める家臣のどこが忠臣であるか?」
考えてみればそうかもしれない・・・・・でもあの将軍は僕の味方をいつもしてくれる、だから正しいはずだ。
「よいか?英雄を盆暗に育てるには甘やかせばいいのだ」
「甘やかす」
「そうじゃ、何をしても天才でございます、流石皇子でございますと褒めて育て、決して忠言をせんのだ」
じっと僕の目を見つめてくる、深いマリンブルーの目を見て思わず目をそらしてしまう。
「まぁ、良い、見ねば解らんだろう?一度現実を見るがいい」
太祖が静かに地をたたくと再び僕の意識は暗転していった。