2話『愛する者』
私ある女性に恋をした。
彼女の名前はライサルという誠実な女性であった。
仕事が出来て、皆の憧れであった。
新人だった頃の私にも優しく接してくれた。
そして、彼女のおかげで重要な仕事を任せてもらえるまで成長した。
私は彼女にお礼と共に告白をした。
すると彼女は私と付き合ってくれることになった。
そして、今日私は彼女に求婚を申し込むつもりである。
「よう! エルギア! 今日は決めて来いよ!」
と言われて私は社長に言われた。
私は
「ハイ! 頑張ります!」
と言って今日の仕事を終えて店を出た。
今日は彼女と待ち合わせをしてオシャレなお店で告白をする!
そして私は店で彼女を待った。
しかし、彼女は時間になっても来なかった。
私は
「もしかして……縁がなかったかなあ……」
としょぼくれた。
そして、人がいなくなり店の開いている時間も過ぎてしまった。
私は彼女に何かあったのではと思った。
すると
「助けて!!」
と言って彼女が血まみれで駆け寄ってきた。
私は
「ドっどうしたんだ!」
と恐怖を無理矢理心にしまいこんで聞いた。
すると
「ジャック・ザ・リッパーっていう悪魔が!! 私を! 私を!!」
「何だと……いったい!!」
と何が何だが分からない状態で私はパニックを起こしていると
「はあ……人がいない時間を狙ったのになあ……」
と残念そうにつぶやきながら1人の少年が現れた。
私は
「君!! こんな時間に何だ! まさか君がこんなことを!」
と言って私は彼女を後ろに隠した。
すると少年は
「まあそうだけど……仕方ない……気絶させておくか……顔は見られてないし」
と言って私を何か固い物で頭を殴った。
血は出なかったが激痛だけが頭を走り目の前がぼんやりとした。
「うう!」
と私はその激痛に無理やり耐えて何とか立っていた。
それを見て先ほどの少年は
「驚いた……まだ立てるなんて……」
と言って呆気にとられていた。
すると彼女は
「よくも!! 何でこんなことが出来るの!!」
と言って少年に向かって叫んだ。
少年は
「はあ、君こそ……どうして偽りの愛で彼を騙すの? 君のやってることの方が私には理解出来ないよ」
と言って呆れているようだった。
私は怒りに打ち震えた。
(こいつは……僕らの愛を侮辱する気か! 勝手に会わられて勝手なことを言い出しやがって!!)
と思い一番苦しんでいるであろう彼女の方を見た。
すると
「!! 偽り……そんなことは……私は……」
と動揺しているようだった。
私は
(何をそんなに動揺する必要があるんだ! 僕らの愛は本物だろ!! それとも僕の独り善がりだったのかい! そんな苦しい表情をしないでくれ!)
と声に出せなかったが目線を向けて彼女に訴えた。
彼女もそれに気づいて
「偽りじゃないわ! 私と彼の愛は本物よ!」
とはっきり言ってくれた。
私はそれが嬉しかった。
すると少年は
「そう……だったら本当の姿を見せても大丈夫だよね? 皮を脱ぎなよ」
と言った。
私は
(こいつ何を言ってるんだ? 彼女に皮を脱げだと? まさか!! こいつ彼女に皮膚を裂こうとしているのか!!)
と思い思い体を無理矢理引っ張るように動かしながら
「さ……せない……彼女に……手を……出すな……」
と言って近づく。
少年には聞こえていないようだった。
すると少年は
「何をやってるんだ? 脱げるでしょ? 本物なら?」
と言った。
どうやら少年は彼女自身に言っているようで、自分では何もしないようだった。
そんな姿を見て私は違和感を覚えた。
すると彼女は
「分かった……わ……」
と言った。
私は
(おい! 何をするんだ! まさか自分で皮膚を割くんじゃ!!)
と思って
「止めろ……ライサル……そんな……」
と言って止めようとしたが
ブチブチブチイイ!
と音が鳴った。
そして信じられない光景が私の目に写った。
なんと彼女は信じられないぐらい醜く巨大で邪悪な姿になった。
すると少年は
「サキュバス……君は彼女を利用して彼の恋心を奪おうとしたんじゃないの??」
と言った。
私は動けなくなった。
(いったいどういう……ライサルは一体何者なんだ……)
と戸惑った。
すると彼女は言いづらそうに
「違う……とは言えない……」
と言った。
私はショックを受けた。
ライサルはいやもうすでに彼女はライサルではないのだろう。
彼女は殺されてあの化け物に体を取られたんだ。
私は自分が愛した女性はもうすでに死んだということが頭を過った。
すると化け物は
「でも違うの! 彼がこの娘を見る前に体に憑りついたの! だから!」
「だから彼は君を愛したのだとでも言うの?」
と少年は言った。
化け物は
「そう!」
と言った。
少年は
「それはどうかな? 男って女性の外見を見て恋に落ちるって聞いたけど……彼もあなたの外見を愛した……つまり憑りついた君には恋に落ちたわけじゃないのでは?」
と言った。
彼女は
「彼はそんな人ではないわ!」
と言い切った。
私はその言葉を聞いて思った。
(そうだ……私は彼女に会って仕事を一緒にしているうちに愛するようになったんだ……この恋に偽りなんてない……もし僕が愛した女性が人に憑りついた悪魔のならば私自身も一緒に罪を償おう……)
と思い
「僕も……愛している……」
と途切れそうな意識を無視矢理起こして言った。
彼女は涙を流しながら
「ありがとう……」
と言った。
私は
「いいさ……君が罪を……犯したのなら僕も……償うから……」
と言って安心させた。
彼女はそれを聞いて
「ありがとう。愛しているわ!」
と言った。
すると少年は
「そうか……じゃ! 遺言はそれでいいね!」
と言ってメスを取り出した。
私は
「な! 何で!! 私は良いって言ってるじゃないか!」
と言ったが
「いや駄目だよ……最後だし真実の愛だけは証明して殺そうと思った私の計らいに感謝して欲しいものだよ!」
と言った。
それを聞いた彼女は
「そんなこと……そんなことおおおおおお!! そんなことさせるものかああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
と言いながら少年を襲う。
私は
「止めろ! ライサルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」
と言って止めたがすでに遅く。
ザシュ!!
「ガバアアア!!」
と大量の血を吐きながら彼女はバラバラになった。
そして、バラバラになった体は人間に戻っていった。
少年が持っていたメスは何故か長剣になっており
「いやあ! 新武器の威力スゲエ!!」
と言って嬉しそうにしていた。
僕は
「ライサル!」
と言いながら泣きじゃくり彼女に近づいた。
そして
「しっかり! しっかりしてくれ!!」
と言って抱き着くと
「彼女を……許してあげて……」
と声がした。
私はもう彼女は私の知っている愛した者ではないことがなんとなく分かってしまった。
そして、
「きっ君は!! ライサルは!」
と何の意味もない質問をした。
すると
「もう消滅して……死んだ……私も……すぐに逝くわ……」
と言って震えている。
私は
「そんな……」
と言った。
すると彼女は
「あの子はね……私の体を使って愛を教えてくれたの……私が分かるはずのない愛を……そうか……これが愛なんだね……すごく……あったかい……」
と言って動かなくなった。
私は
「ああ……あああああ……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
と呻くように泣いた。
すると少年は
「では、記憶消去しますね! まあ他の人間は私の雇い主がしてくれるんですけどねえ」
と言って私に近づく。
私は
「来るな!! 私から彼女を! ライサルを奪うな!」
と言ったが。
「ごめんね……それは出来ないから……最後に彼女が真実の愛を感じれただけで我慢して?」
と言って私は光に包まれた。
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「フー! これで良し!」
私は男性の記憶を奪った。
これで仕事は終わりだ!
そして
(サキュバスに真実の愛かあ)
と思っていると
(ねえ、教えて……)
と声がした。
その声は先程のライサルと呼ばれたサキュバスなのだろう
「何?」
と聞くと
(私たちは……たとえ人を愛しても恋をしちゃいけないの?)
と聞かれたので私はマニュアル通りに
「神様や天使だってダメなんだからダメに決まってるでしょ?」
と言った。
すると
(そう……)
と寂しそうな声とともに消えていった。
私は
「何だったんだろう? 今のは?」
と疑問に思いながらも帰った。